類
司くん、学校はどうだったかい?
司
んう?
司
…そうだな、楽しかったよ
類
本当かい?
司
ああ
司
クラスメイトも先生も、皆良い人ばかりでな
司
…本当、何も覚えていないのが悔しいよ
類
司くん…
類
大丈夫だよ、君の記憶は絶対に戻るから
司
…あはは、そうだろうか
確信なんかなかったのに
類
…だから、大丈夫だよ
君に、安心して欲しかったんだ
司
…ありがとう、類
司
…もしもこのまま記憶が戻らなかったとしても、
司
オレは類が居ればそれでいい…そう思うよ
見れば気持ちが溢れてしまう、 そんな君の笑顔
類
…
類
…戻るよ、きっと
司
類…
類
戻ったらきっと…君は自ら僕を離れていくだろう
司
えっ?
司
そんな…
司
(そんなこと、あるはずがない…)
司
(オレは、オレには類が居なくちゃダメなんだ)
類
…すまないね、こんなこと
類
…僕は、僕も君と離れたくはない
類
ずっとずっとそばにいたい
類
…けれど、無理なんだ
司
どうして…?
類
…それは、自分自身に聞いてみるといいよ
司
(オレは…オレのことを、何も知らないのに?)
司
(知らないのに、聞く…?)
司
…そんなこと、オレだって知りたいよ
類
…
類
すまない
司
っ…
司
(どうして、今にも泣きそうな顔をしてるんだ…?)
類
…ごめんね、司くん
司
なんで類が謝るんだ?
類
…僕が君に、悪いとそう思ったからだよ
司
…そっか
類
…
類
(…ダメだな、僕)
類
(やっぱり僕は、君のとなりになんて居られないのかもしれない)
類
(…居たら、いけないのかな)
類
(…支えるって、そう決めたのに)
司
類…?
類
ああ…どうしたんだい?
司
大丈夫だよ、類
類
えっ?
司
オレ、本当に類がそばに居てくれるだけで…それでいいんだ
司
それだけでオレ、幸せだから!
類
(…変わらないよ、司くんは)
類
…うん、ありがとう
司
礼を言うのはこっちの方だ
司
ありがとうな
類
そんな、僕は何も…
司
類
類
え?
司
…類は、ずっとずっと、オレのそばに居てほしい
司
本気でそう思えた相手は、類がはじめてなんだ
司
…だから類、類だけはオレから離れないで
司
ずっと、一緒に居てほしい
類
司くん…
司
あはは…どうしてだろうな
司
こんなワガママ、言うつもりなんてなかったのに…
司
…類と話してたら、口が勝手に動いてたんだ(笑)
類
…
司
…なんでだろうな
司
…オレ、きっと類にオレの知らないオレの事まで知って欲しいんだと思う
司
オレの全部、類にならって…
司
おかしいよな、こんなの(笑)
類
どうして笑うんだい?
司
へっ…
類
おかしい事なんて、ひとつもないじゃないか
司
類…
類
…君がそう思ってくれているのなら、僕はとても嬉しいよ
類
僕も君に、知って欲しいんだ
類
…僕のことを
司
うん、知りたい…
類
…あはは、こんなの前もしなかったかい?
司
えっ?そうだったか?
類
ああ、した(笑)
司
むう…覚えていないなあ
類
いいんじゃないかい?
司
え?
類
そういう時は、僕の記憶を君に分けたらいい
類
そうしたら君の覚えていない記憶だって、意味のあるものになるはずだ
司
ふははっ…なんだそれ
司
類って天才だな!
類
…!
司
「ウチの演出家は天才だからな!」
司
「お、お前が天才なのは否めんが…」
司
「類はやっぱり大天才だ!これからもよろしく頼むぞ!」
司
類?
類
…ううん、ありがとう
司
否定はしないのだな!
類
…ふふ、まぁねぇ
司
む?
咲希
お兄ちゃん、おかえりなさい!
咲希
るいさんも、来てくれてありがとうございます!
類
そんな…こちらこそ
司
ただいま、咲希
天馬母
司、おかえりなさい
司
…ただいま、母さん
天馬母
神代さんも、いつもありがとうございます
天馬母
司の事…すごく気にかけてくれているみたいで
類
いえ、僕は大したことはしていませんので…
司
そんなことはないぞ、類
司
いつもありがとうな…
類
もう…司くんってば
天馬母
ふふ、良かったらゆっくりしていってね
類
はい、ありがとうございます
咲希
それにしても、なんだろうなぁ…
司
?
咲希
お兄ちゃんがお家にいるの、久しぶりだからすっごく嬉しいや!
司
そうだな…
司
オレも、久しぶりだ
咲希
るいさん、今日はお兄ちゃんを連れてきてくれてありがとうございました!
