ヒロイン
五条さん、けっこう髪伸びましたね
五条
そっかぁーボク髪伸びるのめちゃ早いんだよね。
五条
色男だから。あと性欲強いし
ヒロイン
何言ってるんですか
五条
ウブでかわいーねー
五条は伸びた髪をひょいとつまむと突然目を輝かせた。
五条
そーだ!キミ髪切ってくれない?
ヒロイン
そんなこと!
ヒロイン
皆の憧れ五条さんの髪を切るなんて責任重大すぎて
私なんかにはできません
五条
ボクの頼み、断るっていうのかい?
ヒロイン
こ、断りづらい……!
五条
じゃあ、今度の休み、ボクの家でよろしく
ヒロイン
えー!五条さんの家なんて行ったことないよー!
五条の家はすっきりしていて、余計なものがなかった。
ヒロイン
綺麗に片付いてますね……
五条
男の一人暮らしだからねー。最低限のものしかないの
ヒロイン
はぁ、あの、見物の方などはいないのでしょうか
五条
は?いるわけないでしょ。二人きりだよ。
五条
いたら意味ないし
ヒロイン
え、何の意味ですか
ヒロイン
じゃあ心を決めて
ヒロイン
一応メンズのファッション誌は買ってきたんですけど
見てください。
ヒロイン
ど、どんな髪型がいいですか?
五条
んー、任せるよ
ファッション誌をパラパラめくりながらものらりくらりやる気なさそう。
五条
てゆかモデルより
ボクのほうがグッドルッキングガイだと思わない?
ファッション誌のカバーを指差し
にこにこ聞いてくる五条。
ヒロインは二人きりなのに、ド
キドキしてるのは自分だけなのかな、と不安なヒロインはつい、
適当に返事してしまう。
ヒロイン
はいはい、そうですねー
本当は五条の方が確かに遥かにかっこいいと思いながらも、
それを顔に出せない性格なのだ。
ヒロイン
人の髪なんて切ったことないから緊張します……
五条
まあまあいつも呪霊ズパッと切ってるじゃない
ヒロインちゃんの腕前は一流だと思うよー
ヒロイン
(ほら、会話噛み合ってない……
呪霊討伐の腕前持ってこられても全然嬉しくないよ。)
ヒロイン
(一流だから私を家に呼んだのかな……
二人きりに長時間なっちゃうのに……)
ヒロイン
五条さんほどの方に一流といっていただけると
安心しますね
五条
不安そうだね。
ハサミ震えてるよ?
五条
とても普段の凛とした姿からは想像できない
五条
大丈夫?迷惑だった?
五条もヒロインが不安がっていることに
気づいたようだった。
ヒロイン
迷惑じゃないけど、
やだとはいってるじゃないですか……
五条
それでも僕はキミといたいんだ!
迷惑かもしれないけど……!
突然そんな甘いことを言い出した五条に
ヒロインはびっくりした。
ヒロイン
(もしかして五条さんは私のことが好きなのかな……?)
ヒロイン
(そんな伝説の人と両思いなんて
そんな幸福が私に訪れるわけない……)
ヒロイン
(でも今の発言、訊いてみよう……)
ヒロイン
五条さんは私のことどう思ってるんですか?
家にまで呼んで……
五条
はは、分からないかー。
五条
髪切ってって頼んだ時点でわかってほしかったけどねー
ヒロイン
髪切るってそんな特別感あることなんですか……?
五条
ヒロインちゃんの好みの髪型にしていいっていう意味なんだけど
ヒロイン
え、それって……
ヒロインが髪を切る手を止めた時、突然五条は叫んだ。
五条
好きなんだヒロインちゃん!
キミのことが!
五条
めちゃめちゃにしてやりたいって気持ちが
抑えられないくらい……!
ヒロイン
え……?めちゃめちゃ……?!
ヒロイン
なんで五条さんともあろう方が
髪切るのに紛れてみたいな遠回りな告り方するんですか。
本当に私のこと好きなんですか
五条
好きすぎて振られたら耐えられなさそうだから紛れさせてもらったよ
五条
ボク女に振られたことないし
ヒロイン
何気に自慢ですか、余裕ですね
五条
余裕なんてないよ
五条
もしキミが髪切り終わってしまったら
ここボクの家だし
たぶんキミのことめちゃめちゃにしちゃうと思う
ヒロイン
えっ!
ヒロインは手元が狂って
シャキン!と多めに耳のそばの髪を切ってしまった。
すると真っ赤に染まった耳たぶが出てきた。
ヒロイン
五条さん……本当なんですね……
五条
え、どこ見て確信してんの。
もしかして耳赤くなってる?
五条
だから本当だって!
五条
ヒロインちゃんはボクにも誰にも平等な接し方するし、全然気持ち分からないし!
五条
で、なるの?
五条
ボクのことを初めて振った女になるの?
ヒロイン
なんていう返事の聞き方するんです
ヒロイン
……それもいいなー
五条
え?!
慌て出す五条。
ふだん冷静に立ち振る舞う
その姿からは想像できないほど慌てている。
五条
振られないためには口を塞ぐしか……!
五条
髪、切り終わったみたいだね……!
なんと五条は出し抜けにヒロインの唇に自分のくちびを重ねてきた。
頭が真っ白になり、やがて真っ赤になるヒロイン。
思わず、五条を突き飛ばす。
ヒロイン
信じられません!
ヒロイン
順番ってものがあるし、今私の返事待ちターンでしたよね?!
五条
だって振るつもりなんでしょ……
ヒロイン
五条さんにとってもはや
女性関係で初めてのことなんてないんだろうなと思って
ちょっと寂しい気持ちになったから言ってみただけですよ
五条
え、寂しい?それって
ヒロイン
好きですよ五条さん
ヒロインは観念したように、五条とは対照的に小声で呟いた。
五条
やったー!
そのまま何度もキスして
やんわり組み敷こうとする五条。
ヒロイン
それはちょっと早くないですか?
ヒロイン
落ちた髪の毛片付けないと……!
五条
何言ってんの?
五条
髪の毛なんて後でいいし
五条
オレがどれだけ、何年間我慢したと思ってるの……
ヒロイン
何年?!
ヒロイン
一体いつから私のこと好きなんですか……?
五条
初めて会った時からずっとだよ?
ヒロイン
初めて?!
五条
そ!一目惚れってやつだね
五条
それと、キミに対しては初めて持つ感情ばかりでボクはけっこういっぱいいっぱいなんだよ
ヒロイン
本当ですか……?
五条
本当
五条
例えば愛しい。愛してる
五条は同意を得たとばかりに再びヒロインを組み敷いた。
そして、二人は初めて一人になった。
終わってシャワーを浴びた後、五条は鏡を覗き見た。
五条
結局いつもの髪型にしてくれたんだね
ヒロイン
はい
五条
ボクにあんまり興味ないんじゃないよね……
ヒロイン
そのままの五条さんがかっこいいと思うので
五条
かわいー。最高!