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レシュノルティアの君

第10話 - ウツギ

551

2024年02月28日

#第2回テノコン

#ミステリー

#一次創作

#連載

#切ない

#恋愛

夢野ひより

滝口　舞美

おはよう
待った？

影山　ましろ

いや、
俺も今来た所だ

滝口　舞美

そっか…

影山　ましろ

…

滝口　舞美

な、なんか
あれだね！

影山　ましろ

ん？

滝口　舞美

休みの日に会うって
不思議な感じだね！

影山　ましろ

そうだな…

滝口　舞美

どこに行く？

滝口　舞美

って言っても、
遊ぶ場所なんて
無いよ？

影山　ましろ

滝口さんの
好きな所に行きたい

滝口　舞美

だから、
遊べそうな場所は
無いんだって！
これが田舎の洗礼

影山　ましろ

遊ぶ場所とか、
カフェじゃなくて
良いんだ…

滝口　舞美

へ？

影山　ましろ

散歩道でも良い

滝口　舞美

散歩か…
それなら、
良い所があるかも

影山　ましろ

この景色…

影山　ましろ

花が綺麗だ…

滝口　舞美

ましろ君、
植物が好きだもんね

影山　ましろ

…

滝口　舞美

そういえば、
マスコミがすごいね。
大きな事件だから…
こんなに騒がしい村は、
生まれて初めて

影山　ましろ

言ってない

滝口　舞美

え？

影山　ましろ

俺がいつ…
植物が好きって言った？

滝口　舞美

言ってたよ

滝口　舞美

忘れてるだけでしょ？

影山　ましろ

…

影山　ましろ

あの日の事を、
聞かせてくれないか？

滝口　舞美

あの日？

影山　ましろ

3月18日、
小春と何を話したのか…
滝口さんから、
詳しく聞いてない

滝口　舞美

何で？
言ったでしょう？
委員会で、
少し話しをした。
それだけ

影山　ましろ

滝口さんには、
好きな人が
いるだろう？

滝口　舞美

…は？
何言ってるの？

影山　ましろ

その好きな人は

影山　ましろ

草壁…だろ？

滝口　舞美

や、やめてよ！

滝口　舞美

誰があんなやつ！

影山　ましろ

尾崎さんが言っていた、
「舞美なら
分かってくれる」

影山　ましろ

それは、お互いに
失恋をしたと解釈できる

滝口　舞美

あははっ！！
私が紘に失恋？
ないない！

影山　ましろ

この村に来てから、
ずっと違和感しか無かった

滝口　舞美

違和感…？

影山　ましろ

まず、
月城小春とウツギ…

影山　ましろ

月城小春を
調べる内に、
ウツギとは
全く違う人物に感じた

滝口　舞美

SNSとリアルでは、
キャラが変わる人も
いるでしょ？

影山　ましろ

それも考えたが…
滝口さんの言葉も、
引っかかる

滝口　舞美

私？

影山　ましろ

3月18日、
君は小春から
「花を摘みに行く」と
聞いたと言っていた

滝口　舞美

そうだけど…

影山　ましろ

小春が山に向かうと
決めたのは、
フルールに行った後…

影山　ましろ

滝口さんは、
委員会で会ったのが
最後だと言っていた。
それは、
フルールに行く前の出来事

滝口　舞美

…

影山　ましろ

矛盾…だろ？

滝口　舞美

何でかな…
あんまり覚えてない

影山　ましろ

それから、
俺が小春とDMをした
最後の日は『3月23日』

影山　ましろ

小春は3月18日に
亡くなった…
という事は、
23日にDMをした
別の人物がいる

滝口　舞美

…

影山　ましろ

その人物が、
本物のウツギだと
考えているのだが…

滝口　舞美

ねぇ

滝口　舞美

はっきり言ったら？

影山　ましろ

…そうだな

影山　ましろ

滝口さん…

影山　ましろ

君がウツギだ

一年前

滝口　舞美

まさか、
小春と同じ
委員会だなんて、
びっくりだよ！
よろしくね

月城小春

栽培委員なら、
楽だと思ったから

滝口　舞美

え？
花が好きだから…
じゃないの？

月城小春

嫌いじゃないけど、
好きでも無いかな

滝口　舞美

そうなんだ…

月城小春

舞美は？
花が好き？

滝口　舞美

秘密だよ？
…実は大好き

月城小春

何で秘密にするの？

滝口　舞美

だって、
キャラじゃないし

滝口　舞美

知られるのが、
ちょっと恥ずかしい…

月城小春

そう…

月城小春

私は気にならないけど…

滝口　舞美

小春は優しいねぇ

月城小春

それより、
誰かと連絡？
スマホを見ている顔が
ニヤけてるわよ

滝口　舞美

友達とDM！
向こうも花が好きでさ

月城小春

ふぅん？

滝口　舞美

すっごく良い子…！
子供の頃から、
変わってない

草壁　紘

おい、
二人で何か楽しそうだな

滝口　舞美

紘！

月城小春

女の子同士の
秘密の話し

草壁　紘

