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ハルカミライ

3 - ハルカミライ 第3話 -困らせないで-

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2021年06月25日

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実家からの帰り道、私は将太のことを考えていた。

深いため息がでる。

確かに私は過去に戻りたいと思った。

将太と別れる前に、戻りたいと願った。

だけど、あの後将太とよく話をしていたら、やり直せていたのではないだろうか。

そんな思いが頭をよぎる。

けれど今は、もう一度将太に会って話をすることさえできないのだ。

将太がどこにいるのかさえ分からない。

もし分かったとしても、今の私には付き合っている人がいる。

私の気持ちなんて、どこにも行き場所がないのだ。

ぽつり、と冷たい雫が腕へ落ちた。

私は空を見上げる。

重たく暗い雲が空を覆っていた。

ハル

雨降ってきたらどうしよう

ハル

傘持ってないのに

私は駆け足で家路を急ぐも、慣れない土地のせいでなかなかたどり着けない。

その間に雨は勢いを増していく。

ハル

近くまで来てるはずなんだけど…

公園を見つけた私は、しばらくそこで雨をしのぐことにした。

屋根付きのベンチへ、私は腰を下ろす。

すると着信があった。

柳太郎だ。

しばらく悩んだ後に、私は電話をとる。

ハル

…はい

電話越しに、柔らかく温かい柳太郎の声が響く。

柳太郎

今仕事終わったんだけど、ハルは家に居る?

柳太郎

明日休みだからどこかでご飯食べないかなって思ったんだけど

柳太郎

どうかな

ハル

えっと…

ハル

私今、傘がなくて公園にいるんです、けど

戸惑いながら答える私に、柳太郎は優しく笑う。

柳太郎

どうして敬語なの?

柳太郎

傘がないなら迎えに行くよ

柳太郎

今から会社出るから、タクシーで拾うね

私は地図に出ている住所を伝え、電話を切る。

これからこの人と暮らさなければいけないなんて。

私が過去から来ていることは隠していたほうがいいのだろうか?

たとえ伝えたとして、信じてくれるだろうか?

ハル

こんなこと信じられる人なんて、普通いないよね

また、深いため息が出た。

きっと兄がすぐに過去へ戻してくれる。

そうしたらまた、将太にも会えるから。

だからしばらくの間だけ、私は未来のハルとして生きよう。

きっとそれが、誰にも迷惑をかけない、一番の方法だから。

そう、自分に言い聞かせる。

しばらく待っていると、目の前の道路に1台のタクシーが止まった。

柳太郎

ハル!お待たせ。濡れてない?

雨の中、傘を差した柳太郎がこちらへと駆け寄ってくる。

ハル

うん、濡れてないよ

ハル

迎えに来てくれてありがとう

落ち着いて話せただろうか。

口調は変ではないだろうか、そんな不安がよぎる。

柳太郎の顔色を見るが、こちらを疑っている様子はなかった。

柳太郎

よかった

柳太郎

タクシー待ってもらってるから、このままご飯行こうか

柳太郎

何か食べたいものある?

そういえば私、朝から何も食べていない。

そう気が付くと、途端にお腹がすいてくる。

ハル

お肉!なにかがっつりしたものが食べたい!

柳太郎

そう言うと思った

柳太郎

それじゃあいつものところ行こうか

柳太郎は笑顔で、私に手を差し伸べる。

一瞬戸惑うも、私はその手を取り立ち上がる。

当然のように傘はひとつのようだ。 こちらへ傘を傾けているせいで、柳太郎の肩は濡れていた。

ハル

あの、肩濡れてるよ?

私がそう言うと、柳太郎は驚く。

柳太郎

えっ、ごめんね。濡れちゃった?

柳太郎

もっとこっち来れる?

そう言って柳太郎は私の腰に腕を回し、グイっと引き寄せる。

ハル

あ、違うの

ハル

私は濡れてないんだけど…その

ハル

リュウ、が濡れちゃってるから

リュウ、と口にした途端顔が赤らむのが分かった。

兄は別れ際、未来の私がどんな風に柳太郎に接していたか、分かる限りのことを教えてくれた。

柳太郎の前ではいつも笑顔だったこと。

柳太郎の意見を尊重して、人前では柳太郎を立てていたこと。

それから、柳太郎が私をハルと呼ぶように、私も柳太郎を愛称で呼んでいたこと。

だから自然に、そう呼ばなくてはいけないのに。

どうしてもぎこちなくなってしまう。

柳太郎

なんだ、俺はいいんだよ

柳太郎

ハルが濡れてなくてよかった

柳太郎は笑い、私を抱き寄せる腕に力が入った。

そのままタクシーへと乗り込んだ私たちは、行きつけだというお店へと向かった。

店内はおしゃれなアンティーク調のテーブルがいくつかあり、数組の客がお酒を手に歓談していた。

ハル

ここって、お酒飲むところ…?

