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花湯 木乃(小学6年生)

………。

花湯の母親

ただいま〜!お父さん!
ほら、木乃も言わなきゃよ?

花湯 木乃(小学6年生)

……。ただいま、お父さん!

花湯の父親

なんだ、もう帰ってきてたのか!
言ってくれたら、晩御飯くらいお父さんが作ったのに…

花湯の母親

そんなのいいのよ!
私が作るから、木乃は演技のお勉強してなさい?

花湯 木乃(小学6年生)

うん、分かった!……。

花湯 木乃(小学6年生)

…………。

花湯 木乃(小学6年生)

『ここは、お花畑?どうして、こんな所に?』

花湯 木乃(小学6年生)

……違うな…。
このままじゃ怒られちゃう。

花湯 木乃(小学6年生)

…。
『ここは…お花畑?どうして、こんな所に…』

花湯 木乃(小学6年生)

……うん。

花湯 木乃(小学6年生)

……にしても、この演劇用の衣装の予備、脱ぎたいなぁ…。でも、脱いだら怒られるし…。

花湯 木乃(小学6年生)

……。今は収録じゃなくて家なのに。

花湯 木乃(小学6年生)

…『…お花、綺麗だなぁ。』
『そういえば…貴方のお名前を聞きたいの!教えてくれない?』

花湯 木乃(小学6年生)

……うん、いい感じ。
あとは、これを繰り返して…

しばらく経ち…

花湯の母親

木乃〜!
オムライス出来たわよ!

花湯 木乃(小学6年生)

あ…。できた。

花湯の母親

はい、それじゃあ頂きます!

花湯 木乃(小学6年生)

頂きます。
…ねぇ、お父さんは?

花湯の母親

お父さんは夜勤に行ったわ。

花湯 木乃(小学6年生)

そうなんだ…。

花湯の母親

それより、練習はどう?
本番、とうとう明日でしょう?

花湯 木乃(小学6年生)

いい感じに進んでるよ。

花湯の母親

あら、そうなのね!♪
舞台、楽しみにしてるわ!

花湯 木乃(小学6年生)

うん、絶対楽しませるからね!

花湯 木乃(小学6年生)

(そんな他愛の無い会話をしながらオムライスを食べ、部屋に戻った。)

花湯 木乃(小学6年生)

『…ねぇ、貴方に聞いて欲しいことがあるの。』

花湯 木乃(小学6年生)

…『あのね…。お花って、こんなにも素敵だったんだね。わたし、今まで知らなかった!』

花湯 木乃(小学6年生)

……。うん、いい感じ…だよね…。

???

……そうかな?

花湯 木乃(小学6年生)

うわぁっ!?だ、誰!?

???

…私だよ。泡沫。

花湯 木乃(小学6年生)

う、泡沫!?
どうして…?泡沫は人形のはずじゃ…

泡沫(うたかた) 今回の演劇にて花湯と共演する人形。…のはず。

泡沫

そうだね。
私は人形だよ、リリアル。…いや、木乃。

花湯 木乃(小学6年生)

じゃ、じゃあどうして…?

泡沫

…醒めちゃいけないよ、木乃。

花湯 木乃(小学6年生)

…どう、して?…いや、…分かった。

花湯 木乃(小学6年生)

(なぜだろう。確証なんてないのに、言う通りにしたほうが良いような気がして堪らない。)

泡沫

うん。それでいい。…ねぇ、木乃。
木乃が『本当に愛せるもの』ってなんだと思う?

花湯 木乃(小学6年生)

わたしが、本当に愛せるもの?

泡沫

うん。

花湯 木乃(小学6年生)

…演劇、じゃないの?

泡沫

…木乃も、分かってるでしょ?
……違うよ。正解は決して演劇ではない。

花湯 木乃(小学6年生)

じゃあ、何?

泡沫

木乃はね、きっとこの演劇でその大切なものを見つけるよ。

花湯 木乃(小学6年生)

この演劇で?

泡沫

うん。

花湯 木乃(小学6年生)

……そんなこと、あるの?

