ここはある山の一本道。そこを、私、薫はただただ歩き続ける。
この先にきっとあるはずなんだ。人間を忌嫌い、自分たち自ら閉じこもった、妖怪の封印されし場所。
己妖封界が。
現在は、大正二年。
私は、産まれたときから普通の人間ではなかった。
真っ白な髪、真っ白な体… 私の体全ては雪のように白く、透けていた。
そんな私を誰もが嫌った。 「もうこんな世界にはいたくない」 そう、思い始めたときだった。
お父様が亡くなった。 お父様の遺品の整理をしていると、実に興味深い書物が出てきた。
その本には、「己妖封界・妖怪の住む世界。人間を忌嫌い、また、嫌ってきた者の世界。ここには、これまでの全ての歴史がある。」
人間に嫌われ、また人間も嫌う者の世界。もし、そんな者たちが住む世界があるのなら。
そして、私はその己妖封界の入り口が開く、新月の夜に旅に出たのだった。