僕の日常は、実に平穏である。
家を出て、学校に行って、 家に帰って、寝る。
毎日それが、続いていく。
山田 香凛
おはよう。
教室に入ると、 クラスの学級委員、山田香凛が 挨拶をした。
僕
おはよう。
挨拶をかえす。
彼女は、正義感が強く、 ちゃんとした独自の価値観を 持っている。
誰よりも正しく、切な気で、 儚げな人。
僕も彼女も一緒に話す人はほぼいない。
山田なんてどこにもありそうな 名前なのに、彼女は 皆と少し違う。
山田 香凛
ねぇ、榊。
僕を呼ぶ声に振り向くと、 山田が話しかけていた。
僕
何?
山田 香凛
ここの問題、教えてほしいんだけど。
僕らは、よく話す。 他に話す人がいないから。
僕
優等生の山田がわからないなんて、珍しいね。
山田 香凛
ここの問題、分かんないけど。
山田 香凛
教えてくれない?
僕
いいけど。
僕
これって、今日の宿題じゃん。
山田 香凛
そうだけど。
僕
先生に聞けば?
山田 香凛
宿題だから、ちゃんとやらなきゃ。
僕
分かった、教えるから。
彼女は、何より正しく、何より気高い。
そして何より、
切なく、儚い。
僕
…なんで、一緒に帰ってるんだ。
山田 香凛
だって、家がおんなじ方向でしょ。
僕
だからって。
山田 香凛
榊、ぼっちでしょ。
僕
君だって。
君にぼっちって言われたくないな。
君にぼっちって言われたくないな。
山田が言葉につまる。
はっとした。
彼女は転校してきて3ヶ月、 未だにクラスに馴染めていない。、
僕
あ、ごめ―
山田 香凛
榊。
山田 香凛
謝らないで、事実だから。
遮られて彼女の目を見ると、 少し寂しそうだった。
僕
でも、ごめん。
山田 香凛
何、それ。
彼女が笑う。
山田 香凛
私はぼっちじゃないよ、榊がいるから。
僕
じゃあ、僕だって。
山田 香凛
そうだったね。
もう一度笑い合う。
これが僕の、変わらない日常なんだ。
きっとこれからも変わらないだろう。
この平穏な日常だけは、きっと。
きっと…。






