ステージ裏。 照明の光がまぶしく反射して、鏡の中のひなを何倍にも映し出していた。
スタッフ
七瀬さん、本番まであと10分です!
ひな
ありがとうございます。リハの映像、もう一度確認できますか?
スタッフ
もう?完璧でしたよ
ひな
……念のためです
完璧——。 それは、彼女の呪文であり、鎖でもあった。
心臓の鼓動が速くなるたび、手が冷たくなる。
ひな
(失敗したらどうしよう。私が一番じゃなくなったら……?)
すると、背後から軽やかな声が響いた。
らぁら
ひな〜〜!準備OK〜〜!?
ひな
らぁら……ステージ前なのに、そんなに元気でいられるの?
らぁら
うんっ!だって楽しみなんだもん♪ ひなと一緒にステージに立てるんだよ!
ひなは思わず、微笑んだ。 でも、その笑顔の奥に、かすかな緊張が残っていた。
スポットライトが落ち、音楽が始まる。 観客の歓声が波のように押し寄せた。
📢つづいてのステージは!選抜アイドル・七瀬ひな&真中らぁらのスペシャルライブですーっ☆!
観客
キャーーーッ!!
観客
ひなちゃーん!!
ひなは完璧なタイミングでステップを踏む。 声もダンスも、全て理想通り。 けれど——
一瞬、ライトが強く瞬いた瞬間、足が滑った。
ひな
っ!
息が止まる。 転びそうになる体を、すかさずらぁらが支えた。
らぁら
ひな、大丈夫!?
ひな
……だ、大丈夫。ごめん、私——
らぁら
謝らないで! ねぇ、笑って!
音楽は止まらない。 らぁらが手を取り、リズムに合わせて動き出す。
らぁら
ほら!“ドジもキラッと!”だよ!
ひな
……ふふっ、なにそれ
らぁら
合言葉っ☆
観客席から笑いと歓声が上がる。 その瞬間、ひなの中で何かが弾けた。
ひな
(完璧じゃなくても……楽しければ、それでいいのかもしれない)
二人の歌声が重なり、ステージの光が彼女たちを包み込む。 ひなの瞳に、涙がにじんだ。
ひな
……ありがとう、らぁら
らぁら
えへへっ、なーに?私、なにもしてないよ!
ひな
ううん。助けてくれた。あのままだったら……私、また“完璧”を守ろうとして、笑えなかった
らぁら
ひなは、完璧より“楽しい”が似合うよ!
ひな
……もう、それを否定できない自分がいるわ
二人は顔を見合わせて、くすっと笑い合う。
(ステージの向こうには、いつも君がいる。 ……それが、私の一番の光。)






