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#シンママ
沙華やや子
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玉葱三太郎
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その瞬間から、皐月の表情がこわばった。
結莉
娘が心配になり名前を呼ぶ結莉。
皐月
結莉
皐月がミルクティーを飲み干しグラスをそっと置いた。
皐月
結莉
結莉はなにも言えない。
少し自分は浮かれていたかもしれない、とその時思った。
それと、皐月の繊細な性格を思うと、今の皐月の気持ちに対し察しはつく。
皐月
胸を抉られるようだ、結莉は。
結莉
結莉
母・結莉は、皐月に頭を下げた。
皐月
皐月
皐月
皐月
皐月はそこにあるクッションを床に叩きつけた。投げつけた。
結莉
でも、今の皐月は嫉妬もしているんだな、と感じた。
母を取られるような寂しさ。
母の愛を失うような寂しさ。
娘である自分が蚊帳の外であるかのような。きっとそうだ。
結莉は
結莉
と叫び、皐月を抱きしめた。
が、皐月は凄い力でそれを振りほどき、結莉の肩を押した。
結莉
結莉の口から怒号が響いた。
結莉
結莉自身が今、胸が潰れそうなほど悲しい。
皐月は黙って、怒った顔をして自室にこもってしまった。
結莉
結莉
結莉
結莉
痛いほどわかる。
なぜなら、結莉自身が経験して来たことだったから。
結莉の母親は結莉をシングルで生んだ。
そして彼女にはいつでも恋人がおり、半ば同棲して居たようなものだった。
結莉は独り占めしたい母親を独り占めできぬまま育ったのだった。
結莉
――――次の日も、そのまた次の日も、皐月は結莉が朝の挨拶をしようとも「おかえり」と言おうとも一切しゃべらない。
羽矢斗には、ありのままを事の翌日、結莉は電話で話した。
羽矢斗は胸を痛めた。
そして
羽矢斗
と言った。
結莉は頼りない思いだ。
自分の命よりも大事だと言える皐月、その皐月が寂しい気持ちになっていることが辛い。
羽矢斗
結莉
――――大喧嘩から3日経った夕方。
2日間連続で皐月は自室にごはんを持ち込み食べていたのだが、今日はキッチンの椅子に黙って座った。
結莉はたったそれだけが嬉しくてたまらない。
なにも言わず2人分のごはんとおかずをよそい、席に着き「いただきます」と穏やかに言って食べ始めた。
皐月がなかなか料理に箸を付けない。
結莉
と優しく言う結莉。
皐月
結莉
皐月
結莉は、泣けて来てしまう。娘への愛おしさと申し訳なさと、嬉しいような感情がないまぜになっている。
結莉
皐月
結莉は鼻汁をティッシュで拭いつつ返事をする。
結莉
皐月
結莉
皐月
少々ぶっきらぼうに皐月は答えた。
結莉
皐月
結莉は今、羽矢斗と結婚できなくても良いと感じている。
結婚がすべてではないと。
目の前にある宝石のような輝きを、鈍らせたくないのだ。キラキラとした皐月の命の輝き。躍動。
――――羽矢斗が家に来るのは今週の土曜日、と決まった。
親子喧嘩の一件から、結莉と羽矢斗は逢っていない。
それは羽矢斗と結莉、共通の意向であった。
皐月の気持ちを一番に守ってやろうと。
皐月が学校へ行っている間の電話は毎日していた。
羽矢斗
結莉
羽矢斗は即答した。
羽矢斗
羽矢斗
羽矢斗
羽矢斗
Eternal.
