再現VTRが終わっても、しかしスタジオの空気は冷たいままだった。
これまでの進行とは異なり、いわゆる部外者が混じっているような感じになってしまっているからであろう。
RYUSEI
さ、さて……これにて再現VTRは終了ということで。

武永
ここで問題です。

武永
娘を……武永美穂を殺害したのは誰でしょう?

しんと静まり返ったスタジオがさらに冷え込んだ気がした。
茜
……はぁ?

神崎
い、今の再現映像を見た限りでは、どう考えても美穂という人物は事故……。

神崎が言いかけている間に、脇から武永の鉄拳制裁が飛ぶ。
武永
事件を簡単に揉み消すような奴が何を言っても、信用してもらえるわけがない。

武永
お前はちょっと黙っていろ。

九十九
いや、そのよ――俺から見ても、あの女は事故死にしか見えないんだが。

長谷川
後の調査により、雨のせいで地盤が弱くなって、その上にあった岩石が道路まで転がり落ちたことが原因とされている。

長谷川
たまたま運が悪く、彼女が座っていた席に直撃してしまった――というのが、当時の調査結果だったはずだ。

武永
さすがは当時の運転手さんだ。

武永
だが、本当にそうなのかな?

長谷川
もし、あの事故に犯人がいるのだとすれば、それは俺ということになるんじゃないか?

長谷川
当時、外は土砂降りの雨で視界が悪く、しかもスピードも満足に出せなかった。

長谷川
当然ながら、運行にも多少の影響が出ていて、事故が起きた時点でダイヤから数分の遅れが出ていた。

長谷川
もし、俺がダイヤ通りに運行していたら、そもそも落石事故には遭わなかったんだ。

茜
いや、だったら私にも原因があるってことになるよね?

茜
私、確かバスに乗り損ねそうになって、わざわざ待っててもらった記憶があるもん。

茜
私がバスを待たせなければ、落石事故には遭わなかったわけでしょ?

九十九
でもよ、そんなことを言い始めたらきりがないと思わないか?

九十九
例えば、どこぞの男が脳梗塞で倒れて死んだとするだろ?

九十九
その男が毎日のように町中華を食っていたとして、町中華の店主が男を殺したってことになるか?

九十九
今やってる議論はよ、町中華屋がチャーハンに塩を多めに入れたから、男が死んだ――って言ってるようなもんだろ?

凛
正直、偶然としかいいようがないというか――。

武永
それは、お前が当事者じゃねぇからだよ。

武永
小さい頃から可愛がって育ててきた娘がよ、偶然で死んでたまるかよ!

武永
それを運が悪いだとか、寿命で片付けられてたまるかってんだ!

九十九
……駄目だな。まともなやり取りをしても通じない。

茜
でも、実際どうすんの?

茜
このままじゃ、ただの事故の犯人探しをしなきゃいけなくなるよ。

九十九
あぁ、だからそうなる前に刑事のあんたに話を聞きたい。

神崎
……僕?

九十九
そう、あんただ。

九十九
この事件を解決するためには、多分だけどあんたの力が必要なんだよ。

九十九
話を聞かせてくれ。

神崎
そんなことを言われても、記憶がなくなっているのは間違いなくて、正直何も思い出せないんだよ。

九十九
それでも構わない。

九十九
多分、この問題はあんたが鍵になるんだよ。
