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クロノア

ん……

俺は浅い眠りについていた

クロノア

……ぺいん…と……

あの日以来、ぐっすり眠れていない

プルルル📞

そんな俺の眠りは着信音によって一瞬で妨げられた

クロノア

……こんな時間に……

外はまだ夜中だ

こんな時間に電話なんてことは、普通の電話ではないだろう

クロノア

だれ……

クロノア

……!!

曇った視界を擦りながら着信番号を見ると、そこには病院の番号が乗っていた

急いで電話に出る

クロノア

はい……!

医者

クロノアさんですか…!

クロノア

そうです……

なぜだか焦っているように聞こえた

俺は息を飲んだ

医者

急いできてください!!

医者

ぺいんとさんの様態が!!

クロノア

わかりました。すぐ行きます

電話を切り急いで支度をした

トラゾーたちにも連絡を入れようと思ったが、勝手に手が止まった

俺だけで十分だ

何故だろう。そう思ったんだ

ガラララ

クロノア

ぺいんと!!!!

勢いよく扉を開けた

全力で走ってきたため息が上がっている

その呼吸を整えながらぺいんとを見た

クロノア

ぺいんと……?

ぺいんと

……

俺の目の前にいるぺいんとはぺいんととは思えなかった

先生らに囲まれて心臓マッサージやら電気ショックやらさまざまな処置が素早く施されている

モニターに映るぺいんとの心電図はもう生きている人の状態では無いということは素人でも読み取れた

俺がここに来るまでの時間で、真っ直ぐな直線を描いたようだ

終わったんだ。もう

クロノア

……

医者

………最善を尽くしましたが…もうこれ以上は……

ぺいんと

……

医師たちは処置を止めた

なぁぺいんと

ぺいんとは本当に生きたかったの?

全部忘れた状態で、治るかも分からない病気患って、それでも本当に自分の意思で"生きたい"って思っていたの?

どうなんだよ

クロノア

ぺいんとっ……

クロノア

ねぇ……どうなんだよ……

クロノア

なんとか言えよ……

ぺいんと

……

涙が溢れてくる

やっぱ泣くんだな

実際その場にならなきゃわかんないもんだね

医者が死亡確認を行い始めた

ライトをもって瞼を開かせた

瞳孔は散大していて、対光反射もなかった

いつものぺいんとなら騒ぐだろうな

「まぶっ…!!?はっ!??!目死ぬって!!!」

そんな声が聞こえてくる

他にも死亡確認をしているなか、俺はぺいんとの手を握った

真っ白になり、冷たく冷えきっている

来るのが遅かった

もう少し早くついていれば、まだぺいんとの手は温かかったのだろうか

信じたくなかった

まだ少しでも握り返してくれそうな、そんな懐かしさがある

全ての処置を終え、緊張漂う空気になった

医者

午前3時9分、ご臨終です

そう言って頭を下げた

呆気なかった

なにもかも

こんな終わり方でいいのかよ

ぺいんとならここで平気な顔して起き上がるんじゃないの?

騙された〜って俺を貶してくれよ

俺はぺいんとの死亡時刻を聞くためにここまで走ってきたわけじゃない

いつ起き上がるかなって待ってるんだよ

早くしてよ

みんなに連絡いってみんな来ちゃうじゃん

俺の泣いた顔見られちゃうじゃん

はやく……はやくしてよ……

クロノア

ぺいんとっ……

クロノア

……っ…

クロノア

……ぺいんと……?

見慣れた風景

夢だったのか

クロノア

はぁ…………

眠っていたはずなのにすごく疲労感を感じた

体に力が入っていたみたいだ

プルルル📞

クロノア

ビクッ

着信音がなった

まさかと思い携帯を手に取るのを躊躇した

クロノア

(大丈夫……だよね)

もし正夢だったらどうしよう

もし番号が病院だったらどうしよう

もし…ぺいんとが死んだら……

クロノア

っ……

意を決して番号を見た

そこには「らっだぁ」と表記されていた

クロノア

らっだぁさん……

ひとまず安心した

きっと先日のお見舞いの件だろう

クロノア

……はい

らっだぁ

らっだぁです

らっだぁ

朝早くにすみません

クロノア

大丈夫ですよ

らっだぁ

先日のお見舞いの件で電話させてもらいました

やっぱりそうか

らっだぁ

お時間大丈夫ですか?