泡沫

木乃は、昔から今まで、ずーっと演劇を続けてきたよね。

花湯 木乃(小学6年生)

うん、そうだね。

泡沫

木乃は演技の実力がある。
ドラマとかTVじゃなくて、あの演劇団の小さな舞台だけでそう言えるほどに。

泡沫

だからこそ、木乃は演劇を好きにはなれなかった。むしろ、嫌いになってしまった。
木乃が演劇を続けているのは、お母さんへの罪悪感や、叱責への恐怖。

泡沫

木乃は優秀。演技では誰も文句が言えないぐらい優秀。しかも、努力好き。
けど、それ故に成長が速すぎる。木乃自身がそれについていけてないんだよ。

花湯 木乃(小学6年生)

…ど、どういうこと?

泡沫

…今はまだ分からなくていいよ。
きっと、この演劇が終わったらすぐに分かるから。

花湯 木乃(小学6年生)

…分かった。なんとなく、今はその方がいい気がする。

泡沫

うん、よかった。
…それじゃあ、また明日ね。

花湯 木乃(小学6年生)

うん、また明日。

花湯の母親

木乃〜、もう朝よ〜。

花湯 木乃(小学6年生)

…おかあさん…。おはよう。

花湯の母親

おはよう!
それじゃあ、今着てる予備用の衣装は脱いだらお母さんに渡してね。
本番用の衣装置いておくから、それに着替えなさい。

花湯 木乃(小学6年生)

うん、分かった…。

花湯 木乃(小学6年生)

『…でも、お母さんとお父さんに怒られちゃうよ。』
…『…本当に?…じゃあ、いっか!えへへ…』

演者A(リリアルの母親)

木乃ちゃん、まだ練習してるの?
小学生なのに…すっごく偉いね!

花湯 木乃(小学6年生)

え、えへへ…ありがとうございます。

演劇B(泡沫の人形師)

本当に偉いよね〜。
私なんて、ちょっとサボっちゃって全然練習できてないよ…

演者C(リリアルの父親)

貴方は大丈夫ですよ。
糸を使って泡沫を動かすだけでしょう?

演劇B(泡沫の人形師)

そうだけど…それって意外と難しいんですよ〜?
声は裏方が何かの技術で充ててくれるらしいですけど…

裏方(照明担当)

みなさーん!
もうすぐ始まりますよ!

演者A(リリアルの母親)

あっ、それじゃあ行きましょう!木乃ちゃん!

花湯 木乃(小学6年生)

はい…!

昔、森の奥深くに、リリアル=アスチルベという可愛らしい少女が居ました。 その日はいつもより太陽が出て、少女もその暖かさを感じていました。

リリアル=アスチルベ

今日は暖かいなぁ…。
こんな日に、お外で日向ぼっこができたら……。

少女には、過保護な両親が居ました。 その両親は、危険な外には決して少女を出しませんでした。

演者A(リリアルの母親)

リリアル、一緒にご飯食べましょう!

リリアル=アスチルベ

あ、お母さん!一緒に食べよう!

演者C(リリアルの父親)

おーい、リリアル達 !
お父さんも一緒に食べていいか?

演者A(リリアルの母親)

えぇ、もちろん!
リリアルも、いいわよね?

リリアル=アスチルベ

うん、もちろん!
えへへ…家族みんなでご飯食べるの、わたし大好きだよ!

演者A(リリアルの母親)

うふふ、お母さんもよ♪

家族は起きたら仲良く朝食を摂り、会話し、昼食を摂り、昼寝をして、また会話し、夕食を摂り、会話し、風呂に入り寝る。 そんな日々の繰り返しでも、無知な少女は決して退屈しませんでした。

リリアル=アスチルベ

今日は、雨か…。
…お日さまが出ていないの、ちょっと寂しいなぁ…。

少女は、太陽を愛していました。 無知な少女にも、たった1つだけ願いがあります。 それは、外で日を浴びることでした。

演者C(リリアルの父親)

リリアル、ちょっといいか?

リリアル=アスチルベ

あ、お父さん…!
もちろんいいよ!どうしたの?

演者C(リリアルの父親)

今日は、リリアルの誕生日だろう?
だから、お母さんとお父さんからのプレゼントだ。

リリアル=アスチルベ

プレゼント?

今日は、少女が産まれて10年が経つ日。

演者C(リリアルの父親)

ほら、どうぞ。

人形

………

リリアル=アスチルベ

わぁっ、すっごく可愛いね!
これ、お母さんが作ったの?

