地球最後の日にお隣さんからおすそ分けを貰った

ぷつり

どの局も同じ内容ばかり放送するテレビに嫌気がさし、電源を切る。

数週間前、地球に巨大な隕石が落ちると報道された。

初めの頃は、滅亡回避のための国際会議が開かれ

様々な研究所が議論を重ね

隕石自体がデマ情報であるとする説も流れた。

しかし、徐々に迫ってくる隕石が

それが事実であること

また、回避不可能であることを表していた。

地球最後の日だろうがなんだろうがお腹は空く。

そう呟いたとき

ピンポーン

玄関のチャイムが鳴った。

ｶﾞﾁｬ

ﾊﾞﾀﾝ

そういえば、ここには結構長く住んでいるのに

お隣さんに会うことはなかった気がする。

まあ、今どきはそんなもんか。

それにしても、カレーが食べたいと思っていたら丁度おすそ分けを貰えるなんて

すごい偶然もあるもんだ。

ありがたくいただこう。

そう呟いたとき

ピンポーン

再び、玄関のチャイムが鳴った。

先程の女性だろうか。

ｶﾞﾁｬ

ﾊﾞﾀﾝ

反対隣の人なのかと思ったが

うちは角部屋なので、それは有り得ない。

旦那さんだろうか。

カレーはすごく美味しかった。

地球最後の日にこんな美味しいものを食べられて、自分は結構幸せなのかもしれない。

そう呟いたとき

ピンポーン

玄関のチャイムが鳴った。

ｶﾞﾁｬ

ﾊﾞﾀﾝ

ピンポーン

ｶﾞﾁｬ

ﾊﾞﾀﾝ

ピンポーン

ｶﾞﾁｬ

ﾊﾞﾀﾝ

ピンポーン

ｶﾞﾁｬ

ﾊﾞﾀﾝ

ふと、部屋の時計が目に入る

時刻は17時

最期の時が、すぐそこまで迫っていた。

貰った本は、5冊

どれもそこそこの厚みがある。

急げば読み切れるかもしれないが

それでは物語を十分に楽しむことはできないだろう。

思い付いたのは、あまりにも馬鹿らしいアイデア。

普通に考えれば、有り得ないようなこと。

カレー、米、アイス、スプーン、そして面白い本…

今日僕が求めたものは

何故か必ず手に入った。

ならば。

ただの偶然かもしれない

何も起こらないかもしれない

でも

それでも

もしかしたら。

今日1番の願いを込めて、叫ぶ。

ピンポーン

ｶﾞﾁｬｯ!!!

ﾊﾞﾀﾝ!!!

ピンポーン

ﾌﾟﾛﾃｲﾝ~

ﾌﾟﾛﾃｲﾝﾀﾞﾖ~

ﾌﾟﾛﾃｲﾝ…

ピンポーン

ｶﾞﾁｬ

女性に手渡されたのは、一つの小箱だった。

振るとカタカタと音がする。

呼吸を整え、箱を開ける。

そこに入っていたのは

黒くて四角い物体に、赤いボタンがついたもの。

そしてボタンにはドクロのマーク。

これはまるで…

僕は覚悟を決めて

ボタンを押した。

リモコンを手に取り、テレビをつける

手を取り合い、喜ぶ人々が画面に映る。

ああ

本当に

―数ヶ月後―

世間は徐々に落ち着きを取り戻し

元通りの日常が帰ってきた。

もうすでに学校や会社も再開していて

少し前まで滅亡しかけていたとは思えないくらいだ。

突然現れた大量のお隣さん

貰ったおすそ分けの数々

隕石とスイッチの関係性

それらは、数ヶ月経った今でも謎のままだ。

ピンポーン

ｶﾞﾁｬ

fin.