ぺいんととらっだぁさんとの進捗について詳しく聞きたい

あれからどうなったのか

どんなことが得られたのか

そしてなにが分かったのか

らっだぁ

……です

クロノア

詳しくお話してくれてありがとうございます

らっだぁ

これぐらいのことしか出来ないですけど…

クロノア

小さな積み重ねが大きなきっかけに繋がります

クロノア

ぺいんとに会ってくれて、ありがとうございます

らっだぁ

こちらこそ

らっだぁ

また少しでも力になれることがあればいつでも連絡してくださいね

らっだぁ

くれぐれもクロノアさんもお身体には気をつけて

クロノア

ありがとうございます

電話を切り1呼吸おいた

さて、準備をして向かおう

ぺいんとのところに

コンコン

ぺいんと

……?

クロノア

こんにちは

ぺいんと

こんにちは……

らっだぁさんに聞いたところ、記憶を蘇らせることは出来たらしい

しかしその状態の持続は困難だった

極論日付が変わる、あるいは睡眠をとれば記憶は消えてしまう

寝るな。と言えば寝ないかもしれないが、時間を止めることは出来ないため改善の余地がない

本当に、ここからはぺいんと本人の問題になる

しかし進捗はあった

記憶の維持は出来なくても、思い出すことは少しずつ可能になってきていることだ

ぺいんと自身のコンディションにもよるが、いきなりふっ、とフラッシュバックして思い出すこともあるらしい

それを長いこと持続出来れば、希望は見える

なら、初対面と言って濁す必要もない

クロノア

初めまして……になるのかな

ぺいんと

……

だからと言ってグイグイいくのも混乱させてしまう

それをどう行動に移すかはする人のさじ加減による

クロノア

……覚えてない…?

ぺいんと

…若干……?

ぺいんと

でも……懐かしい感じがする…

クロノア

うんうん

ぺいんと

……俺より年上?

クロノア

そうだよ

ぺいんと

……猫が…好き……

クロノア

だいすき

ぺいんと

あれ…?なんだろ……分かる……

やっぱり

自分で記憶を辿る術は得たらしい

ぺいんと

わかんないのに…知らないのに……すごく覚えてる……

クロノア

あとは?

なら全て絞り出して思い出させる

せっかく得たものを忘れないように。

クロノア

俺について知ってること、全部言ってみて

ぺいんと

…一緒に旅行行った

クロノア

行ったね

ぺいんと

一緒にゲームした

クロノア

いっぱいしたね

クロノア

…それさ、

クロノア

俺"だけ"としたわけじゃないよね

考えるぺいんとに言葉を告げる

こっちを真っ直ぐに見た

クロノア

……あと2人くらいいたよ

ぺいんと

2人……

ぺいんと

紫と…緑……

クロノア

俺の色は?

ぺいんと

青……

クロノア

自分は?

ぺいんと

……黄色…?

クロノア

……いけない?

忘れている記憶を必死に掘り出している

奥深くに眠った思い出

それを今ぺいんとは掘り起こしているんだね

クロノア

ゆっくりでいいよ

クロノア

間違ってたっていい

クロノア

言ってごらん

クロノア

…言えば…思い出すかもしれないから

はっ、とこっちを見た

ぺいんと

……クロノア…さん……?

クロノア

……!

ぺいんとだ

今俺の目の前にいる人間は、ぺいんとだ

らっだぁさんが会ったぺいんとだ

俺たちと一緒に過ごしたぺいんとだ

俺が会いに来たぺいんとだ

俺が会いたかったぺいんとだ

安堵の表情でぺいんとの目を見て答えた

クロノア

なぁに、ぺいんと

ぺいんと

クロノアさん……クロノアさん…!!

名前を呼びながら俺の手に触れる

俺の存在を確認するかのように

クロノア

いるよ、俺だよ

クロノア

日常組の、クロノアだよ

クロノア

ぺいんとと一緒に旅行して、ゲームして、いろんなことしたね

クロノア

全部覚えてるよ

ぺいんと

俺も……!!!

