シンデレラガール

彼女の名前はシノサキ レイラ。 容姿端麗成績優秀。アイドル界を牽引する天才的才能の持ち主であり、芸名のシンデレラの名を汚さない、完璧なシンデレラストーリーを歩んできた人でもある。 そのためお金には厳しく、毎日日雇いで高給を貰う契約をしている。その時間はまちまちだが、基本は仕事時間は6時間という制約がある。

隙のないアイドル感、笑顔は絶やさず何があろうと動揺しないクールっぷり、しかし内面から溢れ出すキラキラとした元気さ。眩しさ。その全てを持ち合わせている。その柔軟性から、彼女のライブは毎回誰の予想 もつかないとんでもないライブとなるのは目に見えてわかることだろう。

そして本番五分前、時刻は10時55分。 開演予定時間は9時半だったはずなのだが、スタッフの準備が大幅に遅れこの時間まで伸びてしまう。

そしてライブの幕は開かれる。シンデレラ城のような煌びやかな装飾。その背景から、彼女は静かに降りてくる

カツン、カツン、と音を立てて。 お城の階段は1段、また一段と彼女の足元から減ってゆく。最後の一段をしっかりと両足で、そしてその目で確認しする。

しばらくの静寂の後。ゆっくりとその瞳が観客に向けられ、ライブ会場はその瞬間から熱狂に包まれる。

そして眩しいステージはアンコールを残して一瞬のような時間が過ぎる。誰もが魅了され、操られ、幸せにされたそのライブは、幕を閉じることとなる。

時計の針は11時55分。

いつもより口調が崩れてきたシンデレラを見て、会場は少しずつざわめきを見せる

その叫び声とともに彼女はステージに飛び出す

アンコール待ちをしていたファンの大勢が唖然とする。清楚でアイドルで心清らかな彼女が暴言を吐きながら飛び出してくるのだから当然である。

それから1時間。彼女の今まで歌ってきた曲は全てロックテイストでカバーされていた。何一つ違和感のない即興ロック。この時間の間、ファンは口を開けて石化したように彼女を見続けた

醜さ全開の捨て台詞を吐いて彼女は会場を後にする。

カタカタとパソコンを弄る支配人