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コメント
6件
みこちゃんがいないのは……気のせいですか、、??? これも伏線だったりして……
🌸くんが自分のことを思い出して、☔️ちゃん嬉しいだけじゃないんだ😭 この作品読んでると人間の心理の奥深さがよく分かる... そしてそんな作品を書ける柚華様は天才だ✨️((( 投稿ありがとうございます!!続き楽しみにしてます!!!
主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作
主
主
主
第93話『降りてくる灯』
夕暮れの気温は、昼の熱気をまだわずかに引きずっていた。
空は茜と群青の境界線を引き、じわりと夜が滲んでくる。
庭の隅では、すちが静かにおがらを組んでいた。
乾いた細い木は、触れるたびにパリパリと音を立てる。
すち
すち
すちが手を止め、空をちらりと見上げる。
その声はとても穏やかで、けれどそこに僅かな緊張があった。
すち
すち
すち
なつもらんもいるまも、誰も返事をしなかった。
否定ではない。
ただ、この空気を壊さないための“沈黙”だ。
全員が火を見ていた。
こさめも――ただ静かに、揺れる炎を見つめていた。
火を点けると、おがらはすぐに燃え上がり、乾いた木が勢いよくパチパチと音を立てた。
それは夏の夕方には似合わないほど澄んだ音だった。
まるで空気の膜を鳴らしていくような、軽い破裂音。
白い煙が真っすぐに立ち昇る。
細い糸のように空へ伸び、やがて夕空の色に溶けていく。
こさめはその光景をじっと見つめながら――不意に、胸の奥がきゅっと痛むのを感じた。
こさめ
火を見ると落ち着く。
だけど同時に、どうしようもなく悲しくなる。
らんが自分の記憶を思い出してくれたあの日――胸が溢れるほど嬉しかった。
なのに、そのあとに残ったのは奇妙な“空洞感”だった。
こさめ
誰にも聞こえないほど小さな声が、喉の奥で震えた。
らんが思い出したのは“こさめとの記憶だけ”。
他の五人の記憶はまだ戻っていない。
だからこそ――こさめは最初の“鍵”として役目を果たしただけなんじゃないか。
本当は違うと分かっている。
頭では理解している。
でも、胸の奥の暗い部分だけが勝手に囁く。
こさめ
火が揺れるたびに、その囁きが濃くなる気がした。
パチ……パチッ……。
おがらが弾ける音とともに、小さな火の粉が舞った。
オレンジ色の光が瞳に反射し、視界の端で揺れる。
こさめはゆっくり瞬きをした。
そして――その瞬間だけ。
自分自身を見た。
火の向こう、煙の奥。
“透明な自分”が立っていた。
輪郭が薄く、肌が透けて、髪も服も色を失っている。
影の気配をまとっていて、実体があるのかも分からない。
まるでそこだけ空気が人の形をしているようだった。
その“こさめ”は――悲しげで、でも意味が分からないほど無表情だった。
涙をこらえているわけではない。
怒っているわけでもない。
何かを訴えているようで、何も伝わってこない。
ただ、“痛みだけを内側に押し込んだ表情”。
その影のような自分が、こちらをじっと――まるで覗き込むように見ていた。
こさめ
こさめの心臓が跳ねる。
瞬きする。
影のこさめは――もう消えていた。
煙だけがゆらゆらと揺れ、さっきまでそこに“自分”がいた気配だけが残っている。
こさめ
こさめ
手のひらが冷たくなる。
何かが胸に突き刺さるように落ちてくる。
さっきの“影のこさめ”は――本当は自分自身が抱えている感情なのだろうか。
その問いが頭をよぎった瞬間、ふっと風が吹いて火が揺れた。
こさめの肩が跳ねた。
すちが少し離れたところで火の様子を見守っていた。
なつが腕を組み、いるまは無言のまま空を見上げる。
らんは火と煙を追うように視線を動かしていた。
誰も、こさめの変化には気づかない。
こさめはぎゅっと指を握りしめた。
こさめ
“自分が透けて見える”なんて言ったら、みんなを困らせるだけだ。
こさめ
浮いていくような気持ちを、無理やり地面に押しつけるように胸の奥で抑え込む。
そのとき、すちが小さく息をついた。
すち
すち
らんが横顔を見る。
らん
すち
すち
すちは笑ったが、その目は火を離さなかった。
すち
すち
すち
誰も何も言わなかった。
ただ、火の音だけが、静かな夜に吸い込まれていく。
おがらがほとんど燃え尽き、火の勢いが弱まっていく。
白い煙が静かに空へ吸い込まれ、火の音は細く、細くなっていく。
こさめはその火を見つめながら、さっき見た“影の自分”をどうしても忘れられなかった。
こさめ
こさめ
胸の内側がぎゅっと掴まれるように痛む。
こさめ
言葉にならない。
けれど胸の奥で、“影のこさめ”がまたこちらを見ている気がした。
悲しげで、無表情で、どこにも行き場がないまま立ち尽くす自分。
その姿がチラつく。
こさめ
こさめは唇を噛んだ。
火が最後のパチッという音を残して、しゅう……と沈んだ。
煙だけがまっすぐ空へ昇る。
夜風が頬を撫でた。
らん
らんが言うと、五人はゆっくりと歩き出した。
火を背にし、薄暗い庭を抜けて家へ戻る。
誰も話さない。
お盆特有の静けさがそのまま五人の間に流れ、それが心地よくもあり、少し寂しくもあった。
こさめは歩きながら、背中に微かな気配を感じた。
振り返っても、火の跡があるだけ。
こさめ
そう思いたかった。
でも胸の奥では、さっきの“透明な自分”がちらつき、ゆっくりと沈んでいく火の煙と混ざり合っていく気がした。
こさめは目を伏せた。
こさめ
風鈴が、遠くで鳴った。
誰も、その意味に気づかないまま夜が深まっていく――。
第93話・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡210
主
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