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君の笑顔が嫌いだった

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君の笑顔が嫌いだった

1 - 君の笑顔が嫌いだった

♥

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2022年07月12日

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僕は彼女の笑顔が嫌いだった

彼女は向日葵のような

明るく優しい女の子だった

彼女が笑えば

周りもつられて笑って

どんなに悲しいことがあっても

大きな壁にぶち当たっても

彼女が笑えば

周りはみんな笑った

まるで、彼女が

希望の花であるかのように

或いは、彼女の

女神のような美しさのせいか

みんなは彼女を慕い続けた

だけど、僕は

彼女を慕うことはなかった

それどころか

僕は、昔から

君の笑顔が嫌いだった

君の笑顔が嫌いだった

黒腹みかげ

君は、優しかった

泣いている人がいたら

黙って隣で背中をさすって

怒っている人がいたら

自分を怒りの捌け口にさせ

そして決まって

最後は優しく微笑んだ

君の笑顔で

みんな幸せになった

だから

君が笑顔を絶やすことはなかった

だけど、僕は知っている

みんなが大好きな君は

本当はいつも

影で隠れて泣いていたんだ

始まりは

満月が綺麗に輝く

夏の夜のことだった

あの日は中学校の終業式で

みんなは次の日から始まる夏休みに

心を躍らせていた

だけど、彼女だけは違った

彼女の顔は強ばっていて

どこか泣きそうにも見えた

僕は驚愕した

彼女はいつも、笑っていたから

彼女の笑顔以外の表情を

見たことなんてなかったから

ねぇ、何かあったの?

僕が傍に寄って声をかけると

君はびくっと肩を震わせて

なんだ、君か

と、安心したように呟いた

そして、彼女は

僕にふわりと微笑みかけた

ほんの一瞬だけ

ドキッと胸が高鳴ったけど

僕はすぐに気づいてしまった

彼女のその笑顔は

とても脆くて

今にも壊れてしまいそうで

まるで

作り物のようだった

ちょっと、疲れただけだよ

ほら、今日は一段と暑いじゃん

苦し紛れの嘘

君はつくり笑顔を崩さずに

声に一切の動揺を見せずに

僕にそんな嘘を吐いた

そっか

僕は何も聞かなかった

誰にだって

“ 踏み込まれたくない領域 ”

というものが存在する

と、僕は知っていたから

子どもながらに、気づいていたから

だけど、その日の夜

また偶然にも君と出くわした

場所は、僕の家の近くにある公園

僕は毎晩、家を抜け出しては

その公園のベンチに座って

ゆったり月を眺めていた

たまに犬の散歩途中の老人や

酔っ払ったおじさんなんかが来るが

基本的に僕は1人だった

それがとても心地よかった

あの日も、僕は1人だった

ぼんやりと月を眺めて

帰ろうと立ち上がった時

街灯に照らされた少女の姿

間違いなく、君だった

そして、君は僕を見つけるなり

そっと駆け寄ってきて

助けて…

と、確かにそう言った

彼女の髪は酷く乱れていて

まだ息も整っていなくて

そして何より

君は本当に泣きそうだった

果たして、君は泣き出した

僕は君をベンチに座らせて

どうしようかと戸惑っていた

さすがに、女の子を1人

こんな真っ暗な公園に

残しておくわけにはいかない

僕は大人しく

君が泣き止むのを待った

しばらくして

君はぽつぽつと話し出した

私ね、家にいると

とっても息苦しいの

私の母親、本当にろくでもない人で

毎晩違う男の人連れ込んでは私を追い出すの

今日も、ほら

家から出るのを嫌がったら、ちょっと乱暴されて

もう、慣れっこなんだけどね

また、君は笑う

だけど、僕は見過ごさなかった

君がほんの一瞬見せた、寂しげな目を

でも、うん

高校は寮制のところにすればいいし

いま我慢すれば、大丈夫

話し終えた君は

どこか諦めたような顔で

今にも消え入りそうで

あっ、ごめん

あんま話したこともない君に

こんな重い話しちゃって

今日はありがとう

僕はじっとしていられなくて

ぎゅっと彼女の袖を引っ張った

どうし───

なんで笑うの?

え?

そんな顔して、笑わないで

君はひどくびっくりしたようで

目を見開いて僕を見ている

な、なに言ってるの?

いつもなら、指摘しないけど

今の君は脆い

すごく、脆い

すごく、わかりやすいから

ずっと思ってた

なんで無理して笑ってんだろって

…君、もしやエスパー?

誰にもバレてないと思ったのに…

つくり笑いは上手だよ

あと、嘘をつくのも

僕がそう言うと、君は少し笑って

君には適わないなぁ…

と、困ったように呟いた

ちょっと自意識過剰かもだけど

私が笑うと、周りもみんな笑ってくれるの

それが、嬉しくてね

それは、建前

それに、笑えば自分の気持ちもごまかせるでしょ?

それが、本音

そっか

うん、話聞いてくれてありがとね

こんなに本音話したの初めて

また話し相手になってよね

それだけ言って、君は消えた

次の日から、学校の中でも外でも

君は僕に話しかけるようになった

僕たちは仲が良かった

と、思う

そして、高校も二人で決めて

見事二人で、 寮がある県外の高校に入学した

高校でも、君は相変わらず人気者で

相変わらず、つくり笑いを浮かべて

相変わらず、嘘をついて

相変わらず

自分の気持ちをごまかしていた

そして、あの日が来る

その日、彼女は学校を休んでいた

風邪かなにかかと思ったが

彼女なら必ず僕に連絡をくれる

なんて、変な自信を持っていて

かなり、嫌な予感がした

僕の胸で警報がなっていた

そして、やはり

嫌な予感は的中していた

先生

お前、あいつと仲良かったよな?

はい、まぁ

彼女が休んだ次の日の放課後

突然の担任からの呼び出し

そして、彼女の話題

僕は冷や汗をかいていた

先生

あいつ、実家付近の交差点で…

先生

轢かれて、意識不明の重体らしい

やっぱり、僕はエスパーらしい

何を言われるのか悟っていた

だから、驚きはしなかった

ただ、胸の奥が熱くなって

気がつけば、床に水滴が落ちてて

それが、自分の涙だと気づいたのは

先生の話が終わってからだった

先生

それで、お前に聞きたいんだが

先生

あいつは昨日、無断欠席して

先生

わざわざ実家に向かってるんだ

先生

警察も理由を探ってるらしいが…

先生

なんでかわかるか?

わからない

彼女が何を考えていたかなんて

すみません

わかんないです

先生

そうか、悪かったな

あれから、5年

君が寝てる間に、いろいろあったよ

警察が調査するうちに

お母さんの悪行と君への虐待が発覚

今は刑務所の中だよ

もう、不安要素はなくなったね

でも、ひとつ僕が気になってるのは

あの日、君が

実家に帰ろうとした理由だよ

ずっと、それだけが謎でね

僕なりに、考えてみたんだけど

今は聞いても無駄かな

すやすやと眠る君を見る

君は、こういう時も笑顔で

見てるこっちが泣けてくる

だから、僕は

君の笑顔が嫌いなんだ

大嫌いだ、本当に

早く起きろよ、ばか

そして目が覚めたら

僕の

僕が出した結論の

答え合わせをさせてくれ

君が

はやく

この眠りから覚めますように

そして

君が

心から笑う日が来ますように

なんて

僕のエゴかな

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