テラーノベル
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午後の病棟は、いつもより静かだった。
昼食を終えたこさめ、いるま、なつは、広場でそれぞれ好きなことをしていた。
こさめは外を眺め、なつはソファに寝転がり、いるまは手元にある本を読んでいた。
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いつもなら、診察や巡回で先生達の姿を見かける時間帯だった。
けれど、今日はらんも、みこともすちも病棟で見かけない。
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その言葉に、こさめが顔を見上げる。
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それ以上は続かなかった。
しばらくして、こさめが立ち上がる。
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三人は広場を出た。
自動販売機までは、いつもの廊下を歩くだけ。
………のはずだった。
角を曲がったところで、こさめが足を止めた。
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廊下の先には、見慣れない扉があった。
昨日まで気づかなかったわけでもない。
ただ、いつもは扉の前に置かれていたワゴンがなく、少しだけ奥が見えていた。
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二人に押されるようにして、扉の前まで歩く。
扉は完全には閉まっていなかった。
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中には、普段見ることのない機械や棚が並んでいた。
白い部屋。
冷たい空気。
そして、机の上に積まれた大量のファイル。
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一冊のファイルへ目を向ける。
表紙には、見たことのない文字が並んでいた。
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ファイルを手に取る。
その瞬間。
一枚の紙が床へ落ちた。
ひらり、と白い紙が三人の足元へ落ちる。
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そこには、名前ではなく番号が書かれていた。
『被験者番号#__________』
その下には、見覚えのある文字。
【400209】 【400220】 【400623】
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こさめは紙を持ったまま、動かなかった。
そこに書かれている番号。
その番号は、自分たちが病院で渡されているものと同じだった。
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三人の間に、沈黙が落ちる。
さらにファイルを開く。
そこには、身体の状態や、検査結果らしき記録。
そして、一番下に見慣れない言葉が並んでいた。
『実験記録』
『経過観察』
『処置予定』
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声が低くなる。
その時だった。
廊下から足音が聞こえた。
コツ、コツ、
三人が一斉に振り返る。
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ファイルを元の場所へ戻し、三人は慌てて扉を閉める。
その直後。
角の向こうから、白衣の裾が見えた。
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息を殺す。
足音が近づいてくる。
けれど、誰かが廊下を通り過ぎた。
三人はしばらく動けなかった。
やがて、いるまが小さく息を吐く。
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こさめは黙ったまま、自分の腕を見る。
いつも診察を受ける場所。
いつも先生たちが優しく笑ってくれる場所。
何も疑わなかった白い病院。
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誰も答えられなかった。
その頃。
別の廊下では、らんが一人で立っていた。
手元には一枚の書類。
その表情から、いつもの笑顔は消えている。
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返事はない。
ただ遠くから、三人の足音が小さく遠ざかっていく。
らんは目を閉じる。
そして、手の中で書類を強く握りしめた。
白い世界の中で、
隠されていた嘘が、ほんの少しだけ、顔を出した。
コメント
1件
読んできたよ……第22話。 今回、めっちゃ揺れた。静かな病棟の空気から、あの見慣れない扉、そして「被験者番号」と「実験記録」──今まで優しかった白い世界が、急に冷たく見え始める瞬間が本当に丁寧に描かれてた。こさめが自分の腕を見て「なんのためにここにおるんやろ…」ってつぶやくところ、胸が締めつけられた。何も知らされずに生きてきた子たちの不安が、ひしひしと伝わってくる……。 らん先生のあの表情も、本当に気になる。笑顔の裏に隠してるもの、まだまだありそうで、次が待ちきれないよ。静かに重ねられてる伏線、ちゃんと受け取ったよ🌙🤍
空彩
174
うゆ
54
える@投稿頻度かなり遅め
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64