主
主
主
部屋に帰った瞬間どっと疲れが押し寄せてきた。
煙草の火をつける気力もない
ドアの鍵を回して靴を脱ぎ、無言のままソファに沈んだ
Mr.サカキ
天井を見上げながら小さく囁く
あいつはおもっていたよりも脆かった
けど…それ以上にーーずっとずっと我慢してた
ハジメさんが死んだのは翠だけじゃない
俺にとってもあの人は…同僚以上どころではなかった
どこでも無茶をして、真面目で、そして…俺達の元からすぐに居なくなった
Mr.サカキ
煙草を一本咥え火をつける。ヒバナの音とふっと立ち上げる煙
部屋にようやく"匂い"が戻る
あの部屋で翠に手を払われたとき俺の方が泣きそうになっていた
Mr.サカキ
口にして少しだけ情けなくなる
ポケットに手を入れるとグシャっと音がした
ーチョコレートパン
翠にあげる予定だったもの
怒鳴られたとき渡せずにそのままにしてあった
袋をあけてかじる
…甘い。
びっくりするほど甘かった。
けど、それでも食べた
涙が溢れるのを誤魔化すように
Mr.サカキ
答えなんかないのに、問いかけてしまう
夜の部屋は静かだ
だからこそ…感情が崩れるのはこの時間だった
誰にも、ハジメさえにも見せない涙は、音もなく、心の奥に落ちていく
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!