じいちゃんのタイムマシーン

徒歩コースの地元組は少なく

殆どの生徒が電車コースの隣町組で

委員長もその一人だった

委員長は俺が地元組なのを知らなかったから

部活に入らずゲーセンに行っていると思ったんだろう

俺が利用する西柳駅は小さくて

隣町組が利用する柳駅と違って柳線しか走っておらず

駅前には個人経営の小さなスーパーと郵便局

あとは本屋と内科クリニックのビルが立っているだけ

向こう隣の北柳に至ってはほぼ無人で改札もなく

小さなICカードの読み取り機と切符回収箱があるのみ

一つしかない券売機が壊れたら一貫の終わり

そんな北柳に比べたら

西柳はまだマシなのかもしれない

家から学校までは徒歩で十五分程度

以前は地元組のみ自転車での登校が許可されていたが

数年前に何台もの自転車が盗まれる盗難事件が発生し

自転車通学は廃止になってしまったらしい

俺がいつも通る下り坂の先は丁字路になっていて

コンビニなどが立ち並ぶ大通りに繋がっている

丁字路を右折してしばらく進むと西柳駅があり

逆に左折して130mほど進んだ所に学校に続く道がある

その道も丁字路になっていて

向こう側から歩いてくる隣町組と合流する地点になっていた

その丁字路を曲がって130m進んだ先に

俺の通っている柳原高校がある

学校を背にして丁字路を右折すると電車コースの柳駅方面

左折すると徒歩コースの地元方面と言うわけだ

本当は西柳の方が学校から近いのだが

殆どの生徒が柳駅から別の路線を利用していて

西柳に行くには柳駅で柳線に乗り換えなければならない

乗り換えてからはたったの一駅

でもこの乗り換えで定期券の料金がわずかに上がるため

隣町組は少し長い距離を歩いて登校している

下駄箱で声をかけられた

改めてちゃんとした事情を知りたいと言われ

昼休みに話す約束をした

そこできちんと説明して納得してもらいたいと思った

そして迎えた昼休み

委員長と話をするため屋上へと向かった

女子と二人でなんて始めてだったから

正直ちょっと緊張もしていたけれど

扉を開けたら既に委員長が立っていて

不思議と緊張が吹き飛んだ気がした

委員長は真面目で

茶化したりする人ではないとわかっていたからかもしれない

最初は何てことない雑談から始まったが

わりとすぐに本題に入り経緯を説明

俺には祖父母に会った記憶がないこと

じいちゃんとおばあちゃんが俺のことを大切にしてくれて

幼い頃から実の孫のように可愛がってくれていること

そんなじいちゃん達に恩返しがしたくて

担任に許可をもらって帰宅していることなどを話した

そう聞かれて言葉に詰まった

母ちゃんのことも話すべきか迷ったけど

結局はごまかしてしまった

うまく伝えられる自信がなかったから

でも深く突っ込まれることもなく

話はそこで終わった

その後、直ぐに生活指導を探し

担任の許可を得ていることを伝えた

少し嫌な顔をされたが

担任が助け船を出してくれてなんとか納得して貰えた

委員長にもそのことを話して

改めて言い過ぎたことを謝罪した

委員長はそう言ってくれたけど

きっと母ちゃんも謝るべきだと言うはず

委員長の言葉に赤面

慌てて平気なふりをした