演者C(リリアルの父親)

あぁ、作ったのはお母さんで、材料を集めたのはお父さんだ。
お母さんは今誕生日ケーキを作っているぞ!

リリアル=アスチルベ

そうなの?♪
えへへ、楽しみだなぁ…

演者C(リリアルの父親)

それじゃあ、お父さんはお母さんのことを手伝いに行ってくるな。
いい子にしているんだぞ?

リリアル=アスチルベ

うん、分かった!

人形

……ねぇ、リリアル

リリアル=アスチルベ

わぁっ!?…お、お人形さんが、喋った…?

人形

うん、喋るよ。…今はね。

リリアル=アスチルベ

今は?

人形

…そんなことはいいの。ねぇ、リリアル?

リリアル=アスチルベ

どうしたの?

人形

リリアルはさ、
リリアル自身の本当の幸せって分かる?

リリアル=アスチルベ

…わたし自身の、本当の幸せ…?

人形

うん。
リリアルは、今…自由?

リリアル=アスチルベ

……自由か、って言われたら…。

人形

…違うでしょう?

リリアル=アスチルベ

…でも、『自由』が何か分からないの。

人形

…それなら、リリアルの願いを叶えればいいんじゃないかな?

リリアル=アスチルベ

わたしの願い?

人形

そう。

リリアル=アスチルベ

…でも、外に出たら、怒られちゃうよ?

人形

…リリアル。……大丈夫だよ。

リリアル=アスチルベ

………

リリアル=アスチルベ

…分かった。

今まで両親の言いつけをずっと守り、決して外には出なかった少女でしたが、 この人形と話していると、不思議と外に出ようと思ったのです。

人形

…よかった。
ほら、それなら行くよ、リリアル?

リリアル=アスチルベ

…うん!

リリアル=アスチルベ

ここは…外、なの?

人形

うん、そうだよ。

リリアル=アスチルベ

…わぁっ……
草って、ふさふさしてるんだね。木って、硬いんだね。

当たり前のことが、少女にはとても美しく思えました。 梅雨に入り、太陽が出ていないことすら忘れるぐらい、少女は幸せでした。

人形

…ねぇ、リリアル。

リリアル=アスチルベ

どうしたの?

人形

連れていきたい場所があるの。
リリアルは、私についてきてくれる?

リリアル=アスチルベ

…そんなの、勿論だよ。
どこまででも、お人形さん…!

人形

…ふふっ。
こっちだよ、リリアル!

リリアル=アスチルベ

うん!

少女と人形は手を繋ぎ、雨に打たれながら南の方向へ駆けて行きました。

リリアル=アスチルベ

わぁっ、綺麗…!

リリアル=アスチルベ

これって、水溜り?

人形

うん、そうだよ。

リリアル=アスチルベ

…綺麗だね…。

少女が見た水溜りは、泥が混じっていて、決して綺麗ではありませんでした。 けれど、少女には、それが世界1美しい湖に見えたのです。

人形

ねぇ、リリアル。このお花、知ってる?

リリアル=アスチルベ

このお花?
…本で見たことあるけど…分かんない。

人形

このお花はね、『アスチルベ』っていうんだよ。

リリアル=アスチルベ

アス、チルベ…。
…わたしの苗字と一緒だ!

人形

…ふふ、そうだよ。
だからここに連れてきたかったの。

リリアル=アスチルベ

そうだったんだ…

リリアル=アスチルベ

……ねぇ、お人形さん。
お花って、すごく綺麗だね…。

人形

でしょう?

人形

…どう?楽しい?

リリアル=アスチルベ

うん…!
今までの人生で、いっちばん楽しいよ!

人形

よかった。

『これで、空が晴れていたら───。』 なんて少女が思ったとき。

リリアル=アスチルベ

…あれ?雨が…。

人形

だんだんと晴れてきた…ね。

リリアル=アスチルベ

……わぁ…………。
ねぇ、お人形さん、あれが『虹』?

人形

うん、そうだよ。…綺麗だね。

リリアル=アスチルベ

…うん。
すごく、すごく綺麗…

少女と人形は手を繋ぎ、土を踏みしめ、虹を眺めて、初めて太陽を直接浴びました。

リリアル=アスチルベ

…太陽って、あったかいね…。

人形

…そうだね…。

リリアル=アスチルベ

………。

少女は、心の底から笑顔になりました。 物心ついてからの願いが、やっと叶ったのです。

人形

…ねぇ、リリアル。

リリアル=アスチルベ

どうしたの?

