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かに🦀
「千代木さん、その、これ何て読むの?」 台本を指しながらそう尋ねるのは松野カラ松。 松野家次男。松野の兄だ。 今まで木の役とかでセリフはなかったはずだ。 「"だかい"。これ、主人公のセリフだよね。」
かに🦀
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珍しいね。そう言うと少し下を向きながら申し訳なさそうに続ける。 「うん、トド松が、その…色々あって。」 主役はじぐ蔵だったと思うが、聞かないでおいた。
かに🦀
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松野君は、兄弟の仲が悪くなり始めた頃 松野と二人でご飯を食べたりと、 最後まで仲が良かった。 でも最近、松野が柳田のグループに入ってからは 明らかに会話が減った。
かに🦀
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演劇部には、最初は松野の兄弟について 知りたいというほぼ下心で入った。 勿論今は楽しく真剣にやっている。 「松野君、兄弟、来てくれそう?」 三年生、最後の舞台だ。 正直、友達として心配している。 「どうだろう。一松には来てほいしんだけどね。」
かに🦀
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「やっぱ無理そうか。」 松野は"六つ子"という肩書きを 嫌っているように見える。 これは他の兄弟にも言えることだ。 「僕たち、卒業したらどうなっちゃうんだろう。」 何も言えなかった。 言葉は思いついても、 それは私が言える事ではないから。 「…ごめん、そろそろ戻るね。」 松野君は演者で、私は音響だ。 音響というのは、簡単に言えば音声や効果音係。 本番以外は音を集めていたりする。 「うん、頑張って。」 「松野君もね。」 部活もそうだか、兄弟の事、将来の事。 そんな気持ちを込めて言っても、 言葉にしなければ伝わらない。 そう、松野一松が好きだって感情も。 本人に直接言葉にして伝えなければならない。 ああ、卒業したくないな。
かに🦀
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