類
ううん、僕の方こそ…お邪魔までさせて頂いているし
咲希
気にしないでください!お兄ちゃんも、るいさんが居てくれた方がいいでしょ?
司
へっ?ああ、そうだな…
司
類がいてくれた方が、嬉しいな…
類
なっ…
類
…な、ならよかったよ
咲希
ふふふっ
類
…あ、すまない。電話だ
類
悪いけれど…少し外に出てくるね
咲希
いえ、気にしないでください!
類
ああ、ありがとう
類
それじゃあ少し失礼するね
咲希
はい!
バタン
司
…咲希
咲希
どうしたの?お兄ちゃん
司
…あの、今まですまなかった
咲希
えぇっ!?どうしてお兄ちゃんが謝るの?
司
…オレにも、よく分からない
司
けど、謝りたくて
司
…咲希には、好きなように生きて欲しいんだ
司
楽しいことを沢山して、悲しいことも、辛いことも…色々なことを沢山経験して、生きて欲しい
司
…そう思ったんだ
司
(…オレは、ちゃんと思えていたのかな)
咲希
…アタシ、幸せだよ!
咲希
好きなように毎日生きてる!
咲希
今は毎日がすっごく楽しくって、辛いことも、イヤな事だって無いワケじゃないけど…
咲希
それも全部、生きてるおかげだなって思えるの!
咲希
そんなふうに思えるのも、思わせてくれたのも。そして、こんな毎日をくれたのも
咲希
全部、お兄ちゃんのおかげだよ!
司
…オレの?
咲希
うんっ!
咲希
アタシ、小さい頃お兄ちゃんがしてくれてたショーが今でもすっごく心に残ってるんだ
咲希
それ以外にも、お兄ちゃんのピアノだって…だからアタシ、頑張れたの!
咲希
…だからこうして今、いっちゃん達とバンドもやれて、学校にも通えてる!
咲希
アタシね、お兄ちゃんのおかげだってずっと思ってるよ
司
(ショーを、オレが?)
司
(…どうしてだろう。胸が、モヤモヤする)
司
…ありがとうな、咲希
司
そう言ってもらえて、オレはすごく嬉しい…
司
けど、それはオレのおかげなんかじゃない
司
咲希ががんばったから、咲希は元気になれたんだ
司
…けどオレ、何も覚えていなくってごめんな
咲希
…ううん、ありがとうお兄ちゃん
咲希
早く良くなって、またお兄ちゃん達のショーを観せてね!
司
(“達”…?)
司
(…オレ、何か大切なことを忘れているような)
司
(…けど、どうやっても思い出せない)
司
(からっぽだ、何もない…)
ガチャ
類
すまない、思ったよりも遅くなってしまって…
咲希
いえいえ、全然大丈夫ですよ!
類
ありがとう
類
咲希くん、時間の方は大丈夫かい?
咲希
アタシの方は大丈夫です!
咲希
るいさん達は、何時頃病院に戻る予定なんですか?
類
そうだねぇ…あと少ししたら、そろそろ戻ろうかな
類
司くんの体調の方も心配だしね…
咲希
あの、本当にるいさんにおまかせしちゃって大丈夫─
司
類…
類
司くん…?
咲希
お兄ちゃん、どうしたの…!?
司
…すまん、さっきから頭痛がヒドくて
類
…とりあえず救急車を
咲希
あ、アタシ電話してきますっ!
司
…大丈夫だ、少ししたらすぐに…。
類
大丈夫じゃないだろう…!?
類
…汗拭くよ
司
うぅ…
類
いつから痛んでいるんだい?
司
さっき…
類
…とりあえず横になろうか
類
大丈夫かい?
司
…ああ
咲希
…るいさん!救急車すぐに来てくれるそうです!
類
ありがとう咲希くん
天馬母
司、大丈夫…!?
司
ああ、母さん…
天馬母
救急車、咲希が呼んでくれて…もう来てくれるからね
司
…ああ
類
…大丈夫、大丈夫だよ司くん
司
(類…)
司
…手、握ってくれてありがとうな
類
ううん…
司
っ…
類
痛むかい…?
司
痛い…
類
大丈夫、大丈夫だよ…
司
(そんな顔、するなよ類…)
司
(オレ、しぬわけじゃあないんだぞ)
類
…司くん?
咲希
お、お兄ちゃん…!
咲希
ど、どうしようお母さん…!お兄ちゃん、返事してくれないよ…!
天馬母
…息はしてるわ、大丈夫よ咲希
天馬母
なにも心配要らない…司は強い子だもの
咲希
ああ、よかった…
類
…大丈夫
類
…大丈夫だよ、司くん






