本当は怖い話
小林丸々.作
「わあ、なんて かわいいの!」
6歳の誕生日。
今は亡きおばあちゃんからの プレゼントは、 手作りの黒猫のぬいぐるみだった。
大きさも、
毛並みも、
まるで本物の猫のようで、
見た瞬間、 それは私の一番の宝物になった。
私はその子を、
ハンナ
と名付けた。
同じベッドで眠り、
家族旅行にも一緒に行ったし、
気になる男の子のことも、
彼女だけには打ち明けた。
一人っ子で、 友だちも少ない私にとって、
ハンナはもう親友同然だった。
私が7歳になり、
ハンナが1歳になった
翌年の誕生日。
ハンナは
カギで 付け外しする首輪
を、
私はその首輪のカギをチャームにした ネックレスを、
両親からもらった。
ブランド物の おそろいの アイテムを 身につけると、
より一層きずな強くなった気がした。
これで私たちはずっとずっと一緒だ。
そう思っていた。
10歳になった夏。
なぜか学校にお母さんが迎えに来た。
「おうちに泥棒が 入ってしまったの」
家の中はひどく荒らされていて、
金庫のお金やお母さんの宝石などが 盗まれてしまった。
「ハンナは?」
私の質問にお母さんは 首を横にふった。
「ハンナも泥棒に 盗まれて しまったわ」
私はたくさん泣いた。
警察は懸命に捜査したみたいだが、
犯人はなかなか捕まらなかった。
お金や宝石は保険で帰ってきた そうだが、
ハンナだけは帰ってこない。
何日経っても、気落ちしたままの 私を見かねて、
両親は白猫のぬいぐるみを 買って来てくれた。
「こんなの ハンナの代わりにならないわ」
「そんなこと言わないで。 警察の人は必死で捜してるから、きっとハンナも無事に見つかるわよ。 この子と一緒に帰りを待ちましょう」
「......うん。 わかったわ」
私はしぶしぶ納得した。
お母さんの言葉を信じて、
この子とハンナの帰りを待とう。
「じゃあ、 この子にも首輪を買わなきゃね」
私がそう言うと、
お母さんは困惑した表情を して見せた。
「高級な首輪は もう やめましょうか」
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