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及川 徹
秋保 楓花
及川 徹
楓花の体調が落ち着いていたある日 俺はそれだけ告げた
当日朝、駅の改札前。 スマホの画面をちらちら見ながら 落ち着かない足取りでその姿を探していた。
数日前から天気予報はチェックしてた。 晴れ。気温も高すぎず低すぎず、ちょうどいい。
そして、向こうから歩いてきたのは、カバンを抱えた彼女。 真っ白なブレザーと、チェックのベージュのスカート 学校の制服姿で
秋保 楓花
及川 徹
ちょっとウソ。15分前からいたけどね
新幹線の中、景色が流れていく車窓を見ながら、俺はずっと考えてた。
――彼女の“やりたいことリスト” ちゃんと見た。 海外とか、ウユニ塩湖とか、きっと今すぐは難しい。
けど……「制服ネズミーに行きたい」なら、俺にも叶えられるかもしれない。
秋保 楓花
及川 徹
着いてからの彼女の反応―― 正直、めっちゃ楽しみにしてた。
電車に乗り継いで―― やがて、見えてきたのは あの象徴的なお城のシルエットだった。
秋保 楓花
及川 徹
俺は、少し照れくさそうに笑いながら言った。
及川 徹
彼女の瞳に、涙が浮かんでいた。 だけどそれは、悲しみではなく――
秋保 楓花
及川 徹
園内では カチューシャ選びに真剣になって ポップコーンの味に笑って アトラクションを全力で楽しんで 彼女の好きなキャラに抱きついて パレードでは手を振って。 少し休憩を挟みながら、いつもよりゆっくりなペースで一緒に歩いた。
ワッフルを手に、笑う彼女の 横顔を眺めていた。
及川 徹
秋保 楓花
その瞬間だった。 ふいに、目の前を通りすぎたカップルの彼氏が、 彼女に“王子様風”の仕草をして手を差し出していた。
彼女が、その光景に目を細めて笑うのが見えた。
秋保 楓花
及川 徹
秋保 楓花
挑発するみたいに笑うその笑顔に なんか悔しくなった。
陽が沈み 夜の帳がパークを包み込む頃。 お城はライトアップされ、まるで本物の魔法に包まれているみたいだった。
秋保 楓花
彼女が、少しだけ切ない顔でつぶやく。
秋保 楓花
及川 徹
俺はスッと前に出て、彼女の目の前で 片膝をついた。
秋保 楓花
驚いた彼女が、小さく声を漏らす。
及川 徹
秋保 楓花
ポケットからそっと 小さなチャームを取り出した。 お土産コーナーで、こっそり買っておいたもの。 それは、小さなティアラの形をしたキーホルダー。
及川 徹
そっと手に乗せると 彼女は驚いたまま、ただ固まっていた。
一拍あってから 彼女の目がじんわりと潤む。
秋保 楓花
そう言って、ふたりで笑った。 夜風が吹いて、光が彼女の頬を優しく照らしていた。
及川 徹
彼女が、少しだけうつむいて でもちゃんと笑って。
秋保 楓花
その手のひらの上、ティアラのチャームが 小さく揺れていた。
ホテル
部屋のカーテンを開けると 窓の向こうにパークの夜景が広がっていた。
遠くに見えるお城は、さっきまでいた場所とは思えないほど静かで、 まるで絵本の中の世界だけが ぽつんと残されたみたいだった。
秋保 楓花
及川 徹
彼女がティアラのチャームを握りしめて 小さく笑った。
そして、夢の話をした。
秋保 楓花
及川 徹
秋保 楓花
及川 徹
秋保 楓花
及川 徹
秋保 楓花
及川 徹
秋保 楓花
及川 徹
秋保 楓花
及川 徹
秋保 楓花
静かに時が流れていく中 彼女はそっと、俺の肩に頭を預けた。