人形

私に…名前を、付けてくれないかな?

リリアル=アスチルベ

…うん、もちろん!
えっとね、お名前は───

演者A(リリアルの母親)

ちょっと!!リリアル!?

リリアル=アスチルベ

…あ……。

演者C(リリアルの父親)

やっと見つけた…。
こんなところに居たのか!

リリアル=アスチルベ

…お母さん、お父さん。

演者A(リリアルの母親)

……リリアル、外に出たかったの?

リリアル=アスチルベ

……、うん。
…ずっと、ずっと…出たかった。

演者C(リリアルの父親)

……そうだったのか。

演者A(リリアルの母親)

…ごめんなさい。
私達も…過保護過ぎたかもしれないわ。

リリアル=アスチルベ

……!

演者C(リリアルの父親)

これからは、お父さんやお母さんに一言言ってからなら…外に出してもいいかもな。

演者A(リリアルの母親)

えぇ、そうね…。

リリアル=アスチルベ

……本当に?

演者C(リリアルの父親)

あぁ、本当だ。

リリアル=アスチルベ

……ありがとう…。

両親に外に出ることを許された少女は、心が隙間なく満たされました。

リリアル=アスチルベ

……そうだ。

リリアル=アスチルベ

……ありがとう、"泡沫"。

少女が発したその言葉は、 世界で1番美しい花畑にある、世界で1番美しい湖に浮かんだ泡を表しました。

泡沫

………

人形…いいえ、泡沫は、心なしか笑っているようでした。

…これにて、 演劇『無知な少女が知るは華』は終わりとなります。

花湯 木乃(小学6年生)

…………。

花湯の母親

木乃〜!
リリアルの衣装は脱いで!次はミルアの衣装を着るわよ!

花湯 木乃(小学6年生)

……嫌だ。

花湯 木乃(小学6年生)

…ねぇ、お母さん。

花湯の母親

何?

花湯 木乃(小学6年生)

わたし…演劇、やめたい。

花湯の母親

…えっ?

花湯 木乃(小学6年生)

…あのね、お母さん。聞いてくれる?

花湯の母親

…えぇ。

花湯 木乃(小学6年生)

…リリアルは、すごく自由だった。
10年間は幽閉されてしまったけど、その後はすごく自由だった。

花湯 木乃(小学6年生)

…わたしも、考えたの。
わたし自身の本当の幸せを。

花湯の母親

木乃自身の、本当の幸せ…?

花湯 木乃(小学6年生)

…うん。
それは、演劇なんかじゃなかった。わたしには、やりたいことがあったの。

花湯の母親

……それは、何?

花湯 木乃(小学6年生)

…わたし、花を育てたい。
リリアルが見た花畑のような美しさを、わたしも見たいの。

花湯の母親

……。

花湯の母親

…分かったわ。貴方がそう言うなら…。
もう、演劇はやらなくてもいい。貴方のやりたいことをやりなさい。

花湯 木乃(小学6年生)

……ありがとう。

花湯の母親

…じゃあ、お母さんはそのことを演劇の人に言ってくるわ。
いい子にしていてね。

花湯 木乃(小学6年生)

…わかった。

花湯 木乃(小学6年生)

……ありがとう、泡沫。

花湯 木乃(小学6年生)

貴方のおかげで、リリアルも、わたしも救われたよ。

花湯 木乃(小学6年生)

リリアルとわたしが、無知な少女なら…。
泡沫は、泡の人形かな。

花湯 木乃(小学6年生)

それなら…
もし、花湯 木乃のこの物語に名前を付けるなら…、

花湯 木乃(小学6年生)

『泡の少女が知るは華』…かな。

【アンダーダンガンロンパ】全キャラ 短編集

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コメント

5

ユーザー

これは…木乃さんクロかシロになるな…死ぬな…

ユーザー

今気づいたんですが、練習してるセリフと本番で言ってるセリフの違いに関しては、木乃がより世界観に入り込むためってことで……

ユーザー

演劇パートに力入れてたら200タップいっちゃいました…。すみません… まぁ書くの楽しかったしいいかな。

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