テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
5
部屋の空気が、 完全に止まった。 ⸻ 『今度は、誰を置いて逃げるの?』 ⸻ ジンの声は静かだった。 責めるでもなく、 怒るでもなく。 だから余計、 深く刺さる。 レイの指が、 銃を握る音だけが小さく響いた。 ノアが前へ出る。
ノア
低い声。 ジンの視線が ゆっくりノアへ向く
ジン
ノア
ノアの目は冷えていた。 今までみたいな、 軽い笑いはない。
ノア
ジンは否定しない。 ただ静かにレイを見る
ジン
雨音。 割れたガラス。 冷たい夜。 全部が、 嫌な記憶を引きずり出す。
ジン
レイは何も言わない。 でも、 ユキには分かった。 この人、 今かなり危ない。 クロエも小さく眉を寄せている。 ノアは舌打ちした。
ノア
ジンが目を細める
ノアは続けた
ノア
ノア
ジン
即答だった その瞬間だけ ジンの声が少し低くなる
ジン
空気が凍る。 ユキが息を呑む。 クロエが小さく目を伏せる。 ノアの目が見開かれた。
ノア
レイは動かない。 否定しない。 それが、 一番苦しかった。 ジンは静かに続ける。
ジン
ジン
ジン
1歩 また1歩 ガラスを踏みながら近づく
ジン
レイの呼吸が少し乱れる。 ノアは初めて見る。 この男が、 ここまで追い詰められるのを。 ジンはレイの目の前で止まる。
ジン
静かな声
ジン
その瞬間 ノアがジンの胸ぐらを掴んだ
ノア
低い声。 殺気。 ユキの肩が震える。 でもジンは、 ノアを見ても動じない。
ジン
ノア
ジン
ジン
ノアの眉が歪む。 その瞬間。 今まで黙っていたレイが、 静かに口を開いた。
レイ
全員の視線が向く。 レイは銃を下ろしていた。 でも、 その顔は妙に静かだった。
レイ
灰色の目と、 黒い目がぶつかる。 レイは低く言った。
レイ
レイ
ノアの目が揺れる。 ユキも、 クロエも息を止める。 レイはゆっくり、 ノアの腕を掴んだ。 逃がさないみたいに。 そして、 静かに続ける。
レイ
レイの手は、 少し冷たかった。 ノアは一瞬だけ目を見開く。 掴まれた腕。 逃がさないみたいな力。 ⸻ 『今回は、置いていかない』 ⸻ その言葉が、 胸の奥へ沈んでいく。 ジンが静かに目を細めた。
ジン
レイは答えない。 ただ、 ノアの腕を掴んだまま離さなかった。 ノアは少しだけ笑う。
ノア
掠れた声
ノア
レイ
その時だった。 ——バンッ!! 突然、 廊下の奥から銃声が響く。 全員が反応する。 クロエが即座に伏せ、 ユキが息を呑む。 次の瞬間、 部屋の壁へ弾丸が撃ち込まれた。
クロエ
ノアが舌打ちをする ジンは振り返りもしない
ジン
レイの目が冷える。 廊下の向こうから、 複数の足音。 組織の人間だ。 クロエが低く呟く。
クロエ
ユキの呼吸が乱れる ノアは咄嗟にユキの肩を引いた
ノア
ユキ
ノア
強い声。 ユキが震えながら後ろへ下がる。 レイは静かに銃を構えた。 その姿を見て、 ジンが小さく笑う。
ジン
レイは視線を向けない
ノア
ノア
ノアが睨む。 ジンは数秒黙ったあと、 小さく息を吐いた。
ジン
その瞬間。 ——ガンッ!! 玄関のドアが蹴破られる。 黒服。 銃。 濡れた靴。 組織の人間達が一気に流れ込んできた。 ユキの顔が青ざめる。 ノアが前へ出る。
ノア
レイ
短い会話。 次の瞬間、 乾いた銃声が響いた。 レイの一発目。 迷いがない。 黒服の肩を撃ち抜く。 部屋へ悲鳴が響く。 ユキが息を呑む。 ノアは低く笑った。
ノア
ノア
ノア
レイは答えない。 ただ静かに、 次の銃口を向ける。 でもその時。 部屋の奥。 暗闇の向こうで。 ゆっくり、 誰かが笑った。 聞き覚えのある声。 静かで、 冷たい声。
"騒がしいね"
全員の動きが止まる。 その声だけで、 空気が変わった。 ジンが小さく目を伏せる。 ノアの表情が消える。 そして暗闇の中から、 赤い目が現れた。 アベルだった。
コメント
1件
第9話、めちゃくちゃ重くて苦しくて、でもそれがすごく刺さりました…。 特に「今回は置いていかない」ってレイが言った言葉、ずっと抱えてたものがやっと言葉になった感じがして、そこで一気に涙腺緩みました。 ノアが「そっちの方が似合う」って笑ったのも、この関係性だからこそ出る台詞だなって。 アベル登場でまだ終わらない…続きが気になりすぎます。