宗
……ん。
宗
(……ここは…)
つむぎ
……あっ、宗くん。
つむぎ
目ぇ覚めました?
宗
あ、ああ。
宗
……僕は、一体?
つむぎ
倒れてたんですよ。
つむぎ
階段の踊り場で、もたれるように、こう……
つむぎ
覚えてませんか?
宗
……全くね。
つむぎ
そうですか〜……
つむぎ
そういえば宗くん、
またちょっと痩せてましたよね?
またちょっと痩せてましたよね?
つむぎ
運ぶ時、なんだか思ったより軽くて……
つむぎ
……あっ、倒れたのってそれが原因なんじゃないですか!?
つむぎ
すぐご飯抜くんですから〜……!せめて栄養は摂ってください!
宗
喧しいね……ひとりで
キャンキャン吠えるな
キャンキャン吠えるな
宗
長い間眠ってしまったようだし、もう平気だから…………ああっ。
つむぎ
わっ、とっと!
つむぎ
……もうっ、フラフラじゃないですか〜!
つむぎ
俺が支えてなかったら今頃大惨事でしたよ?
宗
煩いッ、平気だと言っているだろう……
つむぎ
いやいや、どう見ても平気じゃないですって
宗
いいから僕に触るな、もう歩け……る……
ずてーん!
つむぎ
ぎゃあっ、宗くん!?
つむぎ
大丈夫ですか!?怪我は……!
宗
……問題ないのだよ
つむぎ
本当ですか?ちょっと見せてくださいね……
つむぎ
って、全然大丈夫じゃないじゃないですか……
つむぎ
あ〜、おでこ赤くなっちゃってますね……頭から行くから〜……
つむぎ
宗くん、前髪短いから目立っちゃいますね。冷やしましょっか
宗
……無駄にぺちゃくちゃ喋らないでくれるかね
つむぎ
え〜?いいじゃないですか〜。
つむぎ
こういう機会でもないと、滅多にお喋りできませんし……
つむぎ
…あ。俺、氷袋用意するので、宗くんは座っててくださいね〜。
宗
…何故君がやる?
つむぎ
だって、今先生居ないでしょう?
宗
なら呼べばいい。
つむぎ
も〜、人遣いが荒いんですから……
つむぎ
氷袋用意するだけですし、それなら俺でもできますよ。
宗
少なくとも、君よりはあの教師の方が信頼できるのだけど。
つむぎ
宗くんは先生への信頼が高いっていうより、
つむぎ
俺への信頼がないって感じでしょう?
宗
フン、当然だね。
つむぎ
……まあ、折角ですしね
つむぎ
宗くんがこんなにお喋りしてくれるのも珍しいので……
宗
……
つむぎ
…ああっ。黙っちゃったら寂しいですよ〜。
つむぎ
今のは冗談ですっ、
お喋りしましょう?
お喋りしましょう?
つむぎ
……いや、聞いてくれるだけでも俺は嬉しいんですけど…!
宗
発言が二転三転するね
宗
もっと統一したまえ。
つむぎ
うぅ。そうですよね……あっ。氷袋、何色がいいですか?
宗
……はっ?
つむぎ
ピンク、青、緑……好きなの選んでください。
宗
ど、どうでもいいッ…!勝手にしたまえ!
つむぎ
え〜?じゃあ緑とかにしておきますか。
つむぎ
『Switch』っぽいな〜と思って、勝手に決めちゃいましたけど。
宗
『Switch』の色にしては青寄りだろう。
つむぎ
あぁ、言われてみれば…
つむぎ
じゃあ、宗くんはこれ何の色だと思います?
宗
む?そうだね……
宗
……影片。
つむぎ
おや…ふふっ。確かに、みかくんの髪の色に近いかもですね〜。
つむぎ
俺にはない観点です。さすが宗くん♪
宗
ノン、薄っぺらい賞賛は要らないよ。
つむぎ
え〜っ、またそんな事言って〜……
つむぎ
凄いって思ってるのは本当ですよ?
宗
なら、もう少しマシな言葉を選ぶべきだね。
つむぎ
そうですか〜。難しいですね……
つむぎ
……ええと。氷、氷…
宗
それも。氷を探しながら言われても説得力がない
つむぎ
そうですか?不快にさせたならすみません。
つむぎ
ええと…あとはお水入れるだけなので、終わったらゆっくり教えて……
宗
終わったら帰るよ、
僕は。
僕は。
つむぎ
えっ、帰っちゃうんですか?
つむぎ
もうちょっとお喋りしていきましょうよ〜、宗く〜ん……
宗
必要ないね。それに、君とも長話しすぎた
宗
柄にもなく、ね。
宗
僕が倒れたところを見たのが君じゃなければ
どれほど良かったか。
どれほど良かったか。
つむぎ
あはは、凄い嫌われようですね…相変わらず。
つむぎ
でも本当に嬉しいです
宗
……なにが?
