麻乃
ばいばい……
疲れ果て、思いっきり崖から飛び降りた
麻乃
(もう……、これで……)
?
?
──やめなさい
麻乃
え?
腕を回され抱きとめられる
?
飛び降りなんて、するもんじゃないよ
背中から黒い羽を生やし、羽ばたく
?
そもそも、ここは飛び降り禁止だし
右目が赤く、中性的な顔の女の人が見つめてきた
麻乃
──あなたは?
?
私?
?
世間一般でいうところの死神だよ
優しく地面に下ろす
死神
ケガはないようだね
麻乃
……なんで、あたしを助けたの?
麻乃
死神なら、死なせてよ
死神
なに言ってるの?
死神
そんなに死にたきゃ、寿命が来るまで待ちなさいな
麻乃
麻乃
それっていつ?
死神
だいたい70年後じゃない?
麻乃
そんなに待てない!
死神
なんで?
麻乃
あたしは今すぐ、死にたいの!
死神
老衰なら苦しまずに逝けるよ?
麻乃
(全然、話が噛み合わない……)
ガシッ
腕を掴まれる
死神
そんなに死に急がなくてもいいじゃん
麻乃
離して!
死神
離したら、また飛び降りるつもりでしょ?
死神
だから──
死神
は〜な〜し〜ま〜せ〜ん
麻乃
なんとか振り払おうとするが、びくともしなかった
1時間後
死神
もうすぐ、夕方だな
死神
そろそろ家へ帰ったら?
麻乃
麻乃
…………ない
死神
ん?
麻乃
帰る家なんかない!
麻乃
会社をクビになるわ、彼氏にフラれるわ
麻乃
挙句に住んでたアパートが、火事になるわで…………
嗚咽をした
死神
──なるほど
死神
自棄になって、飛び降りようとしたわけか
麻乃
……うぅ…………
死神
死神
ちょっと待ってね
スマホを取り出し、通話をタップする
死神
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通話
01:35
死神
これでよし
死神
もう少しで“兄弟“が迎えに来る
麻乃
“兄弟“?
死神
心配しなくても大丈夫だよ
死神
なんだかんだで頼りになるし
麻乃
…………
死神
助けてくれるから
にこ
麻乃
(……なんとか、なるかもしれない)
根拠はなかったが、相手の笑顔を見てなんとなくそう思った