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おぉ…恋かなぁ?なんだろな〜?(( 主さんの書き方大好き!!続き楽しみ!
蘭side
桃瀬らん
私は逸る鼓動を抑えながらもう1人の 当事者恋醒へと視線を投げる。
恋醒は私たちが遅れている ことに気付き立ち止まって 待っていてくれた。
雨乃こさめ
桃瀬らん
呟きは雨音にかき消される 寸前で私の鼓膜を震わせた。
言葉とは裏腹に恋醒の表情には 陰が差している。
桃瀬らん
凄まじい速度で過去のやり取りを 思い返すが確かに恋醒から恋愛の話を 聞いたことは全くなかった。
うまく交わされてしまって いた気もする。
私の推測が正しければ 三角関係未満ということだ。
桃瀬らん
__
その声は雷鳴のように 周囲の空気を裂いた。
声自体は聞き慣れたものだが こんなに大きな音量を 耳にした記憶はない。
私は反射的に振り返りながらも 想像している相手とは 別人だろうかと身構えた。
はたして走って追いかけてきた のは予想通りの人物だった。
乾ないこ
桃瀬らん
乾ないこ
乾ないこ
奈唯心くんは鞄をごそごそ 探ると中から小さな紙袋が現れた。
差し出されるままに受け取った私は 戸惑いながら奈唯心くんを見やる。
桃瀬らん
乾ないこ
不思議に思いながら私は 紙袋の中を確認する。
桃瀬らん
そこに入っていたのは2人が 愛読する漫画の単行本化を 記念して作られた小冊子だった。
この世に僅か10人分しか 存在していないまさに貴重な逸品だ。
乾ないこ
乾ないこ
その場で小さく飛び跳ねる私に 奈唯心くんがはにかみながら頷く。
桃瀬らん
桃瀬らん
食い入るように表紙を見つめながら 私は歓喜のため息をもらす。
雨乃こさめ
桜黄みこと
やり取りを見ていた恋醒と美琴も にこにこしながら私の手元を覗いた。
桃瀬らん
乾ないこ
奈唯心くんに笑顔で ダメ押しされ私はハッと息を呑む。
桃瀬らん
桃瀬らん
未練があるように思われては いけないといつもの調子で 紙袋を差し出す。
だが奈唯心くんは首を横に振るだけで 受け取ってはくれない。
桃瀬らん
仕方なく紙袋を抱え直すが 物が物だけに受け取る わけにはいかない。
じっと奈唯心くんを見つめると 視線は一瞬で外されてしまった。
乾ないこ
俯き、ぼそぼそと喋る姿は 髪を切る前の彼に逆戻りしたようだ。
それだけ言いにくいこと なのかもしれないと敢えて 軽い調子で応じることにする。
桃瀬らん
奈唯心くんは深呼吸を繰り返し 意を決したように再び顔を上げた。
前髪も眼鏡も彼の顔を 遮るものはなにもない。
熱のこもった真剣な眼差しに 私の鼓動がドクンッと高鳴った。
乾ないこ
乾ないこ
桃瀬らん
聞いた途端心拍数が高くなり 顔に熱が集まっていくのが分かった。
桃瀬らん
桃瀬らん
ワイシャツの上から早とちりな 心臓を押さえつけ私は小さく頷く。
桃瀬らん
私の返事に奈唯心くんの 表情がパアッと輝いた。
乾ないこ
そして言うが早いか 奈唯心くんは走り去って 行ってしまった。
パシャパシャと水音が跳ねるのを 聞きながら私は脱力したように 傘の天井を仰ぐ。
桃瀬らん
桜黄みこと
私の心の声に答えるように 美琴が絶妙なタイミングで呟いた。
思わず「んえっ!?」と 奇声を発してしまい ますますいたたまれなくなる。
桃瀬らん
もごもごと口を動かすと 美琴の指に頰をつつかれる。
桜黄みこと
桃瀬らん
雨乃こさめ
雨乃こさめ
無邪気に腕を組んでくる恋醒に 美琴が小さくため息をもらす。
桜黄みこと
雨乃こさめ
2人の噛み合わない会話を 意識の外に聞きながら私は ぐるぐると考えていた。
これまで奈唯心くんとは 共通の趣味を持った友人として 接してきたつもりだ。
それは向こうも同じだった はずでさっきも「デート」と いう言葉はなかった。
桃瀬らん
もしそうじゃなかったら?
そんな問いかけが頭の片隅に 居ついているけど見ないふりをする。
一方的な勘違いで大事な友情に 亀裂を入れるわけにはいかない。
桃瀬らん
自分に言い聞かせながら私は 盛り上がっている2人に声を掛ける。
桃瀬らん
雨乃こさめ
桜黄みこと
高校生活最後の夏休みは すぐそこまで迫っていた。