ぺいんと

俺も覚えてるよ…!!!!

ぺいんと

クロノアさん…!!!会いたかったクロノアさん!!

クロノア

俺も

懐かしい

この声

この表情

俺もずっと逢いたかった

俺の知らないぺいんとしか最近はあってなかった

でもやっと、今日やっとぺいんとに逢えた

クロノア

ずっと、ずっとぺいんとのそばにいたよ

ぺいんと

うん……!

ぺいんと

毎日かかさず会いに来てくれてた…!

ぺいんと

トラゾーも…しにがみくんも……!

ぺいんと

この間はらっだぁも来た……!

すごい

全て覚えている

やっぱりぺいんとだからか

ぺいんと

やっと…やっと逢えた…

ぺいんと

クロノアさぁん、、😭

クロノア

おおおどうしたどうした、w

クロノア

泣かないでよ〜俺も泣きたくなっちゃう〜😭

俺の服に顔を埋め泣いていた

そんなぺいんとの頭を撫でながら俺も泣いた

無邪気な泣き声

素直な言葉

ずっと聞きたかったよ。ぺいんと

ぺいんと

俺……最低だなってつくづく思うんです

やっと落ち着いたと思ったらそんなことを放った

クロノア

どうして?

ぺいんと

いろんな人に支えられて、守られて、心配してくれてるのに

ぺいんと

すぐ忘れちゃって

ぺいんと

なんか…俺じゃない誰かが俺を乗っ取るような

ぺいんと

自分のことなのに自分で攻略出来なくて

ぺいんと

制御出来なくて

ぺいんと

いろんなことしてくれてるのに結局また後戻りだし

ぺいんと

……たまに思うのが

涙目になりながら続けた

ぺいんと

…このまま生きてていいのかなって

ぺいんと

何もかも忘れてしまうなら、生きてる理由もないのかなって

ぺいんと

俺にとってはみんなが生き甲斐で、頑張れる理由だった

ぺいんと

でもそれを俺自身で踏みにじっているんだ

ぺいんと

そんな自分が辛くて、嫌いで

ぺいんと

……いっその事…消えてしまえば楽なのかな…とか

ぺいんと

そうすれば……みんなの負担も減るかな…とか…

今朝見た夢のようだ

夢の中で俺が思った、「ぺいんとは本当に生きたかったのか」という疑問

その真実が今わかった気がした

あの夢はきっとぺいんとの心情を露わにしたものだったのだろう

ぺいんと

…でも…もし死んだら俺は地獄行きだから…

ぺいんと

……こんな俺をいっぱい支えてくれたみんなは、きっと上にいくんだろうな

ぺいんと

そしたら死んだあと、クロノアさんたちと会えないからそれもそれで嫌だなぁ…

ぺいんと

……とか、変なこと考えちゃったりして…なんかもう…わかんなくなっちゃって…

ぺいんと

自分が何したいのか…なにが1番の望みなのか…

クロノア

もうやめて

遮ってしまった

だって、あまりにも辛すぎる

これがぺいんとの本心とはいえ、心がくるしい

クロノア

話してくれてありがとう

クロノア

ぺいんとが話してくれたことはなるべく肯定したい

クロノア

でもごめん。少し訂正させて

ぺいんとの目から滴った涙を見送ってから視線を目に戻し、真っ直ぐと見て続ける

クロノア

俺たち、今のぺいんとがいて、負担を感じたことなんて一切ないよ

1呼吸おいてゆっくりと放つ

クロノア

……ぺいんとは、生きていいんだよ

ぺいんと

っ………

泣いている

ぺいんと

でもっ…俺なんかがっ……生きてても…

ぺいんと

生きる理由を…見い出せない……

クロノア

俺がぺいんとに、「生きてて欲しい」って思ってる

クロノア

…ぺいんとが生きる理由は、それだけじゃだめかな

ぺいんと

っ……!

涙が溢れている

それでも構わず続けた

クロノア

ぺいんとにとって俺たちはぺいんとの生き甲斐なんだよね?

