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クラス替えなんて、正直どうでもええと思ってた。
どうせ知ってる顔ばっかりやし、 メンツがちょこっと変わる、そんくらいの違いや。
廊下に貼り出された名簿を見るまでは そう思っていた。
宮侑
自分の名前を見つけて、 そのまま横に視線をずらした瞬間。
宮侑
一瞬、思考が止まった。
同じ“宮”で始まる苗字。 しかも、隣の席。
宮内璃華。
今まで同じクラスになったことはなかったはずや。
たしか、派手なタイプでも埋もれるわけでもない。
けど、目を奪われるような存在で 校内では密かに有名な子。
教室に入り席に着いてカバンを掛ける。 本人はまだ居なかった。
少し安心して席に着いた。 でも、少しして彼女は教室に入ってきた。
綺麗な黒髪のストレートロング。 前髪は軽く目にかかってて、 何してるわけでもないのに、空気が柔らかい。
宮侑
声、かけるべきか? いや、でも別に用事もないし。
そう思って前を向いた瞬間。
宮内璃華
呼ばれて、肩が一瞬びくっと跳ねる。
宮内璃華
思ってた何倍も可愛い声。
宮侑
少し噛んでしもた。
宮内璃華
そう言って、ふわっと笑う。
宮侑
自分でも驚いた。 丁寧すぎんか、俺。
宮内璃華
宮侑
宮内璃華
宮内璃華
…宮くん。
下の名前でもないのに、 なんでこんな胸が変なんやろ。
チャイムが鳴って、ホームルームが始まった。
それでも隣が気になって仕方ない。
ノートを出す音。 シャーペンを持ち替える仕草。 小さく息を吸う、その間。
全部、無意識に見てしまう。
プリントが回ってきたとき、 1枚、床に落としてしもた。
宮内璃華
小さく声を出したのは宮内さん。
俺より先に、彼女がしゃがんだ。
…近い近い近い。
触れてすらないのに、 意識が一気に持ってかれる。
宮内璃華
宮侑
宮内さんは微笑んだ。
それだけ、それだけやのに。 胸の奥がきゅっとした。
意味わからん。
昼休み。 サムと角名と並んでパンをかじりながら、 気づけば教室を見渡してる。
宮侑
宮内さんは窓際で他の女子と話してた。
俺には見せへん、 打ち解けてる奴にしか見せへんような笑顔。
宮侑
無意識に俺はそんなことを考えていた。
宮治
宮侑
宮治
宮治
宮侑
角名倫太郎
角名倫太郎
宮侑
サムがニヤっと笑った。
宮治
宮侑
宮侑
宮治
絶対信じてへん顔しとる。
放課後、体育館に行く廊下の途中で 宮内さんと偶然すれ違った。
宮内璃華
呼ばれて、反射的に振り返る。
宮内璃華
宮侑
宮内璃華
宮侑
宮内璃華
それだけ言って、 宮内さんはそのまま行ってしもた。
宮侑
誰にでも言うことくらい分かっとる。
分かっとるのに。
自分だけなんやないかって期待してまう。
コートに立っても、ボール触っても、 頭から離れへん。
宮内璃華。
宮治
宮侑
言い返したけど本当は分かってる。
今日一日で 俺は何回、あいつのこと考えた?
特別なことされたわけでも、 距離詰められたわけでもない。
それなのに……。
夜、部屋で1人 小さく舌打ちをする。
宮侑
恋やなんて、 そんな簡単に認めたくない。
けど。
気づいたら目で追ってる時点で、 もう手遅れな気もする。
宮侑
この時はまだ、知らんかった。
“隣の席の宮内さん”が、 こんなにも厄介な存在になるなんて。