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知りたくなかった こんな気持ち。 分かりたくなかった こんな感情。 幸せな日々を知っていく度に 離れがたくなって、 募っていくのは不安ばかりで、

こんなことなら最初から、 1人の方がマシだったのかもしれない。 きっとこう言ったら、 あいつは泣きそうな顔をするのだろうか。

蘇枋っ!!!

何が何だか分からなかった。 いつもの様に町を徘徊して、 粛清して、 町の人々の助けになっていた。

蘇枋とも、いつものように楽しげに話していた。 揶揄われて顔を赤くして、 ただただその日常の幸せを噛み締めて、今までの普通とは違った今を楽しんでいたはずなのに。

壊れるのは一瞬なんだって、 この時は何故、きづきもしなかったのか。考えもしなかったのか。 否、分かっていて、見て見ぬふりをしてたんだ。

分かってて、全部無視した。

大丈夫かっ!!?

蘇枋

……??

目の前の恋人に駆けつけた頃には、 見たことも無い姿だった。 息をあらげ、顔も少し赤い。 首筋には冷や汗のようなものがつうっと流れていた。 こんな恋人知らない。 見たことも無い。

蘇枋を心配する隙もなく、 敵はどんどん殴りかかってきて、 こんな状態の蘇枋を守りながら 動くのは、少し気が参った。 それでも、人数も強さも大したことない相手をノすのは、そう時間はかからなかった。

町の見回りは2人だけで十分だろうと、級長であり、友人であり、恋人である彼と町を歩いた。

町の賑やかさはいついつまでもかわらず、楽しげな雰囲気を醸し出していた。 商店街の皆が、桜にあれやこれやと食べ物等が入った紙袋を渡していた。 頬を赤く染める彼を見て、微笑ましい気持ちと、桜君がモテすぎてて少し困るという気持ちもあった。

蘇枋

妬けちゃうなぁ…

あ?んだよ急に

いつの間にか口から漏れていた言葉は、彼に聞こえていたのだろう。 綺麗な横顔が、ちらりとこちらを振り向いた。

蘇枋

今日も俺の桜君が人気者だなぁ、って思って

はぁっ!?

自分の顎を桜君の肩にのせ、腹の辺りに腕を回した。 商店街の人達は仲良しねぇ なんて、微笑ましげにこちらを見ていた。 各言う抱きしめられた本人は、 顔を真っ赤にして 「ここ人いるだろっ!!」 と叫んでいた。

蘇枋

いいじゃない。こうして抱きしめられる時間も有限なんだから。

それはそれ!これはこれだろっ!!

時間は有限だ。 もちろん、君を手放す気なんて毛頭ないけれど。 いまはただ彼に触れていたい。 抱きしめていたい。 そういう気持ちだけが先走っていた。

あれやこれやと話しているうちに、 商店街の奥から女性の悲鳴が聞こえてきた。 あれこれ考える間もなく、 彼が走り出したのを合図に、 俺も急いだ彼の跡を追った。

こんなに自分の行動に後悔したのは、後にも先にもにっとこの時だけだろう。

桜君が敵をなぎ倒している間に、 絡まれていた女性へと声をかけた。 その時だ、自分の体に電撃の様なものが走り、体が硬直して動かなくなったのは。

自分でも一瞬何が起きたのか、 自分の体がどうなったのか分からなかった。気づいた時には顔を火照らせ、 地面へ、ぺたりと座っていた。

絡まれてた女と、蘇枋が見つめあったまま息を荒らげた。 地面へ、へたりと座り込んでしまった蘇枋に、今すぐにも駆けつけたかった体を押さえ込んで、目の前の敵をぶっ飛ばした。蘇枋の方に敵が行かない様に細心の注意を払いながら。

地べたに手を着いた女の方は、 商店街の奴らが、 支えて病院へと連れていった。 蘇枋の方は、あまりにも敵が近くにいて近寄れないのと、俺がいるから大丈夫だという判断だろう。

今すぐにでも蘇枋に近寄れないもどかしさと、いつもの様に動かない体に1つ舌打ちをした。

蘇枋っ、とりあえず病院行くぞっ!

どれだけ話しかけても息をするだけで精一杯という蘇枋の腕を引っ張った。 力を込めて引き上げようとした所で、 蘇枋が制止の声を出した。

蘇枋

まって、

蘇枋

さくらくん、

蘇枋

病院……なら、俺、1人でいける…から。

今すぐに立てもしない奴が何を言ってるんだか。 蘇枋の言葉を無視して 体を引っ張り起こした。 支える様に蘇枋の腕を自分の肩に回さした。

それ以上、蘇枋の言葉が出る事がなかった。よほどしんどいのだろう。

蘇枋が1人で病院へ行くと言った理由、それは俺が、病院に対して良い印象をもっていないからなのか、 それとも、俺が医者の言葉を聞かない様にか。

何にせよ、俺の首から流れたのは、 一筋の汗だった。

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