夢を見た。
いつかの、どこか。
遠い未来の夢。
私が大人になっていた。
隣には、愛する人がいて。
恐ろしいほどに幸せだった。
朝倉
──光、行かないで・・・
すぐに分かった。
これは束の間の夢だと。
光
そろそろ時間かな・・・
私の最期の瞬間は、 もうすぐそこまで来ている。
光
せめて、もう一度だけ・・・
そして、その日が訪れた。
黒沢先生
光さんはもう
ほとんど自力では
呼吸していません。
ほとんど自力では
呼吸していません。
黒沢先生
おそらく、
今日の残り数時間が
勝負になるでしょう。
今日の残り数時間が
勝負になるでしょう。
光の母
・・・いよいよ、なのね・・・
美桜
ほんとに、もう・・・?
朝倉
・・・
この日が来るのは分かってた。
それでも願い続けた。
来てほしくなかった。
終わってほしくなかった。
だけど──
光
・・・
朝倉
光・・・?
光の母
光、光・・・!
光
・・・
彼女は数日ぶりに目を覚ました。
そして、幻じゃない。 確かに微笑んでいた。
驚くほど綺麗だった。
それが、 本当に最期だと告げていた。
朝倉
光・・・よく頑張ったよ。
杏香
うん・・・
ほんとに・・・ほんとに
頑張ったと思うよ
ほんとに・・・ほんとに
頑張ったと思うよ
美桜
もう、大丈夫だよ。
美桜
私たちは大丈夫だから・・・
黒沢先生
光。君は俺たちの誇りだ
光の母
あなたは自慢の娘よ・・・
ああ そうか。
これが「愛」か。
朝倉
光、聞いて・・・
朝倉
いつだったか、
俺の大切な人が
言ったんだ
俺の大切な人が
言ったんだ
朝倉
サヨナラは、永遠の別れ
なんかじゃないよ
なんかじゃないよ
朝倉
もう一度出逢うための、
透明の約束なんだよ・・・
透明の約束なんだよ・・・
光
・・・
朝倉
だから・・・だから
朝倉
──最後の約束をしよう
光
・・・
朝倉
俺たちは
ここで終わるんじゃない
ここで終わるんじゃない
朝倉
必ず、また出逢うんだよ
朝倉
そしたらさ・・・
みんなで一緒に見よう。
覚めない夢の続きを・・・
みんなで一緒に見よう。
覚めない夢の続きを・・・
朝倉
待ってる。
光
・・・(。_。`)コク
彼女は視線を杏香に向けた。 美桜に向けた。 父親に向けた。 母親に向けた。
そして最後に、俺に向けた。
ほとんど残っていないはずの 力を振り絞るようにして 俺の指に触れてきた。
光
(──ありがとう)
朝倉
!
杏香
・・・今、ありがとうって?
美桜
私も、聞こえた。
朝倉
・・・俺にも。
光の母
ええ・・・
黒沢先生
聞こえた
俺たちにもう、 言葉はいらなかった。
朝倉
ありがとう
20XX年 3月27日
早咲きの桜がはらりと舞う季節に
望月光の命は 誰も見たことのない世界へと 旅立っていった・・・
たったひとつ、 「透明の約束」だけを残して──