花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
ほら、木乃も言わなきゃよ?
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の父親
言ってくれたら、晩御飯くらいお父さんが作ったのに…
花湯の母親
私が作るから、木乃は演技のお勉強してなさい?
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
このままじゃ怒られちゃう。
花湯 木乃(小学6年生)
『ここは…お花畑?どうして、こんな所に…』
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
『そういえば…貴方のお名前を聞きたいの!教えてくれない?』
花湯 木乃(小学6年生)
あとは、これを繰り返して…
しばらく経ち…
花湯の母親
オムライス出来たわよ!
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
花湯 木乃(小学6年生)
…ねぇ、お父さんは?
花湯の母親
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
本番、とうとう明日でしょう?
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
舞台、楽しみにしてるわ!
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
???
花湯 木乃(小学6年生)
???
花湯 木乃(小学6年生)
どうして…?泡沫は人形のはずじゃ…
泡沫(うたかた) 今回の演劇にて花湯と共演する人形。…のはず。
泡沫
私は人形だよ、リリアル。…いや、木乃。
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
木乃が『本当に愛せるもの』ってなんだと思う?
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
……違うよ。正解は決して演劇ではない。
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
ドラマとかTVじゃなくて、あの演劇団の小さな舞台だけでそう言えるほどに。
泡沫
木乃が演劇を続けているのは、お母さんへの罪悪感や、叱責への恐怖。
泡沫
けど、それ故に成長が速すぎる。木乃自身がそれについていけてないんだよ。
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
きっと、この演劇が終わったらすぐに分かるから。
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫
…それじゃあ、また明日ね。
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
それじゃあ、今着てる予備用の衣装は脱いだらお母さんに渡してね。
本番用の衣装置いておくから、それに着替えなさい。
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
…『…本当に?…じゃあ、いっか!えへへ…』
演者A(リリアルの母親)
小学生なのに…すっごく偉いね!
花湯 木乃(小学6年生)
演劇B(泡沫の人形師)
私なんて、ちょっとサボっちゃって全然練習できてないよ…
演者C(リリアルの父親)
糸を使って泡沫を動かすだけでしょう?
演劇B(泡沫の人形師)
声は裏方が何かの技術で充ててくれるらしいですけど…
裏方(照明担当)
もうすぐ始まりますよ!
演者A(リリアルの母親)
花湯 木乃(小学6年生)
昔、森の奥深くに、リリアル=アスチルベという可愛らしい少女が居ました。 その日はいつもより太陽が出て、少女もその暖かさを感じていました。
リリアル=アスチルベ
こんな日に、お外で日向ぼっこができたら……。
少女には、過保護な両親が居ました。 その両親は、危険な外には決して少女を出しませんでした。
演者A(リリアルの母親)
リリアル=アスチルベ
演者C(リリアルの父親)
お父さんも一緒に食べていいか?
演者A(リリアルの母親)
リリアルも、いいわよね?
リリアル=アスチルベ
えへへ…家族みんなでご飯食べるの、わたし大好きだよ!
演者A(リリアルの母親)
家族は起きたら仲良く朝食を摂り、会話し、昼食を摂り、昼寝をして、また会話し、夕食を摂り、会話し、風呂に入り寝る。 そんな日々の繰り返しでも、無知な少女は決して退屈しませんでした。
リリアル=アスチルベ
…お日さまが出ていないの、ちょっと寂しいなぁ…。
少女は、太陽を愛していました。 無知な少女にも、たった1つだけ願いがあります。 それは、外で日を浴びることでした。
演者C(リリアルの父親)
リリアル=アスチルベ
もちろんいいよ!どうしたの?
演者C(リリアルの父親)
だから、お母さんとお父さんからのプレゼントだ。
リリアル=アスチルベ
今日は、少女が産まれて10年が経つ日。
演者C(リリアルの父親)
人形
リリアル=アスチルベ
これ、お母さんが作ったの?
演者C(リリアルの父親)
お母さんは今誕生日ケーキを作っているぞ!
