❁ころんくんside❁
まぶたに当たる微かな光と
首筋の寒さに目を覚ました
布団の隙間から手を伸ばし
ケータイを探す
薄目を開いて画面を見つめる
時刻は朝の7時だ
昨夜寝るのが遅かった割には
自然な目覚めだ
部屋はすっかり冷えきっていて
寒がりな僕は
当分 布団から出られそうにない
枕元に置きっぱなしにしていた
エアコンのリモコンを握り
暖房をつける
部屋が温まるまでは
ゴロゴロしながら
ネットサーフィンをする
だいたい いつも
同じような流れだ
ネットサーフィンと言っても
前日に自分が投稿した
動画のアクセス状況や
コメントの反応を
サラッと確認する作業だ
動画サイトにゲーム実況動画を
投稿するようになってから
しばらく経つが
最近は事務所にも入り
少しは生活リズムが
安定してきた
元々は
自分の歌を聞いて欲しくて
入ったネットの世界だったが
自分でも驚くような出会いが
沢山あった
歌ってみた動画を
評価してもらえるようになり
そこで満足する予定だったのだか
ネットの世界で色々な人達と出会い
気がつけば
グループにまで所属していた
僕は基本的に自由を好むので
昔からグループ活動は嫌いだったが
今のメンバーは
既に かけがえのない
存在になっている
そろそろ布団から出ようかと
思い始めた頃
LINEの通知が届いた
差出人は るぅとくん
大切なメンバーの1人だ
飛び出てきたバナーをタップし
トーク画面へと飛ぶ
『今日10時に行きますね』
どうやら家に来るらしい
『り』と今どきらしく
1文字で返す
重い体を無理やり起こし
パーカーとスゥエットに着替える
そして
珍しく部屋の片付けを始めた
とは言っても
床に散らばったものを適当にまとめ
見えてきた床に
掃除機をかけるだけだが
昔は るぅとくんが来るとなったら
大慌てで綺麗に仕上げていたが
最近となっては
一緒に片付けてくれるまでとなった
るぅとくんは かけがえのない
メンバーの1人である
しかし
僕は彼にそれ以上の感情を
抱いてしまっている
ある時は
無性に彼を抱きしめたくなる
またある時は
彼に甘えたくなる
誰かが
僕の知らない彼の話をしていると
イライラしてしまう
僕は この感情の名前を知らないほど
経験不足じゃない
僕はるぅとくんに
恋をしてしまっている
馬鹿だ
いつも年下で
僕のことを慕ってくれている彼を
好きになってしまうだなんて
そう思っていた
でも少し前に気づいてしまった
この感情を持っているのは
僕だけじゃない
るぅとくんも僕を好いてくれている
最近
彼が僕を見つめる目が
切ない色をしている
僕が彼を見つめている時と同じ
恋心からくる切ない色
しかも
この両片想いという事実に
気づいているのは僕だけじゃない
彼もきっと気づいている
お互いにお互いを
好きだとわかっている状況で
どちらも踏み出さない
…踏み出せないのだ
それでも僕は
このくらいの距離の方が
僕達に似合っていると思う
時々くすぐったくて
時々切ない関係
今はこの関係に名前をつけない
いつか
踏み出せる時が
来ればいいとも思うし
彼には普通の道を
歩んでほしいとも思う
僕はわがままだ
コメント
6件
神やん()
え?神すぎん?