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➰ ✿ nrkr
32
りおん
5,264
みかんのかんずめ
246
翌朝。
病棟には、いつも通り朝食の匂いが広がっていた。
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いつもの会話。
いつもの朝。
昨日、白い部屋で見たものなんてなかったみたいに笑っていた。
けれど_____、
こさめの視線は、テーブルの端に置かれている小さな袋へ向いていた。
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白い粉が入った、小さな薬袋。
いつも診察の後に渡されるもの。
「治療のため」と言われている薬。
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いるまは黙って薬袋を見ていた。
昨日見た記録。
『投与』
その言葉が頭から離れない。
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三人とも、薬の名前を知らない。
いつも先生が持ってきて、飲む。
それだけだった。
その時。
コンコン
扉が開く。
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すちはいつものように笑いながら、薬の袋を確認する。
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すちの手が止まった。
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ほんの一瞬。
けれど、いるまは見逃さなかった。
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すちは答えなかった。
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すちは少しだけ困ったように笑う。
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その言葉に、いるまは黙り込んだ。
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そういって薬袋を置く。
三人の前には、いつもと変わらない薬。
いつもと変わらない朝。
でも、すちの手はほんの少し震えていた。
その頃。
別の部屋では、らんのみことが一枚の資料を見つめていた。
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みことは口を閉じる。
らんは資料を握りしめた。
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そこまでいって、言葉を止める。
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みことは不安そうにらんの顔をみる。
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らんは答えなかった。
ただ、机の上に置かれた古い資料へ視線を落とす。
そこには、今の患者たちとは違う番号。
そして、何年も前の日付。
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その声には、隠しきれない苦さがあった。
一方。
患者たちの病室では、こさめが薬を手にしていた。
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いるまは薬袋を見つめる。
そして、小さく息を吐いた。
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三人はいつものように薬を口に入れる。
何も知らない。
なにも疑わない。
それが「治療」だと思っている。
けれどその薬が、本当はなんのために作られたものなのか。
誰も知らなかった。
ただ一人。
廊下の向こうで、らんだけが知っていた。
そしてらんは、誰にも聞こえない声で呟く。
🌸
その言葉は、白い廊下へと静かに消えて行った。
コメント
1件
読ませていただきました。第27話、とても印象的でした。 いるまくんがすちに「なんの薬か」と問い詰める場面、すちの手が一瞬止まるところ、ほんの少し震えるところ…あの細かい描写が、この物語の“不穏さ”をぐっと引き締めてくれていますね。普通の朝の会話と、薬袋の存在。日常の裏に潜む違和感が、読んでいるこちらにもじわじわと伝わってきました。 そして最後のらん先生の「ごめんなさい」。あの言葉が、ただの謝罪じゃなくて、何か大きなものを背負った声に聞こえて、胸がぎゅっとなりました。 この先、この“治療”の真相がどう明かされていくのか、すごく気になります。次のエピソードも楽しみにしていますね🌷