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今日は何かに溺れたかった。
だからバーなんて初めて。
そのくらい私は行き詰まっていた。何もかも忘れてしまいたかった。
今日ぐらい甘えてもいいよね」そう自分に言い聞かせ、少しばかりの緊張を胸に、私は重たい木のドアを開けた。
カランカラン。
私が扉を押すと、鉄製の年季の入った鈴が軽やかに店内に響く。
マスター
男性の低くて心地よい声が、私を出迎えてくれた。
白髪混じりの髪をキッチリと整え、白いシャツを着たその人は、年齢はきっと高いだろうが、とてもスマートな方だった。きっとこの店のマスターだろう。
私は適当にカウンターの椅子を引き、ドサっ倒れ込むようにして座った。
マスター
穏やかな声が私に聞いてくる。きっと私みたいな客多いんだろうな。この人の声、なんだかすごく落ち着く。
キム・ヘリン
私はバーというところに来たことがなかったので、とりあえずマスターのオススメならば失敗はないだろうと思い、そうした。
マスター
しばらく何も考えずにボーッとしていると、マスターがお酒をカウンターに置いた。中は少しオレンジっぽくて、透き通っていた。氷が店内の明かりをキラキラと跳ね返している。
キム・ヘリン
マスターは微笑んだ。
マスター
マスターは、お酒の名前は教えてくれなかった。若干の不安を抱えながら、私はそっとグラスを口にした。
キム・ヘリン
程よい酸味と甘味があって、フワッと爽やかな香りがした。喉を通るひんやりした感覚が心地よいよくて、とても美味しかった。
こんなに美味しいお酒、今まで飲んだことがなかった。
キム・ヘリン
私がそう言うと、マスターは自信ありげにふふっとまた微笑んだ。
今日くらい自由でいたい、そう思いながら三杯目くらいのグラスに私はまた手をつけ、ぐびっと流し込んだ。