結莉
羽矢斗
***
皐月はなにを思っているのかな、と羽矢斗を初めて家に招く土曜日まで、考え続ける結莉。
皐月は結莉に対し攻撃的になったり、卑屈な態度を取ったりはしないが、以前より結莉との会話が減っている。
当然であろう。皐月だって来たる土曜日をあれこれ感じているに違いない。
***
――――いよいよ羽矢斗が結莉宅を訪れる土曜日がやって来た。
結莉はいつもの部屋着ではなく、ちょっとだけドレスアップしている。
ピンク色のミニのタイトスカートに白い柄タイツ。黒いブイネックのニットを着ている。
結莉
と結莉が気にして見ると、皐月はいつも通りの紺のスウェットの上下だ。
皐月らしくない。本来とってもおしゃれな子。
お客さんが来るとわかっていれば、おめかしするのが皐月だ。
母・結莉は直感でわかる。
すねているんだなと。だから恐らくわざといつも通りなのだ。
なにを着ようと皐月の自由だ。そんなことをあれこれと結莉は言わない。
約束の時刻は10時。
ソワソワが止まらない結莉。
羽矢斗にやっと逢える嬉しさよりも、皐月の心だ。大丈夫かな、と思う。
親を独占したいゆえの嫉妬というものは非常に物悲しいものだ。
まるで自分が間違っているかのような錯覚すら起こす。
(ママの幸せを喜べない自分はダメだ)と罪悪を感じたり、
逆に(あたしのママを奪って!)と
母の恋人を憎たらしく感じる場合もあるのだ。
それらの感情を全部結莉は経験済み。
皐月はソファーに寝そべりスマホをずっといじっている。
その指はゴールドとピンクのネイルに彩られているが、なにもそれはお客さんである羽矢斗のためではなく、いつもの癖。
土日はネイルを塗るのが皐月の楽しみだから。
まだかまだかと、10時を過ぎ、結莉はキッチンをウロウロする。
10時10分に玄関チャイムが鳴った。
大慌てで玄関へ駈けて行く結莉。
皐月はまだソファーに寝そべっている。
羽矢斗
結莉
結莉にリビングへと案内され、短い廊下を歩いて行く羽矢斗。
羽矢斗
と一瞬羽矢斗がちょっぴり驚いた。
……。だって皐月は、羽矢斗が来たというのに、まだソファーを陣取りゴロゴロしているのだから。
結莉
皐月は口を尖らせ起き上がり座った。
羽矢斗
皐月
挨拶をした皐月は上目遣いに、ジーっと羽矢斗を見ている。
人間性を見極めてやろうとでもしたそうに。
結莉
と、結莉はキッチンへ急いだ。
折角の玉露茶が苦くなりそうだ。余りにも緊張している結莉。
お盆に3人分の湯吞み茶碗と急須を載せ、リビングへ結莉が戻った。
羽矢斗と皐月はなにもしゃべっていない。
皐月はまたスマホをいじっている。
羽矢斗は穏やかな雰囲気でソファーに腰かけている。
結莉と違い彼はまるで全然緊張していないようだ。
結莉は皐月の隣に座った。向かいに羽矢斗が居る。
結莉
皐月
皐月はちょっぴり不服そうにスマホをスウェットのポケットにしまった。
羽矢斗
皐月
と皐月は、あんまり表情のない顔で言った。
羽矢斗
皐月
と結莉のほうを向く皐月。
結莉
皐月
結莉は皐月から意外な質問を投げかけられ驚いた。でも答えた。
結莉
そこで羽矢斗が言った。
羽矢斗
皐月
羽矢斗
羽矢斗
そう羽矢斗は言い切った。
束の間黙り、皐月は
皐月
とだけ返した。
皐月
羽矢斗が結莉宅にやって来てまだ15分といったところだ。
羽矢斗
実に優しいトーンで皐月に声をかける羽矢斗。
羽矢斗
そう言って羽矢斗はソファーを立ち上がった。
羽矢斗
もう一度皐月に声をかける羽矢斗。
結莉はなにも言わずに黙っていた。 皐月はそそくさと自室に入り扉を閉めた。
玄関まで羽矢斗を送る結莉。
結莉
羽矢斗
結莉
羽矢斗
羽矢斗
羽矢斗
確かに……結莉はこれまで羽矢斗に逢う度、自分の過去も沢山語って来た。
子ども時代に孤独だった話も。
結莉
結莉の瞳が潤む。
羽矢斗
小さめの声で羽矢斗は結莉にそう言った。
結莉
羽矢斗
結莉
とても優しく微笑み羽矢斗は去った。
コメント
1件
このエピソード、すごく胸に響きました。皐月の「知らない男と暮らすなんて嫌」という言葉から、クッションを投げつけるまでの怒りと寂しさが痛いほど伝わってきて…。結莉自身が母親に同じような思いをしてきたからこそ、皐月の気持ちが手に取るようにわかるっていうのが、本当に切ないです。羽矢斗の「お母さんが大事にしている人を大事に思うのは自然」という言葉、すごく優しくて、でも皐月にはまだ届かないもどかしさ。三人の距離感が繊細に描かれていて、続きが気になります。