扉を通る前に、シシロウにとんでもないことを言われた。
シシロウ
ユウゴ
シシロウ
シシロウ
ユウゴ
ユトリとアルクはわからなくもないけど、1問目は火《イグニス》の魔法を使わなくても、クリアできていた気がする。
シシロウ
シシロウ
アルク
アルクが親指を立ててウインクする。
もしかして、第1試験で自分が何をしたか忘れてる?
扉に引っ張り込まれたせいで、魔法適性を受けていないんだけど。
ユトリ
何も知らないユトリは、手放しでエールを送ってくれた。
まだ水《アクア》の魔法がないと4問目がクリアできないと決まったわけじゃないし、できるだけやってみよう。
ユウゴ
意を決して、次の問題への扉をくぐった。
ガイド妖精
次の部屋に入ってすぐに、問題音声が流れた。
この部屋のガイド妖精は1問目と同じく、出口扉のレリーフになっていた。
1問目と違うのは、扉の左右に天秤のような大きな台座があるということ。
部屋の中央には木製の台があり、女神像、ドラゴン像、悪魔像の3つの金属製の彫像が並んでいる。
左右の壁には、この問題で使うための様々な道具が、積み上げられていた。
ユウゴ
複数の物の中で1つだけ重さが違う物を当てるという問題は、脳トレではおなじみの問題だ。
定番の解き方だと、同じ数で3分割して天秤で測り、どちらかにかたむけば測った中に、かたむかなければ測らなかった中に重さが違う物がある。 これを繰り返していけば、何回目かで重さが違う1つを特定することができる。
ただし、これは何回も測るチャンスがある場合に使える解き方だ。
今回はご丁寧に、チャンスは1度だけと注意書きがしてある。
アルク
アルクが3つの彫像を手にとって、重さを比べてみる。
ユトリ
ユトリが部屋の隅に積んである道具を指差す。
そんなまんまな道具があるとは思わないけど、問題を解くために用意された道具なのは間違いない。
シシロウ
シシロウが道具置き場から水槽のような大きなガラス容器を抱えて持ってきた。
アルク
シシロウ
アルク
シシロウ
シシロウ
シシロウ
ユウゴ
シシロウ
ぼくが魔法適性を受けていればシシロウの言う通りなんだけど。
ユトリ
ユトリからの助け舟。
実際には魔法適性を受けてすらいないんだけどね。
シシロウ
ユトリ
ユトリ
ユトリ
シシロウ
シシロウ
今のシシロウの話に少し違和感があった。
ユウゴ
シシロウ
シシロウ
ユウゴ
アルクは魔法適性を受ける前から、風《アエル》の魔法を自由自在に使っていた。
シシロウの話を信じるなら、アルクの行動……いや、
存在自体がイレギュラーということになる。
アルク
アルクの横槍によって、会話は打ち切られた。
まだ気になることはあったけど、あまり話を続けると、ぼくが魔法適性を受けていないことを言ってしまいそうだから、ある意味助かった。
多分、アルクも魔法適性を受ける前から風《アエル》の魔法が使えたことを知られたくないんだろう。
いくつもの疑惑が生まれたけど、それを晴らすのは今ではない。
まずは問題を解くことを第一に考えよう。
第2試験で最初に集められた会場では、使い慣れない魔法に振り回される子供が大勢いた。
仮に魔法を使えるようになっていたとしても、ユトリのように自分の意志では使えない子もいるはずだ。
そういう子供でもクリアできるように、ここの問題は作られているはずだ。
部屋の左右に置かれた道具を、ひとつひとつ調べていく。
大きな水槽、剣、ハンマー、工具箱、一斗缶、ガスストーブ、炊飯器、ビールケース、ボールペン、ハンドクリーム、腕時計、パソコンのキーボード、洗濯ばさみ、寝袋、ティーセット、キャリーバッグ、ネクタイ、靴下、保冷剤、竹ぼうき、スケート靴…… 他にも、ジャンルも大きさもバラバラで統一感が一切ない物が、大量に置いてある。
当たり前だけど、重量計のような、問題を解くのに直結する道具はない。
アルク
アルクが道具の中から特撮のオモチャを見つけて、装着している。
仮面ヲイダーはぼく達が生まれる前から続いている特撮ヒーローのシリーズで、イケメン俳優の登竜門として女の子にも人気の番組だ。 ぼくも何世代か前の仮面ヲイダーの変身アイテムを誕生日に買ってもらったことがある。 幼い頃から思っていたけど、仮面ヲイダーって語呂が悪くて言いにくいと思う。
アルク
アルクが変身アイテムで遊びはじめた。
電池も入っているようで、おなじみの派手な電飾とうるさいくらいの音声が鳴り響く。
ユトリ
ユトリが遊ぶアルクを注意する。
ぼくに気を使ってくれているように聞こえるけど、その言い方だとユトリもぼくに丸投げしているよね?
シシロウ
シシロウは道具の中にある剣を持ち出して、鞘から抜いてかまえた。
光を反射する銀色の刃は、とても偽物には見えない。
シシロウ
両手でかまえても結構な重量だったらしく、シシロウは剣の重さに耐えきれずに振り下ろした。
剣先が石畳の床に突き刺さる。
のみならず、振り下ろした剣の刃が触れたいくつかの道具が、ことごとく真っ二つに切り裂かれた。
ビールケース、炊飯器、工具箱など、普通の刃物では1回では切れそうにないものばっかりだ。
アルク
ユトリ
工具箱の中のドライバーやペンチ、メジャーなんかは、使い道があったように思うけど、それらも全部キレイに切られてしまっている。
炊飯器は使わないだろうけど、頑丈な内釜までが真っ二つだ。
ユウゴ
4問目の問題を、思い出せ。
ユウゴ
扉のレリーフになっているガイド妖精に話しかけると、問題音声が再生された。
ガイド妖精
やっぱりそうだ。
この言い方だと、重さを測る必要はないんじゃないか。
ユウゴ
シシロウ
アルク
ユトリ
3人に見守られながら、剣を持って、中央の台座に移動する。
剣を上段に構えると、3体の彫像に向かって振り下ろした。
スパ、スパ、スパ、ズパン。
狙い通り3つの彫像は真っ二つに切ることができた。
最後のズバンは、勢い余って木の台座まで切っちゃった音だ。
ユトリ
ユウゴ
ユウゴ
切った彫像を拾い集めながら、説明する。
ユウゴ
ユトリ
ユウゴ
ぼくは拾い集めた女神像、ドラゴン像、悪魔像を、扉の左右の台座に半分ずつ置いた。
ガイド妖精
扉からガチャリと鍵が開く音が聞こえた。
良かった。正解を出せた。
実は推理が外れていたらどうしようかと、内心ひやひやしていたんだ。
ユトリ
アルク
ユトリが何かを言っていたのに、変身アイテムの音声にかき消された。
ユウゴ
ユトリ
ユウゴ
もっと違うことを言ってもらえていた気がするけど、深掘りするのはやめておこう。
シシロウ
アルク
シシロウに言われて、アルクは素直に変身アイテムを外して床に置いた。
シシロウ
アルク
アルク
シシロウ
シシロウ
シシロウが先頭で扉を開き、アルクもついていく。
この4問目の間、ちょっと変な感じがした。
アルクが急にふざけだしたというか、非協力的になったというか。
元から積極的にみんなに協力していたわけじゃないけど、問題に見向きもしないでオモチャで遊び始めたのは度がすぎていたと感じる。
ユトリ
ユウゴ
ユトリにうながされて、ぼく達も後を追った。
コメント
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