放課後、帰り支度をしていると、緑が鞄を背負いながらこちらを見てきた。
緑 。
橙 。
言いかけて、一瞬だけ迷った。
けれど、"好き"だと自覚した今の私は、その誘いを断る理由を見つけられなかった。
帰り道、今日も他愛のない話ばかりだった。
テストが近いこと。
昼のメニューが微妙だったこと。
隣のクラスの担任がやたら厳しいこと。
だけど、どれもが私にとっては宝物のように感じられた。
緑 。
唐突に緑が言う。
緑 。
緑 。
橙 。
思わず口をとがらせると、彼は笑った。
緑 。
緑 。
橙 。
たったそれだけのやり取りなのに、どうしてこんなに心があったかくなるんだろう。
"好き"って、こんなに日常を優しく塗り替えていくものだったんだ。
前までなら、この気持ちを否定するために言葉を並べていた。
"これは勘違いだ"とか、"ただの好奇心だ"とか。
でも今は違う。
私の中にあるこの感情に、ちゃんと名前をつけてあげたいと思った。
「好き」
たった二文字の言葉が、こんなにも胸を締め付けるなんて。
こんなにも、幸せと不安を同時に運んでくるなんて。
彼に伝える勇気は、まだない。
だけど、自分の中では、もう迷わない。
私は緑が__好きだ。
コメント
1件
そうです!!貴方は緑彡が好きなのです!! 自覚したことを褒め称えましょう!!