クロノア

それは俺たちもそうだよ

クロノア

俺たちにとって、ぺいんとは俺たちの生き甲斐なんだ

クロノア

ぺいんとが消えたら、俺たちも消えてなくなっちゃうよ

優しい声色で、ぺいんとを刺激させないように意識して話す

クロノア

ぺいんとは…地獄にいくと思ってる?

ぺいんと

……コク

クロノア

なら俺たちもいくよ

ぺいんと

…え……?

クロノア

ぺいんとがいない天国より、ぺいんとのいる地獄がいい

クロノア

…意味わかる?

この言葉に全てを詰めた

伝わってくれるだろうか

クロノア

それに、もう10年以上一緒に過ごしてんだから同類だよ、笑

クロノア

神様だって俺たちを地獄に分類するさ

そして、本当に伝えたかったこと

クロノア

…どこへいこうと、ぺいんとは独りじゃないからね

クロノア

どれだけ忘れても、何度記憶を失っても、

クロノア

形に残らないものはいくらでも形成することが出来る

クロノア

やり直すことが出来る

クロノア

形が全てじゃない

クロノア

大事なのは過程

クロノア

どんな形でも、どれだけ歪でもいい

クロノア

それを企てるのが、足りない部分を補うのが俺たちだから

クロノア

……だから、ぺいんとは今まで通りでいいんだよ

クロノア

ゆっくりでいいし、何回忘れてもいい

クロノア

俺たちはぺいんとから離れていかないから

クロノア

思い出すまでそばにいるから

クロノア

もちろん、思い出した後もね

クロノア

………だから、

出そうになる涙を抑えながら、本心を伝えようと試みた

ずっと言いたかったこと

今朝見た夢から思っていたこと

俺の気持ちを。

クロノア

…だから……

クロノア

……ぺいんとは…死んだらだめだよ…?

震えた声でぺいんとに訴えた

リーダーたるものが泣きながらものを言うなんてとんだ羞恥だ

ぼやけた視界のままぺいんとをまっすぐと見つめた

見えなくとも理解出来た

ぺいんと

…死なない……

声が俺と同じく震えていたからだ

鼻をすする音と漏れる吐息が病気内に静かに響く

ぺいんと

絶対死なない……っ……!

意志と希望に溢れた声が俺の耳に通る

あぁ、これなら大丈夫だ

安心できる

クロノア

ありがとう…☺️

暫くの間一緒に泣いた

その涙には沢山の意味がこもっていたであろう

だが今は共に同じ理由で涙している

これほどまで嬉しいことがあっただろうか

暖かい風が俺たちの頬を優しく撫でた

もう春は訪れる

次もまた、こうしてぺいんとと同じ気持ちで、同じ理由で時を分かち合えますように。

よりもと

いかがでしたでしょうか🥲

よりもと

だんだん流れは右肩上がりになってきている予感がしますね👍🏻

よりもと

リーダーのクロノアさんの言葉の並びに気を使いながら今回は作成しました🖐🏻

よりもと

そして今回のポイントは、

よりもと

しにがみさんやらっだぁさんとで思い出した時はぺいんとさんが2人を慰めましたけど、リーダーであるクロノアさんには泣きながら本音を話せていて、ぺいんとさんが励まされている側ってところですね🎶

よりもと

今後の病態回復に期待です👍🏻✨

よりもと

今日のTikTokは!

よりもと

日常組が12周年ということで!!!

よりもと

記念動画となってます!!!

よりもと

ぜひぜひ見てみてください🥲✨

よりもと

日常組12周年おめでとうございます✨✨✨

よりもと

ではまた次の投稿で!!

この作品はいかがでしたか?

802

コメント

9

ユーザー

回復傾向...! 頑張ってるんだなぁ☺️ 久々のお話、とてもにこにこしながら見させて頂きました😌 ほんと最高だーーー!!!

ユーザー

久々の物語だー! 今回も神作!次回作も楽しみにしてます😊

ユーザー

神です✨ よりもとさんの作品はどれも神作で、いつも楽しませていただいてます!! ありがとうございます!!

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