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君を誰にも渡さない

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君を誰にも渡さない

16 - 2人のデート

♥

47

2020年10月10日

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菜穂は市内に唯一ある遊園地の入口で、稜太を待っていた。

今日は遊園地でデートする約束をしていた。

稜太は仕事があるため、待ち合わせ時間は夜の7時だった。

10分遅れて、稜太はやってきた。

稜太

ごめん。待たせた

菜穂

大丈夫

菜穂

じゃあ、入ろう!

稜太

ああ

私たちは遊園地に入った。

夜になろうとしていたが、園内は人で賑わっている。

稜太

どうして突然遊園地に行きたいと思ったんだ?

稜太は不思議そうな顔で私に尋ねた。

菜穂

いいから、楽しもう!

私はそれに答えず、そう言った。

今日は色んなことを忘れて楽しもうと決めていた。

アトラクションに乗る前に、ソフトクリームを買った。

二人で分け合って食べようと思って、一つだけにした。

菜穂

はい、稜太

私はソフトクリームを一口食べて、稜太に差し出した。

稜太

ああ

稜太が食べようとして口を開けた。

私はその瞬間に意地悪をして、持っていたソフトクリームをわざとずらした。

ソフトクリームが稜太の鼻についた。

稜太

うわっ

稜太は驚いて叫んだ。

稜太

何すんだよ

稜太は鼻にソフトクリームをつけた顔で、怒った。

それを見て、私は大笑いした。

稜太もつられて笑った。

菜穂

何乗る?

稜太

そうだなぁ

菜穂

ジェットコースターは?

稜太

……別のにしよう

菜穂

え、何で?

私がそう聞くと、稜太は恥ずかしそうにした。

菜穂

もしかして、怖いの?

稜太

……そういうわけじゃねぇけど

稜太

速いのが苦手というか

菜穂

そうなんだ

菜穂

(何か以外だなぁ)

菜穂

(ちょっと可愛いけど)

菜穂

じゃあ、あれは?

私はメリーゴーラウンドを指さした。

稜太

あれなら乗れる

私たちはメリーゴーラウンドの場所へ行くと、隣り合った白馬に乗った。

音楽が鳴って、メリーゴーラウンドは回りだした。

稜太

うぉっ

稜太は少しビビった様子で、馬の首に掴まった。

私はそれを見て、クスッと笑った。

菜穂

(稜太って、結構ビビりなんだ)

私たちは緩やかに回るメリーゴーラウンドを楽しんだ。

その後、観覧車に乗った。

私たちは向かい合わせに座った。

ゴンドラが上昇するにつれて、遊園地が見渡せるようになった。

稜太はずっと窓の外ばかり眺めていた。

上の空というか、心ここにあらずというように見えた。

菜穂

(……きっと、莉緒ちゃんのことを思ってるんだ)

菜穂

そっち、行ってもいい?

私がそう尋ねると、稜太はやっとこっちを見てくれた。

稜太

ああ

私は稜太の隣に座り直した。

稜太に体をくっつけると、首を傾けて頭を彼の肩に置いた。

稜太

菜穂?

菜穂

ちょっとだけ、こうさせて

私たちは着くまで何も話さなかった。

でも、退屈ではなかった。

ゆったりとした、居心地の良い時間だった。

観覧車から降りた私たちは、イルミネーションで飾られたアーチの中に立って、周りを眺めていた。

菜穂

稜太

稜太

何だ?

菜穂

抱きしめて

稜太

え?

稜太

どうしたんだよ、いきなり

菜穂

お願い

私は稜太を見つめた。

稜太

……わかったよ

そう言って、稜太は私を抱きしめた。

イルミネーションの色とりどりの光が、私たちを照らしている。

菜穂

もう大丈夫。ありがとう

稜太は私の体から腕を離した。

私たちは顔を見合った。

稜太

今日何か変だぞ?

稜太

突然遊園地に呼び出して

稜太

いつもより積極的だし

稜太

何かあったのか?

稜太は不思議そうに尋ねた。

菜穂

今日呼び出したのは、ただ遊びたかったからだけじゃないの

菜穂

大事な話をしようと思って

稜太

話?

稜太

何だよ?

私は決意をして、言った。

菜穂

別れよう

稜太

は!?

菜穂

だから、最後の思い出を作ろうと思って、今日呼び出したの

稜太

何でいきなりそんなこと言うんだよ

稜太

わけわかんねぇよ

菜穂

私、分かったの

菜穂

莉緒ちゃんが稜太を必要としているように、稜太も莉緒ちゃんが必要だってこと

稜太

どういうことだよ

菜穂

今日だって、ずっと莉緒ちゃんのことを考えてたでしょ?

稜太

……それは

菜穂

稜太にとって大事なのは、私じゃなくて莉緒ちゃんなの

稜太

そんなことねぇよ

菜穂

私がいなければ、二人は結ばれるの

菜穂

だから、私は稜太と別れることにした

菜穂

私のことは忘れて、莉緒ちゃんと東京へ帰って

稜太

……

菜穂

さようなら

それだけ言って、私は出口へ向かって走った。

稜太

おい、待てよ

呼び止める稜太を無視して、私は走って行った。

菜穂

(これでいいの。こうするのがお互いに幸せなの)

私は振り返らずに走り続けた。

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