インターハイ4日目の夜。
稲荷崎は順調に勝ち進めて、
それに伴って私達吹奏楽部の仕事も 大詰めだ。
宿泊しているホテルの お風呂に向かうと、
髪を濡らした長身が 向かい側から歩いてきた。
堺天音
治くんお風呂上がり?お疲れ様
宮治
せやで
宮治
天音もお疲れさん
堺天音
( あかん、治くんの顔見られへん )
治くんと2人になると 変に緊張してしまい、
顔もみられない。
1日目の時は 普通に話せたのに。
まああの時は 侑くんもおったからな。
ぐるぐると そんな事を考えていると、
治くんが口を開いた。
宮治
返事、決まった?
堺天音
!
宮治
自分で待つって言うたけど、俺かて緊張してないわけやないで
花火大会から2週間くらいが 経とうとしている。
緊張と不安が押し寄せてきて 背中に汗が滲んだ。
堺天音
…ごめん、治くんの気持ちには答えられん
堺天音
私は…
宮治
“ツムが好きやから”、やろ?
堺天音
!!
驚いて顔を上げる。
治くんは眉を下げて 寂しそうに微笑んでいた。
宮治
ちゃう?
堺天音
ちゃう…くない
宮治
薄々わかってはいたんよ
宮治
けど天音のこと諦めたくなかってん
宮治
少しでも希望があるなら
宮治
( たとえツムから奪う形になっても… )
宮治
伝えられてよかったわ
宮治
困らせてごめんな
堺天音
あ、謝らんで!
堺天音
たしかに驚いたけど、嫌だったわけやないねん
堺天音
むしろこんな私のこと好きって言ってくれて嬉しかったんや
堺天音
伝えてくれてありがとう
宮治
!
私が慌てて言うと、
治くんは驚いたように 目を丸くした。
宮治
最後までズルいな、天音
堺天音
?
宮治
ツムに告るんやろ?頑張れや
そう言うと、 治くんの顔が耳元に寄る。
ふわりと シャンプーの香りがした。
宮治
ツムのこと嫌なったらいつでも俺が貰ったる
堺天音
っ〜!
宮治
ほなな
治くんは そんな爆弾発言を残し、
歩き去ってしまった。
治くんを振ったからには、
ちゃんと侑くんに 気持ちを伝えなきゃ。
大会が終わったら。