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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

よく夢を見る

それは子どもの頃の…

母親

ねえ、ユウゴ

母親

好きな子ができたんじゃない?

子どものユウゴ

いないよ、そんなの!

子どものユウゴ

(お母さんには、言えない)

子どものユウゴ

(だって、俺が好きなのは…)

母親

リヒト君…

子どものユウゴ

……!

母親

なんて言わないでよね?

「気持ち悪い」

ジリリリリッ

ユウゴ

また、あの夢…

目覚まし時計を止めると

カバンからグラビア雑誌を 取り出して

ベッドの下に隠す

ユウゴ

(これが俺にできる…)

ユウゴ

(精一杯の親孝行…)

ユウゴ

そう、信じてたのにな…

山東

ユウゴ君、おはよう!

ユウゴ

おはよう

山東

ねえ、ユウゴ君…

山東が無理やり腕を組む

ユウゴ

…なんだよ

山東

付き合わない?
わたしと…

ユウゴ

はあ?何でお前と?

ユウゴ

俺、お前の事、好きじゃないけど

山東

ふふっ。わたしも

山東

ねえ?一緒に、総体の上位を目指そうよ

ユウゴ

またかよ…

山東

だから、リヒト君にあわせて手を抜くのはやめて

ユウゴ

おい、それ。どういう意味だよ!

山東

そのままの意味だけど

ユウゴ

お前、ホントに嫌なやつだな…

ユウゴ

そんなに出たけりゃ、自分で出ろよ

山東

それが出来ないから、頼んでるんじゃない!

山東

わたしはケガで、陸上をあきらめた…

山東

大学の推薦だって、取り消し…

山東

なのに、なんで?

山東

本気出せば、総体で上位とれるユウゴ君が、なんでやる気ないの!?

ユウゴ

…買いかぶりだよ

ユウゴ

俺には、そんな実力ない

ユウゴ

(できるだけ、目立ちたくない…)

ユウゴ

(高校を出たら、この町からも離れたい)

ユウゴ

(サワのためにも)

山東

じゃあ、バラされてもいいの?

ユウゴ

…ばらすって、何を?

山東が耳元でささやく

山東

リヒト君とキスした事

ユウゴ

…なっ!

ユウゴ

ユウゴ

勝手にすれば?

ユウゴ

どうせ誰も信じないよ

山東

へぇー。写真見ても、信じないかな?

ユウゴ

写真?

山東がスマホの画面を 俺に見せた

ユウゴ

(これ、夏祭りの…)

ユウゴ

俺が無理やりしたことだよ

ユウゴ

リヒトは関係ない!

山東

えー、ユウゴ君が無理やり?

山東

陸上部のみんなは、どう思うのかなぁ?

ユウゴ

(大丈夫。リヒトは、みんなから信頼されてる)

ユウゴ

(俺さえ、我慢すれば…)

ユウゴ

…勝手にしろ

気まづい思いを抱え 部室へと向かう

ユウゴのヤツ、酷いな

アイツと同じ部室とか無理…

部室から漏れる言葉に 足がすくむ…

ユウゴ

(リヒトは悪くない…)

ユウゴ

(俺が無理やりキスした。それで、いいじゃないか…)

リヒト

待ってくれ!
悪いのは──

ユウゴ

(リヒト、俺をかばうな!)

ユウゴ

(お前を巻き込みたくないんだ!)

バンッ!

ユウゴ

みんながイヤなら。俺は部室を使わない

ユウゴ

それで、いいか?

一方的にそう告げると

逃げるように 部室から立ち去った

リヒト

ユウゴ!

ユウゴ

(なんで、追いかけてくるんだよ…)

ユウゴ

(みんなが不審に思うだろ?)

リヒト

ユウゴ…!

ユウゴ

悪い…

ユウゴ

今は、1人にして…?

体調不良を理由に 学校を早退した

プルルル…

母親

あら、誰かしら?

ユウゴ

(どうしたんだろう?)

ユウゴ

(母さん、俺のこと見て…)

母親

…ちょっと、出かけてくる。ユウゴは家に居て

ユウゴ

学校から、なんて言われたの?

母親

いいから!ユウゴは家に居なさい!

生徒相談室には リヒトと先生達が居た

ユウゴ

リヒト…先生…

母親

なんで、付いてきたのよ…

母親

この…恥知らず!

ユウゴ

……っ

俺がぶたれそうなるのを 女性教師が止めた

母親

う、うぅ…

ユウゴ

母さん…

母親

サワちゃんだと思ってたのに…!

リヒト

おばさん、悪いのはオレなんです!!

リヒト

オレがユウゴに──

母親

…ユウゴ。どうして、リヒト君なの?

母親

わたしの育て方が悪かったから?
だから、男の子を好きになったの?

ユウゴ

(ちがう、そんなんじゃない)

だが、思いは言葉にならず

みっともなく 涙があふれでた

母親

主人と相談してからに、なりますが…

母親

学校は、責任を取って辞めさせます…

女性教師

待ってください!

