元貴と軽い冗談を言えるようになった。
元貴が笑ってくれるようになった。
元貴自身、気付いてるか分からないけど、大分おれに心を開いてくれている気がする。
最初は、懐かない犬がどんどん懐いてくれるのが嬉しい、みたいな感覚だったのに、最近、なんかそれだけじゃない気がしている。
でも、それがなんなのかはまだ分からない。
大森
おはよー。
朝、交わす挨拶もおれ達の日常になった。
おれは、元貴と一緒に登校する為に朝少し早起きするようになり、大体リビングで元貴が起きてくるのを待っている。
若井
おはよ!
大森
ふぁ〜…ねむい。
寝起きの元貴は可愛い。
寝癖のついた髪も、 むにゃむにゃしながら眼鏡のしたから目を擦る仕草も、 まだ寝ぼけてるのかいつもよりも全部の仕草が子供っぽくて、自然と笑みがこぼれる。
おれは兄貴しか居ないから分からないけど、弟が居たらこんな感じなのかなと思う。
若井
元貴、寝癖ついてるよ。
大森
えぇ〜どこぉ?
元貴は直してと、頭を差し出す。
若井
ココ。
水に濡らさないと無理だよ。
水に濡らさないと無理だよ。
おれは、モトキ髪の毛に指を通す。
染めて傷んでしまっているおれの髪とは違って、染められていない元貴の髪の毛は、思った以上にふわふわでサラサラしていて、もっと触っていたくなる。
大森
え〜…めんどいなぁ。
若井
元貴が歯磨いてる間に、おれが直してあげる。
大森
ほんと?やったぁー!
…ふにゃっと笑う元貴にドキッとした。