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僕は記憶が無い
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僕は名前もない
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僕の性別なんてわからない
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僕はそういう存在だ
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どこにだっているのに
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いつの間にか僕の存在が消えた
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だから居場所もここにはない
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僕は一体なんだろうか
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その答えをたった一人で考える
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考える
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考える
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考える……
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されども答えなんてでやしない
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一人で悩んだってこうなることはわかりきっている
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そういえば、こんな僕でもわかることは一つ
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いや、二つ
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まず今ここがとても暗いこと
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もう一つは僕は“一言も喋っていない”こと
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あぁ、僕は一体なんだろう
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この悩みを持ってかれこれ一年、二年……いやそれ以上経っているかもしれない
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僕は時間の感覚がないから仕方ない
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でも僕は信じている
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いつか必ず、僕の存在を思い出してくれる人が現れるだろうと
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いや、いつかじゃない。丁度今、僕の事を思い出してくれた人が現れた
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僕を“使ってくれる人”が現れた
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だから、ここで皆に伝える
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荷物の奥底に眠る僕達
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いや、君が子供の頃に遊んだ玩具をどうか忘れないで
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無機物だって、僅かな命を持ってることを
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僕は君に使ってもらえて嬉しかったよ
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さて、僕は捨てられるみたいだからここでサヨナラだ
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また会える時を楽しみにしてるよ
fin