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10 - 帰さない。

♥

10

2025年12月25日

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(文化祭前日・放課後) 準備は終わった。 教室の飾りも、看板も、全部。 残ったのは、 胸の奥に溜まったものだけ。

佐久間萌笑

(明日が文化祭……
なのに、落ち着かない)

一ノ瀬瑞希

……佐久間

佐久間萌笑

なに?

一ノ瀬瑞希

帰るぞ

佐久間萌笑

うん

並んで校門を出る。 夕方の空は、オレンジ色。 近い。 でも、触れない。 それがもう、限界だった。

一ノ瀬瑞希

……なぁ

佐久間萌笑

ん?

一ノ瀬瑞希

今日は

一ノ瀬瑞希

俺の家、来るか

佐久間萌笑

……え

佐久間萌笑

(心臓、跳ねた)

一ノ瀬瑞希

何もしねぇ

一ノ瀬瑞希

ただ……

一ノ瀬瑞希

2人っきりになりたい

佐久間萌笑

……

佐久間萌笑

(断る理由、見つからない)

佐久間萌笑

……少しだけ

一ノ瀬瑞希

十分

一ノ瀬瑞希

(瑞希の家・玄関)

靴を脱ぐ音が、やけに大きい。

誰もいない。
静か。

――危ないくらい。

佐久間萌笑

お邪魔します…

一ノ瀬瑞希

……来て

ドアが閉まる。 その音で、空気が変わった。

一ノ瀬瑞希

……佐久間

佐久間萌笑

なに

一ノ瀬瑞希

今、逃げ道ない

佐久間萌笑

……分かってる

距離が詰まる。 一回目の“寸前”。

一ノ瀬瑞希

……やめとくか

佐久間萌笑

………

佐久間萌笑

……やめないで

その一言で、 唇が、触れた。 一回目。 短く、確かめるだけ。

佐久間萌笑

(あ……)

一ノ瀬瑞希

……ごめん

佐久間萌笑

……謝らないで

視線が外せない。 二回目。 少しだけ長く。 でも、すぐ離れる。

一ノ瀬瑞希

……だめだ

佐久間萌笑

……どっちが

一ノ瀬瑞希

……俺

一歩下がる。 でも、また近づく。 三回目。 触れて、留まって、 でも踏み込まない。

一ノ瀬瑞希

(止まれ…//)

佐久間萌笑

(離れないで……)

額が触れる距離。 息が混ざる。

一ノ瀬瑞希

……今日は

一ノ瀬瑞希

回数、制限できねぇ

四回目。 今度は、少しだけ深く。 長い沈黙みたいなキス。

一ノ瀬瑞希

………//

佐久間萌笑

息っ…できなっ…///

一ノ瀬瑞希

………

佐久間萌笑

………

佐久間萌笑

……瑞希、くん

一ノ瀬瑞希

名前で呼ぶな

一ノ瀬瑞希

今、余裕ねぇっての

離れては、また近づく。 五回目。 短く、でも確実。

一ノ瀬瑞希

……これで最後

佐久間萌笑

……信じない

六回目。 今度は、ためらいが少ない。 深くない。 でも、離す気もない。

一ノ瀬瑞希

……

一ノ瀬瑞希

ほんとに、ギリだ

佐久間萌笑

……私も

ゆっくり、離れる。 距離は戻る。 でも、熱は戻らない。

一ノ瀬瑞希

……今日はここまで

佐久間萌笑

……うん

一ノ瀬瑞希

……文化祭、終わったら

一ノ瀬瑞希

ちゃんと、続きな

佐久間萌笑

……約束?

一ノ瀬瑞希

約束

家を出ると、夜風が冷たい。 でも、 唇だけが、熱を覚えていた。

文化祭前日。 我慢は、 もう限界だった。

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