なんだよそれ

月城小春

気になる？

草壁　紘

べ、別に！

月城小春

ふふっ

滝口　舞美

…

滝口　舞美

…よく分かったね

滝口　舞美

絶世の美女じゃなくて、
ごめんね

影山　ましろ

何故、謝る？

滝口　舞美

え？

影山　ましろ

俺はずっと

影山　ましろ

ウツギに
会いたかったんだ

影山　ましろ

会って、
お礼を言いたかった

滝口　舞美

お礼？

影山　ましろ

君がいなければ、
俺はこの世から
消えていた

影山　ましろ

助けてくれて、
ありがとう

滝口　舞美

…っ

滝口　舞美

違う

影山　ましろ

ウツギ？

滝口　舞美

私…
そんな良い人じゃない！
本当の私は

3月18日

滝口　舞美

今日は、
マリーゴールドを
植えよう！

月城小春

ねぇ…舞美

滝口　舞美

んー？

月城小春

相談に
乗って欲しい

滝口　舞美

え！？
小春が私に相談？

月城小春

花を教えて欲しくて…

滝口　舞美

花？

月城小春

好きな人に
告白するには…
どんな花が良いかな？

滝口　舞美

…

滝口　舞美

するの？

月城小春

…うん

月城小春

実は昨日…
好きな人から
告白されてね…

滝口　舞美

っ！

月城小春

返事はまだ
していないの…

月城小春

返事をするなら、
私からの告白にしたい

月城小春

メイクして
驚かす作戦も考えたけど…
メイクのやり方が
分からなくて…失敗。
だから、
花を送ろうかな？って

滝口　舞美

へ、へぇ

滝口　舞美

それって、
もしかして

滝口　舞美

紘？

月城小春

え？

月城小春

何で分かるの？

滝口　舞美

…

滝口　舞美

何となく…
二人の雰囲気を
見ていたら…分かる

月城小春

ふふっ
そうかな？

滝口　舞美

…

滝口　舞美

レシュノルティア

月城小春

え？

滝口　舞美

レシュノルティア…
「初恋草」とも言うの

月城小春

初恋…

滝口　舞美

花言葉は
「淡い初恋」「秘密」

月城小春

素敵…
その花にしよう

滝口　舞美

花をプレゼントして、
告白するの？

月城小春

うん！そのつもり

滝口　舞美

そう…なんだ

月城小春

教えてくれて、
ありがとう！

滝口　舞美

…うん

私の醜い感情がドロドロと溶け出した

二人の家が隣同士で、子供の頃から好きだったのは知っている

でも私だって…

私だって子供の頃から、紘が好きだった

このドス黒い気持ちを必死に抑えていたのに…

この後

一本の電話で、堰き止めていた感情が崩壊した

放課後

滝口　舞美

はい…
もしもし？

月城小春

舞美…
電話してごめん

滝口　舞美

ううん…どうした？

月城小春

今、フルールに
行ってきたの

月城小春

そしたら、
レシュノルティアは
入荷待ちだって

滝口　舞美

そうなんだ

月城小春

私、どうしても
明日には告白したい

月城小春

早く気持ちを
伝えたいの

滝口　舞美

…うん

月城小春

それでね…
フルールの雅さんが、
この辺りの
山に咲いている。
って言うのよ

滝口　舞美

え？

月城小春

本当かな？
雅さんって、
私の事…嫌いっぽいし…
意地悪されたかな？

滝口　舞美

…

月城小春

舞美？

滝口　舞美

…ほ

月城小春

え？

滝口　舞美

本当だよ…
山に行けば、
咲いてるよ

月城小春

そうなのね…
ありがとう！

滝口　舞美

…

滝口　舞美

悪魔が囁くって、
本当にあるんだね

影山　ましろ

…

滝口　舞美

次の日…
小春が
行方不明になって　

滝口　舞美

大変な事をしたと
思った…

影山　ましろ

何故…
ウツギは
自分が「小春」だと
嘘をついたんだ？

滝口　舞美

シロなら、
小春を見つけてくれる。
そう思ったの

滝口　舞美

シロは頭が良くて、
冷静だから…

影山　ましろ

…そんな事、ない

滝口　舞美

あるよ。
実際に見つけてくれた

滝口　舞美

あと…

滝口　舞美

願望もあったと思う

影山　ましろ

願望？

滝口　舞美

小春になりたい

滝口　舞美

小春が羨ましくて、
大好きで…大嫌い

影山　ましろ

…

滝口　舞美

幻滅した？

滝口　舞美

ウツギが
こんな人間で

影山　ましろ

さっきも伝えたが…

影山　ましろ

俺はただ…
君にお礼が言いたい
だけなんだ

滝口　舞美

そんな事のために、
小春の死を調べていたの？

影山　ましろ

君にとって
「そんな事」でも、
俺にとっては
重要なんだ…

影山　ましろ

地獄のような日々で…
君だけが
光だったのだから

滝口　舞美

私は…
そんな存在じゃないよ

影山　ましろ

それを決めるのは、
与えられた側だ

滝口　舞美

え？

影山　ましろ

尾崎さんにとっての
