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放課後の教室 セミが騒がしい
外で 野球部の声が響く
廊下から聞こえる 何気無い女子の会話
全てが耳に残る
結衣
奏太
君と教室でふたりきり
この時間が 永遠に続けばいい
彼が立ち上がって 窓を開けた
夕日で髪が 赤色に染る
風に揺れる髪が すごく綺麗
ずっと見ていたい
振り向いてくれればいい 目が合えばいい
そう願っても 振り返ってくれない
静かすぎて 少し寂しさを感じる
私は何か言いたくて 口を開きかけて また閉じて
息をするのさえ 聞こえてしまいそう
息を止めて 当たり前に苦しくて
尚更 深く息を吸ったのが 聞こえてないか 心配になる
この教室だけ 空に浮いてるような
ここだけ 世界から 切り抜かれたような
全ての音が 遠くから聞こえる
それくらい 静かな空間
奏太
急に彼が叫んで びくっと身体を震わす
窓の下の誰かに 危ないと笑いかける
はにかんだ笑顔に
胸が高鳴る
急に 恥ずかしくなって
何も無いのに スマホを覗いて
また 少しだけ 彼を見る
ただ少し 微笑みながら
彼はまだ 外を眺めていた
''どうしたの'' って
話しかけて 聞いてしまえば
きっと 笑いながら 答えてくれる
知っているけど 勇気は無い
奏太
奏太
奏太
ドクン
目を細めて 見守るように くすくすと 笑う
横顔だけなのに 見ちゃいけないものを 見た気がして
また目を逸らす 何度目だろう
もっかいだけ もう1回だけ
結衣
チラ、と見たら 目が合って
もうその瞬間だけは 周りの音なんて 聞こえない
夕日が差し込む、 放課後の教室で
夕日が 彼女の長い髪を照らす
眩しそうに 目を細めてる
ふう、と軽い溜息
奏太
結衣
君と教室でふたりきり
こんなに静かなら お互いの息遣いさえ 聞こえそう
息が荒いとは 思われたくない
ほんの少し 気を 紛らわせたくて
立ち上がり 窓を開けた
心地よい風が 髪を揺らす
急に 窓を開けたから
きっと彼女は今 こっちを向いている
振り向きたい 目を合わせたい
だけど どこか照れくさくて
窓の外に 目線をやってしまう
野球部の よく知る友達の声に
少しだけ安堵して
でも ここはまだ 静寂で
まるで ふたりだけ 取り残されたみたい…
…ドラマチックなことを 考えてみたりする
窓の下を見て 木に登る友達がいた
奏太
思わず声が出た
少し彼女が 息を飲んだのを感じた
大声で話したことが 恥ずかしくなって 下を向く
友達が 木から落ちて 笑っている
奏太
奏太
奏太
たぶん、今のは 友達には聞こえてない
''どうしたの'' なんて
出来れば彼女から 話しかけてほしくて。
アホだなぁと 我ながら思う
自分自身への 呆れた笑み
彼女は今 どんな顔をしてる? 何をしてる?
興味本位で振り返って すぐ後悔した
結衣
彼女と目が合う
瞬間、本当に 世界に2人だけのような そんな気がした
2人がお互いに 好きだと自覚するのは
もう そう遠くない未来