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1
すず
2,230
佐上恭弥は
思っていた以上に学校に現れなかった
仕事が忙しいらしく
来てもすぐいなくなる
○○がきちんと言葉を交わしたのも
あの日以来だった
教室では相変わらず話題に上がるが
本人のいない騒ぎは、どこか現実味が薄い
そして昼休み
○○はスケッチブックを抱え
文化祭実行委員の教室へ向かった
ドアの前で一度足を止める
○○
別に、評価をもらうために描いたわけじゃない
そう思ってるのに
手のひらが少し汗ばんでいた
○○
扉を開けると、数人の実行委員が顔を上げる
その中に、こうちゃんの姿もあった
菅原
菅原
○○はスケッチブックを差し出す
机の上に広げられていくデザイン
紙がめくられるたび、視線が集まる
こんなふうに、真正面から見られるのは慣れない
こうちゃんも、冗談のない表情で見ている
その真剣さが、なぜかむず痒い
最初に口を開いたのは
3年生の先輩だった
○○
○○
そう言ってスケッチブックを取ろうとすると
○○
周りを見渡すと
ほかの実行委員も頷いていた
○○
○○
小さなざわめきが広がる
○○は視線の置き場に困り 少しだけ視線を逸らした
ページをめくる手が止まる
一人が、そっと指を置いた
それは 最も大きな装飾を想定して描いたデザインだった
空へと伸びる光のリボンが
校舎のシルエットを包み込み
交差する線が人の流れのように繋がっている
昼と夜、過去と未来
ばらばらの時間や想いが交差し
ひとつの場所に集まっていく
そんな意味を込めたものだった
菅原
今まで黙っていた菅原の言葉だった
菅原
菅原
菅原
周りも頷く
○○
胸の奥が、じわっと熱くなる
○○
小さく呟いた声は、思ったより柔らかかった
顔をあげると
こうちゃんと目が合った
彼は満足そうに
静かに頷いた
〇〇はこらえきれず
少し笑った
菅原
菅原
書類をまとめながら、こうちゃんが声をかける
菅原
○○
菅原
○○
菅原
○○は少しだけ眉をひそめる
けれど、その口元は隠しきれず緩んでいた
教室を出て、廊下に出る
昼休みのざわめきは遠く
この当たりは静かだった
○○は両腕をぐっと上に伸ばす
背筋を伸ばして、ふぅ、と息を吐く
その瞬間
耳元近くで声がして
○○はビクッと肩を揺らした
振り向くとそこには佐上恭弥
恭弥
〇〇は分かりやすく顔を歪める
○○
○○
○○は一歩近づき、声を潜める
○○
廊下には誰もいない
でも、いつ誰が通るか分からない
恭弥
恭弥は楽しそうに笑う
恭弥
恭弥
中庭は昼休みの喧騒から少し離れていて
風の音がよく聞こえた
恭弥
恭弥が言う
恭弥
〇〇は黙る
正直行きたい
デザイナーとしての“凛”に
ずっと憧れていた
けれど
母としての存在は別だ
胸の奥に沈んだものが、わずかに疼く
○○
短く答える
恭弥
恭弥はそれ以上踏み込まず
素直に引き下がった
恭弥は少し首を傾げる
恭弥
恭弥
そう言って、○○の頬にそっと触れた
〇〇は反射的に1歩下がる
○○
恭弥
その言葉が落ちた瞬間
○○
〇〇の声は鋭くなる
空気が張り詰める
菅原
振り向くと菅原が立っていた
○○
菅原
○○
菅原は恭弥を見る
菅原
菅原
菅原
素直すぎる感想に、空気が少し緩む
恭弥は菅原を見て、興味深そうに目を細めた
恭弥
○○
〇〇は間髪入れずに言う
○○
○○
冷たく言い放つ
その態度に、菅原はわずかに目を見開く
恭弥
恭弥
恭弥は静かにいう
○○
恭弥
恭弥
○○は踵を返す
○○
少し歩いてから振り返る
○○
そのまま去っていく
残された風だけが、中庭を抜けていった
○○と菅原は並んで歩きながら
さっき入った定食屋の話や
どうでもいい学校の噂話をしていた
駅へ向かう途中、菅原がふと口を開く
菅原
菅原
菅原
〇〇は首を傾げる
○○
菅原
菅原
○○
○○
○○
サラッと言う
菅原は目を細める
菅原
○○
即答
菅原
菅原
菅原
〇〇は眉を上げて
わざとらしく不満そうな声を出す
○○
菅原は小さく笑う
菅原
菅原
声はいつも通り軽いのに
その表情はほんの少しだけ寂しそうだった
〇〇は気付かないふりをする
菅原はすぐに視線を前へ戻し
慌てたように話題を変えた
菅原
菅原
菅原
菅原
○○
〇〇は得意気に胸を張る
○○
菅原
笑い合う
駅の改札が見えてくる
菅原
菅原
菅原は何気なく言う
○○は少しだけ考えるふりをしてから
○○
菅原
菅原は満足そうに笑った
○○は数歩先に進んでから、くるりと振り返る
○○
○○
○○
いたずらっぽく言う
菅原は一瞬ぽかんとして
次の瞬間吹き出した
菅原
○○
菅原
○○
ふたりの笑い声が
夕暮れの駅前に溶けていく
オレンジ色の光が
並んだ影を長く伸ばしていた
空気はすっかり夜の匂いになっていた
靴を脱いで
今日のことを思い出した
文化祭のデザイン
恭弥のこと
こうちゃんとの帰り道
そして
○○
小さく呟いて、言葉を飲み込む
こうちゃんに対する気持ちが
少しだけ前と違う気がする
前はもっと気楽で
なんでも言えて
ただの「こうちゃん」だったのに
最近は時々
妙に言葉を選んでしまう瞬間がある
目が合うと少しだけ落ち着かない
○○
首を振る
考えたところで、答えが出る気もしない
深く考えるのは、やめた
今日はもう、疲れた
その夜、ベッドに入ると
〇〇はすぐに眠りについた
考えないまま
答えを出さないまま
けれど確かに
何かが少しずつ変わり始めていた
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