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扉を抜けると、広い円形の部屋に出た。
ちょうど円の中心あたりに、ガイド妖精が浮いている。
ガイド妖精
シシロウ
シシロウ
シシロウが率先して前に出て、ぼくに向かって手を伸ばした。
ぼくもシシロウの手を握ったあと、もう片方の手をアルクの前に伸ばした。
けど、アルクは握り返してこない。
ユウゴ
アルク
ユウゴ
ストレートな拒絶は、ちょっと傷つく。
シシロウ
ぼくとシシロウだけ手をつないで歩くのも変なので、いったん手をはなした。
シシロウ
シシロウ
シシロウの指示で、シシロウ、ぼく、アルク、ユトリでガイド妖精の周りを取り囲むように並んだ。
あとはガイド妖精に近づいて歩いて行くだけ。
今度の問題は、今までよりも簡単に終わりそうだ。
……と思った矢先、ガイド妖精がひょいっとアルクの頭の上をこえて飛んでいった。
ガイド妖精
5メートルほど離れたところから、また問題音声を発する。
シシロウ
アルク
口論するシシロウとアルクを見て、考えを改めた。
今度の問題も、今まで以上に苦労しそうだ、
飛んでいったガイド妖精は、地上から2メートルくらいの高さで停滞している。
ユウゴ
ユトリ
ユトリが心配しているのは、第1試験の時のようなことが起こらないかということだった。
無理に近づこうとすると、炎や体当たりなどで反撃されて、最悪の場合は消滅してしまうかもしれない。
シシロウ
アルク
アルクが宙に浮くガイド妖精を指差す。
ユウゴ
アルク
ここにいる全員の視線が自然とぼくに集中した。
ユウゴ
アルク
シシロウ
ユトリ
ユウゴ
反対していたはずのユトリも向こう側についちゃったから、完全にアウェー状態だ。
ユウゴ
ガイド妖精は2メートルくらいのところに浮いたまま、ふよふよと上下に揺れている。
あの高さだと真下からの垂直ジャンプでは届かないかもしれないので、助走をつけて少し手前でジャンプした。
タイミングは割りと良く、ぼくが手を伸ばした時に、都合よくガイド妖精が高度を下げてきた。
これならガイド妖精を捕まえられる。
と思ったのに、手が触れそうになった直前で、ガイド妖精がぼくの手を回避して飛んでいった。
3メートルほど離れたところで、ふたたび停滞し、問題音声が流れた。
ガイド妖精
ガイド妖精を捕まえたり固定したりするのは、ルール違反になるみたいだ。
シシロウ
ユトリ
アルク
アルク
ユトリ
アルク
アルク
ユウゴ
ユトリ
何がツボに入ったのか、突然ユトリが吹き出した。
ユトリ
『てん』しかかぶってないし、ダジャレ事故にもなっていない。
ガイド妖精
シシロウ
アルク
ユトリ
これは笑いすぎて何でも面白い状態に入っている。
お笑い番組とか見ていると、普段はあまり笑わないコンビの漫才でも、流れで笑っちゃうことがあるからよく分かる。
ユウゴ
アルク
ユウゴ
ユトリ
笑い疲れたユトリは、いつものおとなしくてひかえめな女の子に戻っていた。
シシロウ
この間、ただ待たされ続けていたシシロウが仕切り直す。
シシロウ
さっきと同じように、ガイド妖精を囲んで並んだ。
シシロウ
シシロウの合図で4人同時に走り出すと、ガイド妖精はアルクの頭の上をこえて離れてしまった。
このあとも何度も繰り返すが、結果は同じ。 毎回、誰かの頭の上をこえて、ガイド妖精に逃げられてしまう。
そして、3メートルほど離れたあとで問題音声が流れる。
ガイド妖精
もう何回聞いたかもわからない。
失敗が続くあせりからか、シシロウが息を切らせて肩を上下させている。
ぼくもいつの間にか、ひたいにぬぐえるほどの汗をかいていた。
アルク
ミニスカートのアルクは足元が寒いのか、内股になって少し震えている。
ユトリ
髪の長いユトリは、髪が肌に張り付いて不快そうにしている。
