クロノア
俺は浅い眠りについていた
クロノア
あの日以来、ぐっすり眠れていない
プルルル📞
そんな俺の眠りは着信音によって一瞬で妨げられた
クロノア
外はまだ夜中だ
こんな時間に電話なんてことは、普通の電話ではないだろう
クロノア
クロノア
曇った視界を擦りながら着信番号を見ると、そこには病院の番号が乗っていた
急いで電話に出る
クロノア
医者
クロノア
なぜだか焦っているように聞こえた
俺は息を飲んだ
医者
医者
クロノア
電話を切り急いで支度をした
トラゾーたちにも連絡を入れようと思ったが、勝手に手が止まった
俺だけで十分だ
何故だろう。そう思ったんだ
ガラララ
クロノア
勢いよく扉を開けた
全力で走ってきたため息が上がっている
その呼吸を整えながらぺいんとを見た
クロノア
ぺいんと
俺の目の前にいるぺいんとはぺいんととは思えなかった
先生らに囲まれて心臓マッサージやら電気ショックやらさまざまな処置が素早く施されている
モニターに映るぺいんとの心電図はもう生きている人の状態では無いということは素人でも読み取れた
俺がここに来るまでの時間で、真っ直ぐな直線を描いたようだ
終わったんだ。もう
クロノア
医者
ぺいんと
医師たちは処置を止めた
なぁぺいんと
ぺいんとは本当に生きたかったの?
全部忘れた状態で、治るかも分からない病気患って、それでも本当に自分の意思で"生きたい"って思っていたの?
どうなんだよ
クロノア
クロノア
クロノア
ぺいんと
涙が溢れてくる
やっぱ泣くんだな
実際その場にならなきゃわかんないもんだね
医者が死亡確認を行い始めた
ライトをもって瞼を開かせた
瞳孔は散大していて、対光反射もなかった
いつものぺいんとなら騒ぐだろうな
「まぶっ…!!?はっ!??!目死ぬって!!!」
そんな声が聞こえてくる
他にも死亡確認をしているなか、俺はぺいんとの手を握った
真っ白になり、冷たく冷えきっている
来るのが遅かった
もう少し早くついていれば、まだぺいんとの手は温かかったのだろうか
信じたくなかった
まだ少しでも握り返してくれそうな、そんな懐かしさがある
全ての処置を終え、緊張漂う空気になった
医者
そう言って頭を下げた
呆気なかった
なにもかも
こんな終わり方でいいのかよ
ぺいんとならここで平気な顔して起き上がるんじゃないの?
騙された〜って俺を貶してくれよ
俺はぺいんとの死亡時刻を聞くためにここまで走ってきたわけじゃない
いつ起き上がるかなって待ってるんだよ
早くしてよ
みんなに連絡いってみんな来ちゃうじゃん
俺の泣いた顔見られちゃうじゃん
はやく……はやくしてよ……
クロノア
クロノア
クロノア
見慣れた風景
夢だったのか
クロノア
眠っていたはずなのにすごく疲労感を感じた
体に力が入っていたみたいだ
プルルル📞
クロノア
着信音がなった
まさかと思い携帯を手に取るのを躊躇した
クロノア
もし正夢だったらどうしよう
もし番号が病院だったらどうしよう
もし…ぺいんとが死んだら……
クロノア
意を決して番号を見た
そこには「らっだぁ」と表記されていた
クロノア
ひとまず安心した
きっと先日のお見舞いの件だろう
クロノア
らっだぁ
らっだぁ
クロノア
らっだぁ
やっぱりそうか
らっだぁ
ぺいんととらっだぁさんとの進捗について詳しく聞きたい
あれからどうなったのか
どんなことが得られたのか
そしてなにが分かったのか
らっだぁ
クロノア
らっだぁ
クロノア
クロノア
らっだぁ
らっだぁ
らっだぁ
クロノア
電話を切り1呼吸おいた
さて、準備をして向かおう
ぺいんとのところに
コンコン
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
らっだぁさんに聞いたところ、記憶を蘇らせることは出来たらしい
しかしその状態の持続は困難だった
極論日付が変わる、あるいは睡眠をとれば記憶は消えてしまう
寝るな。と言えば寝ないかもしれないが、時間を止めることは出来ないため改善の余地がない
本当に、ここからはぺいんと本人の問題になる
しかし進捗はあった
記憶の維持は出来なくても、思い出すことは少しずつ可能になってきていることだ
ぺいんと自身のコンディションにもよるが、いきなりふっ、とフラッシュバックして思い出すこともあるらしい
それを長いこと持続出来れば、希望は見える
なら、初対面と言って濁す必要もない
クロノア
ぺいんと
だからと言ってグイグイいくのも混乱させてしまう
それをどう行動に移すかはする人のさじ加減による
クロノア
ぺいんと
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
