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歌パロ! 作ったよォ? 下書きだから下手でも許して? 「あの夏が飽和する」 作 カンザキイオリ様
あの夏の記憶 5月の終わり…梅雨の時期だ 「昨日人を殺したんだ」大智は僕にそう言った 「え?」僕はそう返した。 「だから人を殺したんだよ」 そう言った大智はずぶ濡れのまま部屋の前に 座り込んで泣いていた。 もう暖かくなって来たというのに、 大智はひどく震えていて… 「このままだと風邪をひくぞ」 とりあえず僕は部屋に大智を入れた。 大智は温まりながら事の流れを少しずつ説明 してくれた。 「で、誰を殺したんだ?」 「隣の席の神綺」 「神綺か」 神綺は前から大智の事を虐めていた。 それからは大智は止まることなく喋り続けた。 「もうさ…嫌になったんだよ。虐められるのが… それでさアイツの肩を突き飛ばしたら アイツが倒れて、意識を失って 急いで救急車を呼んだけど、 もう息をしていなくて 病院に行って説明を受けたけど 打ちどころが悪かったって… 親はアイツの両親に土下座して謝って、 金払って、もう嫌なんだ もう俺の居場所なんて無いんだよ だからもう死にたいんだよ。 それでさ、もう死のうと思うんだ どっか遠いところで、誰にも知られずに 1人で死にたいんだよ」 「そんな事があったんだ」 「どうだ俺は立派な人殺しだ」 「それじゃあさ僕も連れてって」 「は?」 「死にたいんだ僕も 僕みたいな奴やっぱり死んだ方がいいんだよ」 「じゃあいいよ 一緒にどっか遠くで2人で死のう?」 「そうだね」 それから2人は荷物をまとめた。 わずか1万円ほど入った財布と 携帯と、ゲームと、ナイフを 全て薄汚い小さなリュックに入れた。 携帯の連絡機能が着いているアプリは全て 消して、いらなくなった日記も写真も全て破り捨てて、全てを、思い出を壊して、 誰にも気づかれないように家を出た。 「なんでお前は死にたいんだ?」 大智は言った 「知ってるだろ? 僕は何をやっても失敗して、人を傷付けて、 どうしようもないダメ人間なんだよ」 大智は笑ってこう言った 「じゃあ人殺しとダメ人間の旅だな」 「大智はなんでそう明るくいられるんだよ」 「明るくいれば明るくなれる。 いつまでも落ち込んでたって しょうがないんだから」 「すごいな。大智は」 「そうか?」 「うん…」 そして僕らは逃げ出した。 この監獄のような狭い世界から解放されて、 初めて外を見る気分だ。 家族もクラスの奴らも何もかも捨てて 大智と2人で逃げる。 とても気持ちが軽くなった。 大智が口を開いた 「すごく遠くて誰もいない場所で2人で死のう」 「そうだね。約束な」 「分かった」 「人殺しなんてそこら中に湧いてるのになんで 大智が死ななきゃならないんだ」 僕はボソッと呟いた。 「大智は何も悪くない!」 「どうしたんだよ。いきなり」 「アイツは、神綺は死んで当然だ!」 「ありがとう。だけどな、俺は人を殺したんだ。 それだけは変わらない」 「…」 僕らはわずかな所持金の中から 少しお金を取って、バスに乗った そして、終点が来たら降りて、 違うバスに乗る、終点が来たら降りて、 違うバスに乗るを繰り返して、見たことも聞いたこともないところに来た。 僕は大智に言った 「結局僕らは誰からも愛されずに死ぬんだね」 「そういうことになるな」 「そんな最悪な共通点だけで信じあって、 なんか変だな」 大智は僕の手を掴んだ 「え?」 「はぐれないように」 「僕は幼稚園児じゃない!」 「一応繋いどけ」 「分かったよ」 もうこの頃には大智の震えもなくなっていた。 「なぁもう金無くなってきたな」 「そうだね」 「盗むしかないか」 「え?でもっ!」 「どうせ死ぬんだ。いいだろ」 「それもそうだな」 そして2人で金を盗んだ。 2人ならなんでも出来るように思えた。 「これで水と食い物買お」 「いいよ」 僕らは誰も登らないような山をひたすら登った 「なぁ…漫画に出てくるような誰にも好かれて、 優しい主人公なら、俺らみたいな奴も救っってくるのかな。それだったら幸せになれるのかな」 「そんな夢なら捨てたよ…だって現実を見ろよ。 幸せなんて無いんだよ」 あてもなくさまよう蝉の群れが見えた。 ふもとで買った水も無くなり、脱水症状が現れ 揺れ出す視界。 迫り狂う鬼たちの怒号に バカみたいにはしゃぎあう人々… ふと君はナイフを取った。 「もう無理だ…水が足りない。この旅は自分の罪を償う為の旅だ…脱水症状で死ぬんじゃなくて、ちゃんと罪を償いたい」 「君がいたから僕はここまで来れた」 「君は悪くない!」 「君は死ななくていい…」 「死なないで…」 「お願い!」 「死ぬのは僕だけでいい」 「僕1人でいい!」 大智は俺の言うことを無視して、 首を切った。 まるでなにかの映画のワンシーンだ。 白昼夢を見ている気がした。 気付けば人がいて、 僕は捕まった。 大智はどこにも見つからなくて、 大智だけがどこにもいなくて… そして時が過ぎていった。 ただ暑い暑い退屈な時間が過ぎていった。 捨てた家族もクラスの奴もいるのに、 大智だけがどこにも居なくて… 今でもあの夏を思い出すんだ。 僕は今も今でも歌っている。 大智を探してるんだ。 大智に言いたい事があるんだ。 9月の終わりにくしゃみして、 あの6月の匂いを繰り返す。 大智の笑顔は、 大智の無邪気さは、 僕の頭の中を飽和している。 もう誰も何も悪くないんだよ。 大智は何も悪くないから、 もういいよ。 「そう言って欲しかったんだろ?なぁ? 大智、返事をしてくれよ!」