環境の変化に敏感な女子2人が、口々に違和感をならべる。
シシロウ
シシロウも景色の変化に気づいて口にする。
みんなの話に、ぼくも違和感の正体に気づいた。
薄暗かった部屋の空気が、ほんの少しだけど白んで見える。
部屋の中に薄い霧が発生している。
ひたいを濡らしているのは、汗ではなく結露。
空気中の湿気が肌に張り付いて水滴に戻っているんだ。
部屋の温度がさらに下がり始め、霧もしだいに濃くなっていく。
シシロウ
シシロウ
アルク
ユトリ
ユウゴ
今までは手をつなげる距離までガイド妖精まで近づいてから、手を伸ばすようにしていた。
その手を伸ばしてつなぐまでの間に、ガイド妖精に逃げられていた気がする。
手を広げてから近づけば、近づく途中でとなりの人と手が触れるから、多少はタイムラグを縮められるかもしれない。
シシロウ
アルク
ガイド妖精の四方向に並んで、何度目かのトライ。
シシロウの合図と同時に、一斉に走り出す。
最初に左手がシシロウに触れて、次に右手をアルクとつないだ。
これで成功……目の前のガイド妖精は、ユトリの頭の上をこえて遠ざかっていった。
シシロウ
アルク
ユトリ
手を広げてから近づく作戦だと、ユトリの走るフォームが崩れて、いつもより遅くなってしまったらしい。
アルク
ユトリ
ユウゴ
アルク
ユウゴ
アルク
ユウゴ
ユトリ
アルクの剣幕に、ユトリが本格的に泣き出してしまった。
ガイド妖精
離れたガイド妖精から、また問題音声が流れた。
だけど、今までと決定的に違うことがひとつある。
シシロウ
シシロウが声を上げた。
さらに濃くなった霧によって、部屋の中は完全に真っ白になっていた。
すぐ近くにいるはずの、シシロウやアルクの顔も薄っすらとしか見えず、手を伸ばすと指先が見えなくなるほどに、霧が濃くなっている。
シシロウ
シシロウが動きだしたみたいだ。
霧に隠れて見えないけど。
ユトリ
ユトリにぶつかったみたいだ。
シシロウ
シシロウ
ユトリ
まだ涙声のユトリも、回れ右してガイド妖精を探しに行ったみたいだ。
さらに霧が濃くなって、もう視界は白一色。
シシロウ達の居場所がわかるうちに追いかけないと。
ユウゴ
歩きだしたぼくの手が、ふにっとやわらかくて温かいものに触れた。
アルク
ゴオッと突風が吹き、ぼくの体が強く押された。
ぼくの周りの霧も撒き散らされ、一瞬、赤い顔をしたアルクの姿が見えた。
霧はすぐに戻って、またアルクも何も見えなくなった。
シシロウ
霧の向こうからシシロウの声。
アルク
シシロウ
アルク
アルクが起こした風が、シシロウの声がした方に向かう。
風によって霧が巻き上げられて、シシロウ、ユトリ、ガイド妖精の姿があらわれた。
シシロウ
アルク
シシロウ
シシロウが風の中を移動しながら答える。
ユトリはいち早く、シシロウの意図を理解したようで、反対側に小走りで移動した。
アルク
2人の動きを見てアルクも、そしてぼくも、シシロウの作戦に気がついた。
アルクが起こした風は、ガイド妖精を中心とした旋風になって霧を渦状に巻き上げている。
霧の切れ目に並べば、全員がガイド妖精と同じ距離だけ離れた位置に立つことができる。
残っている霧は、きれいな円を描いていた。
ぼくとアルクも急いで、円の位置に並んだ。
シシロウ
シシロウの合図で4人が手を広げて、となりの人と手をつないだ。
ガイド妖精
ガイド妖精から、クリア宣言の音声が流れる。
同時に濃い霧がさーっと薄くなり消えていった。
ガイド妖精が光を放ちながら、扉に変化した。
これで次の問題に進める。
ひとつ気になることがあってアルクにたずねてみた。
ユウゴ
霧の中でどこに触ったのかと聞こうとしたら、
アルク
と途中でさえぎられて、口を閉じてしまった。
この謎は解明しないほうが良さそうだ。