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売人
短い言葉と共に、部屋に食事が投げ入れられる。
や、これを部屋と、食事と言って良いのかさえ微妙だ
部屋は、質素なベッドと小さな机だけで窓さえ無い
壁は荒いコンクリで、生活感の一つも感じられない
食事だって、硬くなったパンだけ
前世でどれだけ悪事はたらいたらこんな事なるんだって感じ。
名前もない、まるで家畜のように番号で呼ばれて
明日生きている保証なんて全くない
明日、何かあって死ぬかもしれない
死にたくても死ねない状況になるかもしれない
そんな環境、
いわゆる人身売買とか、売春とか、オークションとか言うやつ。
売れ残って早1年
下手にヤバい人に買われるよりも、 ここに居た方が幾らか安全だ
寮はともかく1日3食は絶対だし、 寝る場所や時間も確保されてる。
正直ずっとここにいても良いかも、 なんて最近思い始めてるくらい。
ニキ
ここじゃ楽しい事なんて絶対ないから
ニキ
ていうか、そもそも俺は何のために生まれてきたんだ
買われては捨てられまた売られて、 それを何度も繰り返して
俺の代わりはいくらでもいて、俺である必要は何もない
じゃあ俺は一体何なんだ
俺が俺である必要なんてなくて、 誰も俺を必要としてなくて、 俺が死んだところで誰も困らないのなら
俺が生まれてきた意味なんてないのか
だったらこんな苦しいだけの人生、
ニキ
そんな矢先だ。
俺が白井に出逢ったのは
ニキ
俺なんてどうせ売れないのに なんでこうも毎回売り出されるんだか、…
身体を綺麗に洗われ 太い鉄格子の檻に入れられる
司会
ガラガラガラ
ニキ
売人
売人
と、調子のいい紹介。
売人の言葉に、どこぞの金持ちや物好きに 舐め回すように全身を見られる
慣れた今こそ何とも思わないが、 始めの頃は吐き気を催した。
それに、俺が元王族ってのは流石に嘘だな。 俺もそんなの初めて聞いたし
司会
客
客
客
ニキ
こんな俺に6400万リータも出すとか… 莫迦なんてレベルじゃないだろ
安くて見目が良いやつなんて 他に腐るほどいるってのに
ニキ
…なんて、施設よりもいい生活だったことなんて一度としてないのに
ニキ
買い取り手が決まったやつは 間もなく客に引き渡される
売人
短い言葉と共に 錆びた音をたてて鉄格子が開いた
ニキ
売人の1人に連れられて重い足を動かす
ギイィィイィ…
低い音をたてながら重たい扉が開いてく
ニキ
久し振りに聞く
でももう何度も聞いてきた
絶望が始まる音だ