宗
僕に拒絶されて喜ぶなんて、君……
つむぎ
ああ、違いますよ〜!変な勘違いしないでください!
宗
誤解されるような言動をとった君が悪いよ。
つむぎ
いやっ、それ割とブーメランですからね?
普段の宗くんに。
普段の宗くんに。
宗
……いいから、それで?何が嬉しいんだね?
つむぎ
ああ、はい。
つむぎ
……だって宗くん、いつもは俺が話し掛けても
つむぎ
無反応か、腹話術か……舌打ちだけ返ってくる時もありますけど。
つむぎ
…こんなに長く俺とお喋りしてくれるなんて。それが嬉しいんです
宗
……べつに。
宗
今日は機嫌が良かった…それだけなのだよ。
つむぎ
あんなに派手に転んだのに……?
宗
ノン!いちいち粗を探すのはみっともないよ
つむぎ
それは、そうですけど…
宗
……フン。まあいい
宗
……ねぇ青葉。
ひとつ聞いてもいい?
ひとつ聞いてもいい?
つむぎ
はいっ?
宗
……水。
宗
いつ入れるんだい
つむぎ
……あっ!
つむぎ
すみません!ついお喋りに夢中になって……
つむぎ
今入れますからっ、ちょっと待って……
つむぎ
うぎゃあっ!?
バシャーン!
つむぎ
わわっ、大変!床がびしょ濡れに……!
宗
何をしているのだね君は!?君が水を浴びてどうする!?
つむぎ
すみません宗くんっ、そこの雑巾取ってくれませんか?
宗
あ、ああ。それより君、制服がびしょ濡れだろう!
つむぎ
へっ?…わ、本当です。
後でジャージに着替えないとですね〜。
後でジャージに着替えないとですね〜。
つむぎ
あっ、雑巾ありがとうございます。ええと……
宗
なッ……!?ノンッ!
雑巾で制服を拭くな!
雑巾で制服を拭くな!
宗
雑巾なんて汚いし
生地に悪いだろうッ、ああもう……!!
生地に悪いだろうッ、ああもう……!!
宗
貸したまえ!
つむぎ
わっ!は、はい…?
宗
床は僕が何とかするから、君はまず着替えを優先するのだよ!
宗
全くッ、僕に床掃除をさせるなんて……!
つむぎ
あ、あのう、俺のミスですし、普通に俺がやりますけど……っ
宗
服を濡れたままにして着るのも良くないだろう。
宗
いいから着替えを取ってきたまえ!
宗
いいね!?
つむぎ
…はっ、はい……!
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
宗
……行ったか。
宗
(水が零れただけなのだから、)
宗
(ただ青葉か僕が拭けばいい話だ)
宗
(あそこまで怒鳴ってやる必要もなかった。)
宗
(……そうでもしないと君は、自分のためには中々動かないから……)
宗
(……いいや、違うね。)
でも本当に嬉しいです
宗
(布がずさんに扱われているのを、見ていられなかっただけだ。)
…こんなに長く 俺とお喋りしてくれるなんて。
宗
(……決して。青葉本人を心配した訳ではない)
それが嬉しいんです
宗
(…………決して。)
宗
…………
宗
……
宗
……君という奴は。
つむぎ
すみませんっ、戻りました〜……!
宗
遅いよ。
つむぎ
すみません……あっ。
つむぎ
床、やってくれたんですね。ありがとうございます……
宗
べつに。ただ水を拭くだけだし、これくらいなんて事ないのだよ。
つむぎ
うぅ。俺のミスでしたし、重ね重ね本当に……
宗
謝罪はいい。それとも君は、僕が飽きて帰ってしまってもいいの?
つむぎ
わっ。それは……
つむぎ
……うぅ。
宗
……フン。
宗
ねえ青葉、僕は早く氷袋を受け取りたいのだけれど?
つむぎ
あ……はいっ。すぐ用意しますね
宗
そうしてくれ。
つむぎ
ちゃんと口を確認して……よし。
つむぎ
できましたよ。じゃあコレ、おでこに当てて……
つむぎ
……ええと、もう帰っちゃうんでしたっけ?
宗
……うむ。
宗
……ああ、だが。
気が変わったのだよ
気が変わったのだよ
宗
……額に氷袋をあてながら帰るなんて、不格好だしね。
宗
あと少しだけ。
つむぎ
……ふふふっ。
つむぎ
そうですかぁ……
つむぎ
……じゃあ、その間……
宗くんを退屈させないように頑張りますね?
宗くんを退屈させないように頑張りますね?
宗
ああ。
宗
僕に働かせた分、きっちり返してもらうからね。
宗
くれぐれも、僕を飽きさせないでくれたまえよ……青葉。