マドカ
ゴミが生きていたかもしれないことを示唆するヒント?
マドカ
そんなのどこにあったの?
セイヤ
俺が最初に違和感を抱いたのは、解毒薬の本数だよ。
ツヨシ
解毒薬の本数?
何本あったかも正確には覚えてないな。
セイヤ
簡単ではあるけど、俺は濃度の計算までしてたからね。
セイヤ
あの時、用意された解毒薬の数は覚えているよ。
セイヤ
でも、その前に考えて欲しい。
セイヤ
最初の投票で何人死んだかを。
いまだに班構成の位置関係であるがゆえに、みんなとの距離はそんなに近くはない。
それでも、セイヤはみんなに聞こえるように、そして誰でも意見ができるように、声量を出した。
ハカセ
あの投票では、まず投票用紙になにも書かなかった1班目が全員死んだ。
ハカセ
1班辺り6人構成だったから、この時点で6人だね。
あの時のことを思い出しながらも、見落としてしまった事実の再検証が続く。
ニコ
その次は私達の番だった。
ニコ
私達は……みんなで結託してゴミを2位にしようとした。
ゴミ
その結果、私が裏切って、レイと私が死んだ――ってことに表向きはなっているよね?
セイヤ
あぁ、ここでは2人とカウントさせてもらうよ。
ツヨシ
次は言うまでない。
ツヨシ
俺のせいでナギが死んだ。
ややトーンダウンしてしまったツヨシには同情するが、しかし寄り添ってやる余裕はない。
セイヤ
あぁ、これで死者は9人だ。
カシン
では、次の班ですよね?
カシン
この班の生き残りは――。
ヒメ
私とカシンだけだった。
ヒメ
残りの4人は死んじゃった。
セイヤ
あぁ、これで死者は合計13人。
セイヤ
俺達の班は全員無事だったから、最初の投票で死んだのは13人ってことになる。
セイヤ
ここで、用意された解毒薬の本数を思い出して欲しいんだ。
イチカ
用意された本数……ミナミが飲んじゃった1本もカウントしていいの?
セイヤ
あぁ、もちろんそれも含める。
イチカ
だったら、18本だと思う。
セイヤ
正解。
セイヤ
そのあと、ミナミが解毒薬を飲んでしまったから、俺は16本の解毒薬と1本の毒薬が残っている前提で、濃度を薄める計算をしたんだ。
ヨウタ
駄目だ。
数字ばっかりでわけが分からなくなってきた。
ヨウタ父
セイヤ君。
申し訳ないが、ヨウタにも分かるように説明してやってくれ。
ヨウタ父
いや、おじさんはもう計算できてるけどね。
ヨウタ父の要請により、セイヤは原点に立ち返ることにする。
セイヤ
俺達は元々6人の5班構成。
セイヤ
今さら言うまでもないけど、つまり俺達は全員で30人のクラスだったことになる。
セイヤ
そして、最初の投票で死んだのが13人。
セイヤ
30から13を引いて……。
セイヤ
答えは17。
セイヤ
よって、解毒薬が用意された時点で、表向き生き残っていたのは17人のはずなんだ。
カナ
それなのに、用意された解毒薬は18本だった。
セイヤ
そう。
セイヤ
ミナミが真っ先に飲んでしまったから、なんとなく数字が合っているように思えたけど、用意された解毒薬は、生き残っている人数に対して……。
セイヤ
1人分多かったんだ。
ハカセ
そうか、あの時セイヤが作った解毒薬が1本余ったのも当然だったのか。
セイヤ
そうなんだ。
セイヤ
あの時点ですでにミナミは解毒薬を飲んでいた。
セイヤ
だから、解毒薬は1本減って残り17本。
セイヤ
そして、表向き生き残った人数は17人で、解毒薬をすでに飲んだミナミは、もう一度解毒薬を飲む必要がないから、解毒薬を飲んだのは全部で16人になる。
ハカセ
あの時、残った解毒薬は誰かが飲まなかったものじゃなかった。
ハカセ
元から1本余計だったんだ。
セイヤ
そう、志賀は便宜上、生き残っている人数分の解毒薬を用意する必要があった。
セイヤ
それを素直に用意してしまったから、1本余るのは当然だよ。
セイヤ
きっとその頃、残りの1本を飲むはずだった人物は、フルフェイスヘルメットを被って、教室の中にいたのだから。
セイヤ
ルールとしては、解毒薬は全員が飲まなければならなかった。
セイヤ
でも、最初から1本残ってしまうことは明らかだった。
セイヤ
だから志賀は、誰かが飲み忘れてしまったことにした。
セイヤ
そして、それを探し出すことはできないという理由で、そのことについては不問とすることにした。
セイヤ
これは、最初から決まっていたことだったんだ。
セイヤ
こんな理由で全滅させるのはフェアじゃないからね。
セイヤはいまだに気絶をしているであろう志賀のほうへと視線をやった。
ゴミ
さすがセイヤ。
ゴミ
そう、セイヤの言う通り、解毒薬の本数で、自分達以外の誰かが生き残っている可能性を示唆したのでしたー。
ゴミ
どう?
なかなか面白いでしょう?
ハカセ
……ひとつ教えて欲しい。
ハカセ
何度も担任には聞いたけど、なぜこんなことをした?
ゴミ
まだ分かんないかなぁ。
ゴミ
あのさ、まさかミナミが死んだのって、本当に偶然だと思う?
ゴミ
18本もある解毒薬の中から、たった1本しかない毒薬を飲めると思う?
ハカセ
まさか、意図的に飲ませた?
ゴミ
そうなるように仕向けさせたの。
ゴミ
担任を使ってね。
イチカ
…………。
ニコ
…………。
シキ
…………。
その3人に視線が集まるのは、当然だったのかもしれない。
ゴミ
あのさぁ、いまだに自分達のことナンバーズとか呼んでる馬鹿達。
ゴミ
お前達、薄々気づいていたんじゃねぇの?
ゴミ
心当たりがあったんじゃねぇの?
ゴミ
投票、毒薬、くじ引き。
ゴミ
薄々と気づいてたんだろ?
なぁ!
ゴミ
でもぉ、私だって鬼じゃない。
ゴミ
だからね、許してあげるよ。
ゴミ
……命がけで許しを乞うたらね。
ゴミ
というわけで、不意打ち恩赦(おんしゃ)ゲームを始めるよー!
悪意に満ちたゴミの表情には、満面の笑みが貼り付いていた。