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# 類 .
息が荒い。 雨が強く体を打つ。
# 類 .
どうして。 どうしてこんな事になったんだ。 両親の断末魔が耳に こびり付いて離れない。
# 類 .
母さんは、父さんは たった今、処刑されたんだ。 ぐるぐると映像が脳で渦巻く。 真紅の瞳が、血塗られて行く。 僕が呪いの子だから。 父さんも母さんもあんな風に 死ななきゃいけなかった。 最期に 最期まで 僕に“愛してる”なんていって。
# 類 .
雨が痛い。 どこか遠くまで行かなければ。 もう、痛くないように。
# 類 .
痛い。 頭が、ぐらぐらする。 雷が鳴る。 ぴちゃぴちゃと泥が跳ねて 母さんが縫ってくれたズボンを汚す。 誰か、誰でもいいから助けて欲しい。 歪みが、村を襲って。 支離滅裂な言葉で 脳が埋めつくされる。
# 類 .
歪みと、村の人間が 僕の事を狂った瞳で追い回す。 荒い呼吸のせいで肺が痛い。 吸うのが痛い。 でも、吸わなければ走れない、 生きることができない。 大鎌を持った男の人__ 村長が、僕の体を切り裂こうと、 鎌を大きく振り上げた。
# 類 .
どん、と、爆発音のような 大きな音が闇を切り裂いた。
…どれくらい 走り続けているのだろうか。 前が暗くなって、 足が疲れてふらふらしてくる。 息が苦しい。 吸っても吸っても、 酸素が足りない感覚が襲う。
# 類 .
ぜぇぜぇと肩で息をする。 肺が痛い。 立っていることも辛くなって 僕は膝から崩れ落ちる。
# 類 .
頭がぐらぐらして、 視界の端が黒く染まる。
# 類 .
ぐら、と頭が揺れて 視界が暗転した。
# 誰 .
知らない人の声が聞こえる。 起きろ?僕は寝てしまったのか?
# 誰 .
死にたく、ない。 そうだ。 そう思って、こうして痛くても 苦しくても走ってきたのだから。
# 誰 .
# 誰 .
ば、と意識が浮上する。 星と太陽を集めたみたいな瞳が、 僕の事を見つめている。
# 誰 .
# 類 .
手が差し伸べられる。
# 誰 .
少し遠慮がちに声をかけられる。 その声は酷く自信ありげに 強く響くのに見上げた彼の瞳は 弱くて脆くて揺れていた。 見たところ彼に敵意はないので 大人しくその手を取る。 でも、僕には“敵意”ではない それが視えてしまった。 《何で、オレだけが》 《助けてくれ》 《苦しい》 微弱にしか感じられない強い絶望。
# 誰 .
見える笑顔とのギャップに驚く。 彼は見たところ 自分と同い年くらいの子供だ。 ここがいくら荒廃した 世界だとしても こんなに深い絶望は 視た事がなかった。
# 類 .
# 誰 .
間を置いて彼が答える。
# 誰 .
彼はよくわからない事を呟く。
# 誰 .
彼がそう言うと、 淡い黄色の光が彼を包んで、 絶望は見えなくなった。 強い、強い無。 僕の呪いを弾くほどの。
# 類 .
# 誰 .
# 類 .
# 誰 .
無になったキミから 再度手を差し伸べられる。 雨に濡れた小さな手が触れ合う。 それは無言の肯定に他ならない。
# 誰 .
彼に手を引かれ、 彼の活動拠点だという 廃屋に連れ込まれた。
# 誰 .
# 類 .
# 類 .
# 司 .
# 類 .
嗚呼、そうだ、と 伝え忘れた事を思い出した。
# 類 .
# 司 .
彼はにか、と笑う。 僕の目には 無 しか映らない。 先程感じた深くて強い 微弱な絶望はない。 嘘すらも見えない。
# 類 .
# 司 .
どうして?と聞くと 彼はまた変な笑みを浮かべながら 僕の頭をわしわしと撫でる。
# 司 .
司くんはそう言うと、 僕の頭を撫でていた手を止め 近くにあったトランクから 水晶のような物を取り出した。
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