私は呟く。

柳太郎

ん?ハルもここのワイン好きでしょ?

はは、と私は笑って見せる。

こんなお店、入ってもいいのだろうか?

柳太郎がそんな私の戸惑いに気が付くはずもなく、迷いなく店内へと進んでいく。

席に着いた私に、柳太郎が問いかける。

柳太郎

ハルは何にする?

ハル

私は…

お酒を頼むべきなのだろうか?

当然のようにお酒を進めてくるということは、私は普段から飲んでいるということなのだろう。

ハル

ホットワイン?にしようかな

アルコールは過熱するとなくなるという話を聞いたことがある。

確か、料理用のみりんや酒にもアルコールが含まれていて、加熱することによってアルコール分を飛ばすことができるのだと。

柳太郎

え?

柳太郎が戸惑ったような表情を見せる。

ハル

な、なに?変かな?

嫌な汗が額を伝う。

柳太郎

変じゃないけど…

柳太郎

ていうかもう7月なのにホットワインがあるんだね

ハル

そ、そうなの!

ハル

私も珍しいなと思って…!

柳太郎

ほんと珍しいもの好きだよね

柳太郎

俺はビールにしよう

ハル

え!?ビール?

柳太郎

えっ何?

ハル

ビールっておじさんの飲み物だと思ってた…

こんなに若くてかっこいい人が飲むなんて。

お父さんがテレビ見ながらゲラゲラ笑って飲むイメージしか浮かばないよ。

私は心の中で呟く。

柳太郎

おじさん?

柳太郎

今俺のことおじさんって言ったの?

柳太郎が眉をひそめ下唇を噛む。

ハル

ち、違う違う!

ハル

ほら、あそこのおじさんの飲むビール美味しそうだなって…!

柳太郎

…なんかハル変だよ?

柳太郎が疑うようにこちらを覗き込む。

その視線に耐え切れず、私は目を逸らし言う。

ハル

全然!変じゃないよ!ほら、早く頼もうよ

柳太郎

…ハル?大丈夫?

ハル

え?なにがぁ?

自分の声が、数秒遅れで耳に届く。

視界はゆらゆらと揺らめき、柳太郎の顔がぼやける。

柳太郎

体調悪かった?無理して付き合わせちゃったかな

柳太郎は心配そうな表情で、こちらを覗き込むように見つめる。

ハル

…体調?ぜんっぜん平気!

ハル

むしろいつもより気分がよくて楽しいよ!

柳太郎

本当?

柳太郎

なんだか目がすわってきてるような気がするんだけど

気分がよく、私は声をあげて笑う。

そんな私の様子に驚いたのか、柳太郎は大きな瞳を真ん丸にして瞬きを何度もする。

柳太郎

やっぱりハル酔っぱらってるよね

柳太郎

一杯でこんな風になるなんて…

柳太郎

しんどくなる前に今日はもう帰ろうか

ハル

…体調?ぜんっぜん平気!

ハル

むしろいつもより気分がよくて楽しいよ!

柳太郎

今楽しくても後からしんどくなるよ。明日も大学でしょう?

ハル

…リュウはもう帰りたいの?

ハル

私と一緒にいたら楽しくないの?

柳太郎

そうじゃないよ

柳太郎

ハルのことが心配なだけだよ

ハル

じゃあもう少しいようよ!

柳太郎

…いいけどあんまり俺を困らせちゃだめだよ

ふはっと笑った後で柳太郎が言う。

ハル

今困ってるの?

柳太郎

困ってるよ

ハル

なんで?

柳太郎

…俺の彼女が可愛すぎるから

抱きしめたくて困ってる

柳太郎はそう言って、困ったように微笑んだ。

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やばぁ♡♡ラブラブ💑

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ああ良い

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