平川さん…
平川さんにとっての小春

影山　ましろ

藤田君にとっての小春
小春にとっての草壁

影山　ましろ

俺にとってのウツギ

滝口　舞美

…

影山　ましろ

与えられた側は、
忘れない。
いつだって

滝口　舞美

…シロ

滝口　舞美

なら私も…
子供の頃の
あなたに感謝しなきゃ

影山　ましろ

子供の頃…？

滝口　舞美

そう…
私はあの頃から
紘が好きで、
小春に嫉妬していた

滝口　舞美

でも幼い私は、
その感情の意味が
分からなくて…
自分が嫌な奴に感じて、
悩んでいたの

あの夏の日私は一人で散歩をしていた

野の花を見ながら、木陰を歩くのが好きだった

そしたら見かけない男の子が、道にしゃがんでいたの

熱中症かと思って声をかけたら

私と同じで花を見ているだけだった

その子は『影山ましろ』と名乗った

夏休みで母の実家に来たのだと話してくれた

その子は都会育ちが滲み出ていて、キラキラ輝いていた

逆に田舎育ちの私は何だか恥ずかしくて… 名前を言えなかった

でも何気ない会話の中で、いつの間にか好きな花を教え合って

すごく楽しかった

そう、あなたが教えてくれたの

好きな人に告白するなら

滝口　舞美

レシュノルティアが
おすすめだって

影山　ましろ

…あの子は…
滝口さんだったのか

滝口　舞美

うん、だから…
SNSでの出会いも
偶然じゃないの

影山　ましろ

え？

滝口　舞美

私の中の嫉妬が
膨れ上がって…

滝口　舞美

そしたら、
なんだか…
あの男の子に
会いたくなった

滝口　舞美

影山ましろなら、
私の感情が
穏やかになる気がした

滝口　舞美

だから、探したの。
必死に探して
偶然を装ったの

影山　ましろ

…

滝口　舞美

ごめん…
気持ち悪いよね

影山　ましろ

いや…

影山　ましろ

見つけてくれて
ありがとう

滝口　舞美

うぅ…

滝口　舞美

ごめんなさい…
あなたを利用して、
小春を探そうとした

滝口　舞美

まさか
死んでいたなんて…！

影山　ましろ

滝口さん…

滝口　舞美

私がいけないの！
私がっ…！

影山　ましろ

あの日…

影山　ましろ

三沢さんが
メイクを教えていたら…

影山　ましろ

尾崎さんが
相談を聞いていたら…

影山　ましろ

土屋さんが
嘘をつかなければ…

影山　ましろ

君がその嘘を
肯定しなければ…

影山　ましろ

藤田君が側を
離れなければ…

影山　ましろ

平川さんが
追いかけなければ…

影山　ましろ

草壁が
告白しなかったら…

影山　ましろ

月城小春は
死んでいなかった

滝口　舞美

…ぅぅ

影山　ましろ

そして

影山　ましろ

俺がウツギに

影山　ましろ

レシュノルティアを
教えなければ…

滝口　舞美

っ…！

影山　ましろ

月城小春は
死んでいなかった

滝口　舞美

ちがっ

影山　ましろ

そう言う事だ

影山　ましろ

悲しいけれど…

滝口　舞美

…

それから、俺達は無言で野原を眺めていた

会った事もない月城小春を思い、寂しい気持ちになる

しばらくして、ウツギは思い出したかのように…

滝口　舞美

そう言えば…
レシュノルティアは、
告白するのに
ハードルが高いって…
何で？

影山　ましろ

あぁ…それは

影山　ましろ

切花じゃなくて、
鉢植えだから

滝口　舞美

それだけ？

影山　ましろ

あぁ

滝口　舞美

何それ…ふふ

少し笑って、それからまた泣いていた

明日から俺達は何事も無かったかのように学校へ行く

何事も無かったかのように授業を受けて、休み時間には談笑をする

しかし、決して忘れる事は出来ない

春風に攫われてしまった少女を

道端の草花を見る度に思い出すだろう

それがまるで贖罪のように

fin

この作品はいかがでしたか？

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現実とSNSで性格の違いはあるけど、小春さんとウツギさんの性格が違う。それは別人という伏線だったんですね……！！確かに何か一つでも過去が違ったら小春さんは今も皆と一緒に平和な日々を過ごしていたかもしれない…けど、今更悔やんだってもう小春さんはこの世にはいないし、元に戻ることも出来ない。だからこそ各々が自分のした事を反省して小春さんを忘れることなく彼女の分も生きていってほしいな……と思いました💭

あまりにも美しいラストを読み終えた後で感想がうまくまとまりませんが… 過去と現在を対比させることで浮かびあがるそれぞれの人物の素性、中盤で大きな分岐点のように立ちはだかる「彼女」がいないという事実、そしてその先に徐々に浮かび上がる「関係性」…そのすべてが完璧としか言いようのない、ラブストーリーやミステリーといったジャンルの垣根を超えた1本でした。酔いしれました！