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やっぱりこばはや良い👍改めて思った( *¯ ꒳¯*)
速水泰輝
夕闇に包まれながら、手の中にあるガラスの靴を見ては、ため息を溢す。
速水泰輝
自分の不甲斐なさに肩を落としながら、手の中のガラスの靴を夕陽に向って翳す。ガラスの靴の中に閉じ込められた夕陽は、光の屈折により、シトリンのような輝きを放つ。
しばらく、見ていると落ち込んでいた気持ちが、少しだけ浮上していく。
速水泰輝
昔から辛い時、悲しい時はこうやって、ガラスの靴を眺めることで、気を紛らわせてきた。
子供の頃に、お小遣いを貯めて買ったガラスの靴。
男の癖に、女みたいな物を欲しがると言って周りからは、からかわれたけれど、気にはならなかった。
数ある童話の中で、僕はシンデレラが好き。だって、王子様が迎えに来てくれるから。
王子様は、ガラスの靴を頼りに、シンデレラを見つけた。
僕は生まれて直ぐに、親に捨てられた。
だから、両親の顔も名前も知らない。
幼かった僕は、シンデレラの話を読む度に、もしかしたら、お父さんたちは、僕が目印を持ってないから、見つけられないんじゃないかって思ってた。
だから、どうすれば両親に見つけて貰えるか、毎日のように考えていた。
そんなある日、友達に誘われて、何時もは通らない帰り道を通った日。そこで、僕は見つけた。
古ぼけた骨董屋のショーウィンドに飾られたガラスの靴を。
ガラスの靴を見つけた瞬間、これだ!って思った。ガラスの靴を目印にすれば、きっとシンデレラのように見つけて貰えるって思ったから。
少し考えれば分かった筈なのにね。子供を捨てる親が、一度捨てた子を探しにくる筈なんてないのにね。
要らないから捨てられた。 ただそれだけ。
その答えに気づいた時、物凄く悲しかった。
そして、同時にガラスの靴を持ってたって、無意味だって事に気づいた。
だけど、僕は諦めが悪い方だったから、ガラスの靴を捨てられなかった。
親から捨てられた僕を、いつか必要としてくれる人が現れるんじゃないかって、シンデレラのように王子様が見つけてくれるかもしれないという希望的願望にすがるしかなかった。
速水泰輝
ここは自分だけの憩いの場。自分以外の人が来ないと知っていて選んだ場所だから、自分以外の人がいない事は、別に不思議な事ではない。 なのに、一人取り残されている事を寂しく思ってしまうのは、些か自分勝手。
でも、気分が落ち込んでいる時、人は嫌な方へ嫌な方へと思考が向く。 この場所のように、僕は誰からも必要されてないのでないか?誰にも必要とされないまま、ひっそりと死んでしまうのかもしれないという漠然とした恐怖が、僕の心を苛んでいく。
嫌な考えを振り払う様に頭(かぶり) を振る。
小林幸真
突然、嫌な思考に囚われていた僕を、現実世界に連れ戻すかのようにして、重量のある腕が、僕の肩に回される。
速水泰輝
小林幸真
何時ものように、僕を連れて行こうとする小林の兄貴に、今までずっと心につっかえていた言葉を吐露する。
速水泰輝
速水泰輝
小林幸真
事も無げに告げられた言葉に、僕の心が掬い上げられていく。小林の兄貴は、意図して言ってはいない。けれど、兄貴からもたらされた言葉が、腕から伝わる体温と重なり、僕の心に光明となりて降り注いでいく。
小林幸真
小林の兄貴に言われて見てみると、ガラスの靴は割れいていた。それは見事に、ガラスの破片となって散らばっていた。さっき、驚いた拍子に落としてしまったようだ。
小林幸真
速水泰輝
もうガラスの靴はいらない。
ガラスの靴がなくても、貴方は僕を見つけてくれるから。
僕が帰る場所は、ただ一つ。
お城でも、両親のもとでもない。
兄貴の腕の中だけ。
おわり
あとがき わなかぶウェディング話を書いてるんだけど、今、繋ぎ目が上手くいかなくて、手こずってるんで、息抜きがてら、こばはやが見たいと言ってくれた方がいたので、書いてみた。 ガラスの靴をモチーフに話を考えると何故か、シリアスなるんだよな(-ω- ?) 速水の過去捏造で書いたけど、天涯孤独なら、恐らく遠からず近からずだろ。