リリアル=アスチルベ
えへへ、楽しみだなぁ…
演者C(リリアルの父親)
いい子にしているんだぞ?
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル自身の本当の幸せって分かる?
リリアル=アスチルベ
人形
リリアルは、今…自由?
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
リリアル=アスチルベ
今まで両親の言いつけをずっと守り、決して外には出なかった少女でしたが、 この人形と話していると、不思議と外に出ようと思ったのです。
人形
ほら、それなら行くよ、リリアル?
リリアル=アスチルベ
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
草って、ふさふさしてるんだね。木って、硬いんだね。
当たり前のことが、少女にはとても美しく思えました。 梅雨に入り、太陽が出ていないことすら忘れるぐらい、少女は幸せでした。
人形
リリアル=アスチルベ
人形
リリアルは、私についてきてくれる?
リリアル=アスチルベ
どこまででも、お人形さん…!
人形
こっちだよ、リリアル!
リリアル=アスチルベ
少女と人形は手を繋ぎ、雨に打たれながら南の方向へ駆けて行きました。
リリアル=アスチルベ
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
少女が見た水溜りは、泥が混じっていて、決して綺麗ではありませんでした。 けれど、少女には、それが世界1美しい湖に見えたのです。
人形
リリアル=アスチルベ
…本で見たことあるけど…分かんない。
人形
リリアル=アスチルベ
…わたしの苗字と一緒だ!
人形
だからここに連れてきたかったの。
リリアル=アスチルベ
リリアル=アスチルベ
お花って、すごく綺麗だね…。
人形
人形
リリアル=アスチルベ
今までの人生で、いっちばん楽しいよ!
人形
『これで、空が晴れていたら───。』 なんて少女が思ったとき。
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
ねぇ、お人形さん、あれが『虹』?
人形
リリアル=アスチルベ
すごく、すごく綺麗…
少女と人形は手を繋ぎ、土を踏みしめ、虹を眺めて、初めて太陽を直接浴びました。
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
少女は、心の底から笑顔になりました。 物心ついてからの願いが、やっと叶ったのです。
人形
リリアル=アスチルベ
人形
リリアル=アスチルベ
えっとね、お名前は───
演者A(リリアルの母親)
リリアル=アスチルベ
演者C(リリアルの父親)
こんなところに居たのか!
リリアル=アスチルベ
演者A(リリアルの母親)
リリアル=アスチルベ
…ずっと、ずっと…出たかった。
演者C(リリアルの父親)
演者A(リリアルの母親)
私達も…過保護過ぎたかもしれないわ。
リリアル=アスチルベ
演者C(リリアルの父親)
演者A(リリアルの母親)
リリアル=アスチルベ
演者C(リリアルの父親)
リリアル=アスチルベ
両親に外に出ることを許された少女は、心が隙間なく満たされました。
リリアル=アスチルベ
リリアル=アスチルベ
少女が発したその言葉は、 世界で1番美しい花畑にある、世界で1番美しい湖に浮かんだ泡を表しました。
泡沫
人形…いいえ、泡沫は、心なしか笑っているようでした。
…これにて、 演劇『無知な少女が知るは華』は終わりとなります。
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
リリアルの衣装は脱いで!次はミルアの衣装を着るわよ!
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
花湯 木乃(小学6年生)
10年間は幽閉されてしまったけど、その後はすごく自由だった。
花湯 木乃(小学6年生)
わたし自身の本当の幸せを。
花湯の母親
花湯 木乃(小学6年生)
それは、演劇なんかじゃなかった。わたしには、やりたいことがあったの。
花湯の母親
花湯 木乃(小学6年生)
リリアルが見た花畑のような美しさを、わたしも見たいの。
花湯の母親
花湯の母親
もう、演劇はやらなくてもいい。貴方のやりたいことをやりなさい。
花湯 木乃(小学6年生)
花湯の母親
いい子にしていてね。
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
花湯 木乃(小学6年生)
泡沫は、泡の人形かな。
花湯 木乃(小学6年生)
もし、花湯 木乃のこの物語に名前を付けるなら…、
花湯 木乃(小学6年生)