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星也さんからの言葉に勇気をもらった私は、

ママにお弁当を渡したあと、家に帰ってさっそく

昨日の紅羽の配信のアーカイブを見てみることにした。

紅羽

『うぃ~す、やってくぞ』

コメント

『枠あざ!』

コメント

『今日もお疲れさまー』

コメント

『紅羽、毎日配信えら』

紅羽

『そー今日はね、いろいろお仕事があだこだあったわ』

紅羽

『ま、でもWWOはね、やるよねー』

紅羽

『あ、そういやこないだ奏がさあ…』

すみれ

(紅羽さん…やっぱりすごい)

すみれ

(画面からじゃ、疲れを全く感じさせない。)

すみれ

(Vtuberモデルからじゃ、顔色とかが分からないのは当たり前だけど)

すみれ

(声も、いつも通りに聞こえる)

すみれ

(案件を減らしたから、少し休めるようになったのかな…?)

相変わらずブレのない配信のテンポの良さとゲームの上手さに舌を巻きながらも

私はそんなことを考えていた。

こうして、彼が仕事をこなせている姿を見ていると、

紅羽さんには、やっぱり余計なことをしたかもしれないと

今更私の中で後悔が芽生える。

すみれ

(やっぱり私の素人目線で、出過ぎた真似で)

すみれ

(プロで天才の紅羽さんには、いらぬ心配だったのかも)

私がため息をついていると、

不意に配信画面の左側、紅羽さんのアイコンが赤く光り出す。

ちょうどいま、紅羽さんが配信を始めたようだ。

私は彼のチャンネルページに飛んで、ライブ配信を視聴する。

どうやら今日も昨日の続きで、アクションゲームをプレイしていくようだった。

紅羽

『うぃ~す』

紅羽

『やってくぞ』

コメント

『楽しみ~』

コメント

『紅羽今日も出かけてたんだね』

紅羽

『あー、そー、ツイッチャでも言ったけど、仕事あった』

コメント

『お疲れ様ー』

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『なんか、ねむい?』

コメント

『声眠そう』

紅羽

『あ~?眠くない!』

紅羽

『眠く!!ない!!』

コメント

『www』

コメント

『ねむそう』

コメント

『無理すんなw』

紅羽

『んにゃ~?まじでねむくないが』

紅羽

『ちょっと頭ふわふわするだけで』

紅羽

『ふわってる』

コメント

『ふわってるw』

コメント

『それを眠いというのでは?』

紅羽さんは相変わらず軽いトークをリスナーと交わしながら

ゲームをどんどん進めていき、

つぎつぎとゾンビを打ち倒していく。

すみれ

(確かに、昨日より少し眠たそうかも)

それでも、持ち前のゲームの腕はほとんど反射なのか、衰える様子がない。

すみれ

(ある程度は寝れているといいんだけど…)

紅羽

『…………』

紅羽

『…………』

紅羽

『…………』

すみれ

…あれ?

すると、突然、ふっと紅羽さんがしゃべらなくなった。

私はどうしたのかと驚くが、画面の操作キャラクターはまだちゃんと動いているし

操作はしているようだった。

コメントにも、ざわざわと違和感が見え始める。

コメント

『くれはー?』

コメント

『寝た?』

コメント

『いや、今集中してやってるんでしょ』

コメント

『なんかしゃべれw』

画面端の紅羽さんのキャラクターは、カメラで認識して動いているはずだが

まるでバグってしまったかのように、執拗に瞬きを繰り返して

顔も左右に揺れている。

私が不穏な空気を感じ取りはじめたその時、ついに事件は起きた。

 

『バターーーン!!』

『バターーーン!!』

突然の大きな音。止まる画面。鳴り続けるBGM。

画面端の紅羽さんのキャラクターは、目を閉じたまま、斜めに首を傾けている。

カメラのモーションキャプチャが外れてしまったのだろう。

ということは、おそらく紅羽さんはカメラに映っていない。

すみれ

(もしかして…倒れた!!?)

明らかな異常の発生に、コメント欄のリスナーも混乱し始めた。

コメント

『!?』

コメント

『!!?』

コメント

『なに!?今の音』

コメント

『紅羽だいじょぶ!?』

コメント

『倒れた?!』

コメント

『どうしようこれ』

コメント

『通報ってどうやってするの?』

すみれ

(どうしよう…!どうしよう…!)

私は、混乱して真っ白になりそうな頭を、なんとかフル回転させる。

すみれ

(落ち着け…落ち着け私…)

すみれ

(救急車…!?でも本当に倒れてるのか分からないし…)

すみれ

(それに、配信!まず配信を止めないと…)

すみれ

(そうだ、ママ!ママかマネさんに連絡を入れて…!)

いろんな選択肢が頭の中を駆け巡って、何が正しいのか分からない。

スマホで連絡しようと思ったが、配信のむこうで何か動きがあるかもしれないため、

私はもつれる足で固定電話のところまで行き、

震える手でママに電話をかけた。

すみれ

(お願い!ママ、出て…!)

プルルルル…

プルルルル…

プルルルル…

すみれ

(ダメだ、つながらない…)

すみれ

(………)

すみれ

(そうだ、会社!)

プルルルル…

アナウンス

お電話ありがとうございます。株式会社レインサウンドです。本日の営業時間は終了いたしました……

すみれ

(だめだ、つながらない…!)

すみれ

(とりあえず、ママにはトークで連絡を入れて…)

配信の様子は相変わらずで、コメントのざわざわ度がどんどん増していて、

リスナーにまで大きな不安が生まれているようだ。

ママに連絡を入れ終えると、途端に、

目に涙があふれてきた。

紅羽さんが心配だ。でも、心配で悲しくて泣いているんじゃない。

それ以上できることがなくなってしまった自分の、情けなさが悔しかった。

すみれ

(なにもできない。私、何にもできない。)

すみれ

(仕事のチャットは退室させられちゃったから、紅羽さんに電話はかけられないし、マネさんにも連絡は取れない。)

すみれ

(どうしたらいいの…?)

すみれ

(わたし、本当に何もできないの…?

自らの無力感にただ呆然と涙を流す。

すると不意に、

なぜか、紅羽さんの声が頭の中で聞こえた気がした。

 

 

紅羽

明日は……、味噌汁、もう少し濃いめにして。

 

すみれ

(………そうだ。)

できることは、まだある。

もう手は尽くした、と思っても。

やってないことが、まだ、ある。

どんなことでも。一見無駄なことでも。

何が実を結ぶかは、やってみないと、分からない。

だから。

すみれ

(…行こう。)

すみれ

(紅羽さんの家に、行こう!)

すみれ

(タクシーを飛ばせば30分でつく)

すみれ

(無駄かもしれない、鍵もない。それでも)

すみれ

(こうして考えているうちにも、紅羽さんの容態が悪化しているかもしれない。)

私は財布を掴んで、着の身着のまま、家を飛び出した!

すみれ

(紅羽さん…!)

すみれ

(どうか、無事でいて…!)

超人気Vtuberの目覚まし係になりまして

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