女性教師

ユウゴ君。本当に、それでいいの?

ユウゴ

……

リヒト

ユウゴ!

リヒト

それで、いいのか!?

ユウゴ

…俺は。
…いいよ、もう

ユウゴ

(陸上部には、もう戻れない…)

ユウゴ

(学校にだって、この町にだって。俺の居場所は、どこにもない…)

ユウゴ

(それなら、せめて。リヒトとサワだけは守りたい!)

ガラガラッ

リヒト

母さん…

リヒトの母

このバカ!!

リヒトの母

人様の大事なお子さんに、何してんの!!

リヒト

そ、それは…

リヒトの母

ユウゴ君のお母さん、
ユウゴ君

リヒトの母

悪いのは、全て、うちのリヒトです。申し訳ありませんでした!

リヒトの母

今後は、2人きりでは会わせませんので…

リヒト

ちょっと、待ってよ。オレたち、部活だって一緒だし…

リヒトの母

だからサワを!
妹と一緒に行動させます

リヒトの母

ですので、どうか。お許しください!
学校だけは、続けさせてください!

リヒト

母さん…

リヒトの母が深々と 頭を下げる

その光景に胸が痛んだ

リヒト

母さん。オレ、真剣なんだ。本気で、ユウゴが好きなんだ

リヒトの母

母さんだって、わかってるわよ!

リヒトの母

リヒトと…ユウゴ君が。遊びで、そんな事しないって、わかってる

リヒトの母

だから、辛いのよ!

リヒト

母さん…

リヒトの母

真剣なら。
本気で好きなら!!

リヒトの母

どうして、卒業まで待てなかったの!?

リヒトの母

インターハイだって、近いのに…

リヒトの母

もし、こんな事が問題になったら、ユウゴ君の将来はどうなるの?

ユウゴ

(俺の、将来…?そんなことまで、心配してくれるなんて…)

リヒトの母

今のリヒトに、責任なんて取れないでしょう!?

ユウゴ

(だけど卒業してからじゃ、間に合わなかった)

ユウゴ

(リヒトの気持ちを知らずにいたら、俺はもう)

ユウゴ

(ここには、居られなかった…)

コンコン

ノックの音に 母親たちの顔が強ばる

椎名先生

…失礼します

重い空気を割って やって来たのは

担任の椎名先生だった

椎名先生

問題になった、写真の事ですが…

ユウゴ

(写真…!)

ユウゴ

(山東のヤツ、本当にあの写真を…!)

椎名先生

写真を撮った生徒には、許可を取って削除させました

椎名先生

他の生徒たちにも、この件は広めないようにと、忠告しておきましたので

椎名先生

どうぞ、ご安心ください

母親たち

ですが!

椎名先生

椎名先生

人が人を好きになるのは、いけない事でしょうか?

「少しだけ時間を下さい」

そう言って 椎名先生が話したのは

この学校がまだ 男子校だった時の話

椎名先生

当時も、同性を好きになる生徒はいました

母親

でも…。部活は、続けられないでしょう?

ユウゴ

……

椎名先生

生徒とは、1人1人、個別に話をしました

椎名先生

2人の仲の良さは、みんなが知っています

椎名先生

友達同士の悪ふざけだから、大事にしないでほしい

椎名先生

事情を知る生徒達には、そう頼んでおきました

椎名先生の説得で 母親たちが去っていく

椎名先生

2人とも

ユウゴ

はい

椎名先生

くれぐれも。高校生らしい、付き合いをするように

ユウゴ

(高校生らしい、付き合い?)

リヒトと顔を合わせ 苦笑いする

ユウゴ

(きっと、リヒトも思ってるはず)

ユウゴ

(昨日のことは、高校生らしい付き合いになるのかって)

女性教師

2人の味方は、椎名先生だけじゃないからね?

リヒト

はい。ありがとうございます

教室に帰る途中

リヒトが背中を叩いた

ユウゴ

痛いな…

リヒト

一緒に、帰ろうな?

ユウゴ

うん

女性教師

仲が良いのは、いい事だけど

女性教師

悪目立ちしないように、気をつけてね?

はいと返事をして

それぞれの教室へ向かう

自分のカバンを抱えると リヒトの教室へ向かった

リヒト

悪い。ちょっと待ってて

教室には、今 俺たちしか居ない

ユウゴ

(高校生らしい付き合い…か)

ユウゴ

遅い

そう言ってリヒトの頬に 軽いキスをする

リヒト

なっ…!

ユウゴ

これくらいは、するでしょ?

ユウゴ

高校生なんだからさ。
俺たち

リヒト

リヒト

…今度は…

リヒト

かばって、やらねえからな?

リヒトの顔が近づき 唇が触れ合う

ユウゴ

(もう、怖いことなんて何もない)

ユウゴ

(リヒトのそばに、居られるんだから…)

夕日よりも眩い光が

冷えた心を 温かく満たしていった

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