やっぱり
自分で記憶を辿る術は得たらしい
ぺいんと
クロノア
なら全て絞り出して思い出させる
せっかく得たものを忘れないように。
クロノア
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
クロノア
クロノア
クロノア
考えるぺいんとに言葉を告げる
こっちを真っ直ぐに見た
クロノア
ぺいんと
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
クロノア
忘れている記憶を必死に掘り出している
奥深くに眠った思い出
それを今ぺいんとは掘り起こしているんだね
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
はっ、とこっちを見た
ぺいんと
クロノア
ぺいんとだ
今俺の目の前にいる人間は、ぺいんとだ
らっだぁさんが会ったぺいんとだ
俺たちと一緒に過ごしたぺいんとだ
俺が会いに来たぺいんとだ
俺が会いたかったぺいんとだ
安堵の表情でぺいんとの目を見て答えた
クロノア
ぺいんと
名前を呼びながら俺の手に触れる
俺の存在を確認するかのように
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
クロノア
懐かしい
この声
この表情
俺もずっと逢いたかった
俺の知らないぺいんとしか最近はあってなかった
でもやっと、今日やっとぺいんとに逢えた
クロノア
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
すごい
全て覚えている
やっぱりぺいんとだからか
ぺいんと
ぺいんと
クロノア
クロノア
俺の服に顔を埋め泣いていた
そんなぺいんとの頭を撫でながら俺も泣いた
無邪気な泣き声
素直な言葉
ずっと聞きたかったよ。ぺいんと
ぺいんと
やっと落ち着いたと思ったらそんなことを放った
クロノア
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
涙目になりながら続けた
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
今朝見た夢のようだ
夢の中で俺が思った、「ぺいんとは本当に生きたかったのか」という疑問
その真実が今わかった気がした
あの夢はきっとぺいんとの心情を露わにしたものだったのだろう
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
クロノア
遮ってしまった
だって、あまりにも辛すぎる
これがぺいんとの本心とはいえ、心がくるしい
クロノア
クロノア
クロノア
ぺいんとの目から滴った涙を見送ってから視線を目に戻し、真っ直ぐと見て続ける
クロノア
1呼吸おいてゆっくりと放つ
クロノア
ぺいんと
泣いている
ぺいんと
ぺいんと
クロノア
クロノア
ぺいんと
涙が溢れている
それでも構わず続けた
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
優しい声色で、ぺいんとを刺激させないように意識して話す
クロノア
ぺいんと
クロノア
ぺいんと
クロノア
クロノア
この言葉に全てを詰めた
伝わってくれるだろうか
クロノア
クロノア
そして、本当に伝えたかったこと
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
出そうになる涙を抑えながら、本心を伝えようと試みた
ずっと言いたかったこと
今朝見た夢から思っていたこと
俺の気持ちを。
クロノア
クロノア
震えた声でぺいんとに訴えた
リーダーたるものが泣きながらものを言うなんてとんだ羞恥だ
ぼやけた視界のままぺいんとをまっすぐと見つめた
見えなくとも理解出来た
ぺいんと
声が俺と同じく震えていたからだ
鼻をすする音と漏れる吐息が病気内に静かに響く
ぺいんと
意志と希望に溢れた声が俺の耳に通る
あぁ、これなら大丈夫だ
安心できる
クロノア
暫くの間一緒に泣いた
その涙には沢山の意味がこもっていたであろう
だが今は共に同じ理由で涙している
これほどまで嬉しいことがあっただろうか
暖かい風が俺たちの頬を優しく撫でた
もう春は訪れる
次もまた、こうしてぺいんとと同じ気持ちで、同じ理由で時を分かち合えますように。
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと
よりもと