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優衣

はぁ〜

優衣〜元気出して〜!

優衣

だって望が〜!!!

まぁ、ショックよねぇ…

望脱退のニュースの翌日。 優衣はずっとため息をついていた。

まぁ、優衣にとって望はある意味命の恩人でもあるけんねぇ

優衣

うん…

そう。 望は優衣にとって、人生を変えるきっかけをくれた人だった。

もう3年たつと…?

優衣

そうやねぇ。もうそんなに経つんやねぇ。

3年前 病院。

優衣母

優衣、いい加減手術受けんといかんよ

優衣

も〜!お母さん!やだってば!

優衣は幼い頃から病弱で、入退院を繰り返していた。

そして12歳の春。 医師に手術を受けるように言われていた。

優衣母

あんた、そんなこと言わんで…。手術を受けないと、体が…

優衣

分かっとる…でも…

まだ幼い優衣にとって、体にメスを入れることがどれだけ怖いか。

手術が無事に成功するのか。

想像するだけで恐ろしかったのだ。

毎日母が医師と相談しに病院に来ている。

医師に手術を急かされているのも、母が頭を下げているのも分かる。

でも。

優衣

怖いもん…

1人になった病室で優衣がポツリと呟いた。

しかし

優衣

ゲホッ、ゴホッゴホッ…

日に日に弱っていく自分の体。

そんな自分を優衣は分かっていた。

優衣

昔は良かったな…

幼い頃は入退院を繰り返しても、すぐに家に帰れた。

それに、少しの間だが、入院している男の子とも友達になれた。

今でも覚えてる。 サラサラの髪で、白い肌に綺麗な瞳…。 アイドルになりたいと言っていたのを今でも覚えてる。

優衣にとっての初恋だった。

優衣

あの子、今頃カッコよくなってるんだろうな…

その時だった。

優衣

え…

何気なくつけていたテレビ。

そこに居たのは

優衣

あの時の…

幼い頃、優衣とこの病院で仲良くなった男の子。

初恋の男の子。

COLORというグループ名でデビューすることになりました!

そう。佐野 望が優衣の初恋の相手だったのだ。

衝撃で優衣はテレビから視線を外せなかった。

ずっと想ってきた人がアイドルになって、テレビの中に居る。

テレビの中の望はあの頃と変わらない笑顔だった。

優衣

そっか…

優衣

夢、叶ったんだね

自分のことのように嬉しく、テレビの前で優衣の目からポロポロと涙が溢れた。

幼い頃の夢を叶えた初恋の相手が眩しすぎて、ドキドキして、なんだか分からない気持ちになった。

そして、同時に思った。

この人が輝いていく姿を、ずっと見ていきたい。

夢を叶えた初恋の子を、応援したいって。

優衣

…そのためには。

優衣は、覚悟を決めた。

望をこれから応援していく為に、生きるって。

手術を受けて、生きて、ずっとずっと初恋の子が夢を叶える姿を見ていくんだって。

望は年数を超えて、優衣に生きる目的と、夢を叶えていくことの素晴らしさを教えてくれたんだ。

…本当、すごいよ。まさかあの望と昔会っとったなんて。

優衣

私もビックリよ。テレビ着けたら初恋の人が居たんやけ。

優衣

でも。もうファンとして応援することも出来んのやね。

優衣…

優衣

ごめんね!しんみりして!そろそろ帰ろっか!

ごめん!今日先生から呼び出しがあるんよ!

優衣

分かった〜!じゃあまた明日ね!

桃と別れ、1人帰路につく優衣。

福岡の中でも田舎な道を歩く優衣。

小学生が追いかけっこをしながら下校していたり、おばさんが井戸端会議をしていたりと、日常がそこに広がっている。

そんな光景も、いつもは微笑ましく見えるのに、今の優衣には色褪せて見えた。

優衣

もう、テレビや雑誌でも見れないんだ…

じんわりと優衣の瞳に涙が広がる。

周りのもの全てがぼやけて見えて、慌てて制服の裾で拭った。

優衣

私が泣いたって、何も変わらんもん…

そう自分に言い聞かせ、首を振った。

その時

ドンッ

優衣

…っ!?

視界が塞がっていたせいで、目の前に歩いている人に気づかなかった。

優衣

っっ。すみませんっ!

いえ、こっちこそボケっとしてたから…

目の前に居たのは、近所の男子高校の制服を着た男性だった。

男性はぶつかった拍子にズレたのであろうメガネをクイッと上げていた。

…泣いてますか?

優衣

!!…これは…。

慌てて優衣は涙で濡れた両目を擦った。

擦ると目が腫れますよ。傷でもついたら大変です。

これ、良かったら。

そう言って男性は自分が持っていたハンカチを優衣に渡した。

優衣

え…

あ、キモイですかね。初対面の男から突然

優衣

いえ!そんなこと!ありがとうございます!

男性からハンカチを受け取り、優衣は両目をおさえた。

あ、すみません。俺急いでて。本当すみませんでした。

そう言って男性は走って行ってしまった。

優衣はその場に呆然と佇むしかなかった。

底の厚いメガネと目が隠れる程の長い前髪とボサボサの後ろ毛。

全くタイプとかではないのに。

ほんの一瞬の出来事なのに。

優衣

え…私…

優衣はさっきの男性にドキドキしていた。

理由は分からない。

ただ、久しぶりだった。こんなに胸が高鳴ったのは。

そう。3年前病院で初恋の子をテレビで見た以来。

優衣

意味わからん…

まだ、分からなかった。

この出会いは、運命の出会いだったなんて。

この人のことが好きで好きで、苦しくなる日が来るなんて…。

ダサいのには理由がある!~アイドルと恋愛してみませんか?~

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