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【週末短編】思いやり。−後編−

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【週末短編】思いやり。−後編−

1 - 【週末短編】思いやり。−後編−

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2022年02月20日

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レトルト

…キヨくん?

キヨ。

レトさん…

レトルト

ごめん、お待たせ

レトルト

おかゆできたけど…起きれる?

熱でぼーっとするのか 目線がフラフラしている。

キヨ。

ん、大丈夫

キヨ。

いい匂い…

レトルト

卵入れたよ

レトルト

熱いから気をつけてね

布団の上にお椀を置く。

キヨくんは弱々しい手でスプーンで掬って 口に運んでいる。

キヨ。

お、うまい

キヨ。

レトさん料理できたんだね

レトルト

料理ってほどのものじゃないやろ

レトルト

減らない口だな

キヨ。

ふふっ…

キヨ。

でも、ありがと

いつもと違ってふんわりと笑うその表情が

見ていて新鮮な気持ちにさせてくれる。

レトルト

食べたら薬飲んで寝ること

レトルト

わかった?

水や薬の準備をしながら ゆっくり食べているキヨくんに言う。

キヨ。

なんか…

レトルト

ん?

キヨ。

レトさん、今日は年上みたい…

レトルト

…元から年上なんだけど

キヨ。

だな笑

良かった。

ご飯を食べたら少し元気が出たみたいだ。

…年上みたいって言ったのは許さない。

レトルト

アホなこと言ってないで

レトルト

薬飲んだ?

キヨ。

飲んだ

レトルト

布団被ってちゃんと寝な?

キヨくんの首元まで布団をかけ

食べ終わった食器を片付けようと キッチンに向かう。

キヨ。

まって…

その時、袖をグッと掴まれた。

レトルト

っと…

レトルト

どうした?

キヨ。

レトさん…もう帰っちゃう…?

少し甘えたような声で 俺の名前を呼ぶキヨくん。

俺はふっと笑ってその頭を軽く撫でる。

レトルト

こんな状態の君を置いて帰らないよ

レトルト

治るまで居るから、大丈夫

キヨ。

そっか…

キヨ。

ありがと…レト…さん…

安心した表情で、眠りにつく。

…こうしてみるとやっぱりかわいいな。

レトルト

俺もちょっとお腹すいたな…

キヨくんが寝ている間、 俺は色々片付けたり洗濯したり

料理をしたりと、家事をやっていた。

起きてきた時のために 俺は二人分のご飯を作る。

キヨくんが寝てから3時間は経っていた。

時間も遅く、夜中になってしまった。

レトルト

今日は泊まりかな…

何も持ってきてはいないけれど

キヨくんに借りよう。

キヨ。

レトさん

レトルト

あ、起きた?

レトルト

熱は?

俺よりちょっと背の高いキヨくんの おでこに手を当ててみる。

レトルト

ちょっと下がったかな

キヨ。

うん

キヨ。

レトさんのおかげ

レトルト

俺もお腹すいたから

レトルト

煮込みうどん作ったんだけど食べれそう?

キヨ。

食べれるよ

キヨ。

寝たらちょっとお腹すいた

レトルト

良かった…

レトルト

それ食べたらお風呂入って寝よっか

キヨ。

レトさん…

キヨ。

まだ帰らないよね…?

俺は部屋の時計を指さした。

レトルト

こんな時間やもん

レトルト

もう泊まっていかないと電車ないよ笑

レトルト

部屋着は勝手に借りるからね

キヨ。

レトさん…

キヨ。

マジでありがと

普段なら絶対に言わないような言葉に

くすぐったい気持ちになる。

うどんも食べて風呂にも入った。

キヨくんはまた布団に潜っている。

俺はベッドの横に布団を敷いて そこに寝転んだ。

キヨ。

今度風邪引いたら

キヨ。

またレトさんにお願いするね

レトルト

そもそも風邪引くなって

レトルト

…心配になる

少しムスッとした俺の顔を見たのか 満更でもなさそうにしていた。

キヨ。

心配かぁ…へぇー…そっかぁ…

レトルト

なんだよ…

キヨ。

レトさんもそういうこと言うんだなーと思って

キヨ。

新鮮でいいね

キヨ。

風邪も悪くないかも

馬鹿だな…こいつ…

別に誰に対しても言うわけじゃないのに…

レトルト

あほ

レトルト

早く寝ろ

キヨ。

はいはい

キヨ。

おやすみ、レトさん

もう風邪なんて完治しているような いつもの調子で俺をからかう。

明日の朝には治ってるといいな…

キヨ。

レトさん…

キヨ。

レトさん…レトさん…

頭の上から優しい声が降ってくる。

レトルト

あ…

朝か…

レトルト

キヨくん…

ちょっと笑って俺の顔を見る。

レトルト

キヨくん!!

レトルト

風邪は!?

レトルト

熱はない?

俺は焦ってキヨくんの肩を掴む。

キヨ。

ちょっ…

キヨ。

激しいな…

キヨ。

落ち着いてレトさん

掴まれた肩の腕を 今度はキヨくんが掴む。

キヨ。

熱もないし、頭痛いのもないし

キヨ。

ちゃんと治ったよ

その言葉を聞いて俺はほっと胸をなでおろす。

レトルト

よかったぁ…

キヨ。

これも、レトさんのおかげだよ

キヨ。

助かった

キヨ。

ありがと、心配してくれて

レトルト

べっ…別に心配ちゃうし…

キヨ。

そんなこと言って…

キヨ。

俺覚えてるんだよ

キヨ。

レトさんが必死で看病してくれたのも

キヨ。

苦しんでる俺の手握ってくれたのも

キヨ。

熱でぼーっとしてたけど

そうだよ。

本当はものすごく心配した。

楽しみだった実況もできなくて

…会いたかったのに会えなくて。

レトルト

もう風邪引くな…ばか…

俺はキヨくんの手を握る。

キヨ。

ほんと優しいな

キヨ。

ね、俺もう元気だから一緒に寝よ?

キヨ。

まだ眠くて

レトルト

じゃあ…布団入れて

キヨ。

喜んで

元気になったキヨくんは いつもの調子に戻っていて

俺のことをからかう。

もぞもぞと布団に入り、 キヨくんの体温を感じながら

俺は眠りについた。

−後日談−

レトルト

うぅ…きよくーん…

レトルト

頭いたい…

キヨ。

具合悪いのはわかるけど

キヨ。

我慢して

キヨ。

冷えピタ貼ってあげるから

次の日、今度は俺が風邪を引いた。

キヨくんのが移ったらしい。

レトルト

きよくん…きよくん…

キヨ。

俺ここにいるから

キヨ。

手、握ろうか?

レトルト

ん…

体調を崩しているときは 寂しく感じるとはよく言ったもので

人肌恋しくもなるものなんだな。

レトルト

きよくん、手冷たい…

レトルト

気持ちいい…

キヨ。

レトさんは熱いね

キヨくんに看病されて とても気分がいい。

はぁ…早く治るといいな…

早く治して皆と実況撮らなきゃ。

俺は朦朧とする意識の中、 その冷たい手を額に当てて

そっと目を閉じた。

THE END.

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